加藤豪将の「技」に迫る 修羅場続きのマイナー生活とロッテ入り鳥谷から学んだ打撃術

マーリンズ・加藤豪将【写真:木崎英夫】
マーリンズ・加藤豪将【写真:木崎英夫】

マーリンズ招待選手の加藤はロッテ入りした鳥谷の打撃映像を週2度鑑賞している

 2013年にカリフォルニア州サンディエゴのランチョ・バーナード高校からヤンキースに2巡目でドラフト指名され、ヤンキースに入団した加藤豪将内野手。昨季に傘下のマイナー3Aまでステップアップしたが、契約の壁などもあり悲願の大リーグ昇格はならず。咋オフに環境を変えるためFAを決意した加藤は、マーリンズとマイナー契約を結び、春のキャンプに招待選手として参加している。夢舞台を目指す日々を過ごす加藤豪将の今を「体」、「技」、そして「心」の側面から探る。今回は「技術」に視座を定める。

 起床5時過ぎの朝型を強いられるキャンプ生活で、加藤の息抜きは夕食後の打撃映像鑑賞である。PCで楽しむのは自分のスイング映像と1人の日本人打者である。週に2度は必ず見るというその打者とは、大リーグを目指す動機になったイチロー氏なのか、それともヤンキースのマイナー時代に直接指導を受けたこともある松井秀喜氏なのか――。加藤は言った。「鳥谷敬(現ロッテ)さんです」。その理由を「打撃練習でのスイングが常に一定していて見入ってしまいますね」と明確にする。

 鳥谷のスイングには、もがき苦しんだ時期に見いだすことができなかった答えが見え隠れしている。ヤンキース傘下のマイナーでの7年間は身体も出来上がらず、安定感のあるスイングのイメージは到底描き切れなかった。

 加藤はその7年間の前半を「地獄」となぞらえる。

 大リーグ傘下のマイナー組織は1A→2A→3Aの階級に分かれ頂点に近づいて行くが、「ハイA」、「ローA」、その下の「ショート・シーズン」を総称して「1A」と呼ぶ。さらに、下部組織が2つあり檜舞台まで7つに階級分けされている。加藤は2013年6月のドラフト後にショート・シーズンの下「アドバンスト・ルーキーリーグ」に配属され打率.310を残した。2年目は2階級上のローAでスタートも打率.222と低迷。3年目の2015年には途中から1年目に逆戻りする屈辱の2階級降格を通達された。起伏の激しい当時を加藤が振り返る。

「6歳で始めた野球で悩んだことは1度もなくましてや打率が3割を切ることはありませんでした。『どうしたらいいんだろうか』という気持ちになり、野球が初めて楽しくないと感じた時期でした。思えば、首を宣告されても仕方がない時期でした。選手がどんどん解雇されていく階級を行ったり来たりしていましたからね」

 それでも加藤は修羅場をくぐり抜けた。5年目からは順調にステップアップし、昨年は3Aでスタート。終盤に2Aに降格したものの、大リーグ一歩手前の階級で打率.279、11本塁打の好成績を残した。この時の打撃コーチ、フィル・プランティア氏が柔軟性の高い体に合う打撃フォームの構築に大きな役割を果たしたのは前回のコラムで詳述した。

 ここまでのオープン戦出場で凡打をしても「スイングはいい」と意に介さない打席が続いているのは、イメージしたものが崩れていないという実感に支えられているからだ。鳥谷の打撃練習の映像が、加藤にとって味わい深いのも理解できる。

大リーグではフライボール革命が全盛「スイングの軌道は変えてません。高めの球は当然意識するようになりました」

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