勇者たちよ…
「ワクチン開発が1日早まれば7,120人の命が救える。最短ルートはCOVID-19を直接投与するヒューマンチャレンジ治験」と聞いて、「だったらこの体を使ってくれ!」とNYの元企業弁護士Josh Morrisonさん(34)が名乗りをあげました。
同士公募のサイト「1 Day Sooner」にはすでに102か国から2万3000人以上の応募が集まっています。
ヒューマンチャレンジ治験とは?
現在開発が進行中のワクチンは世界全体で200種以上(WHO調べ)。頼もしい限りですが、どんなに急いでも避けて通れないのが、人体に投与して安全性を調べる臨床試験で、第1相から第3相まであって最低でも1年半から2年かかります。
そこでもっと早められないかと専門家の間でいま真剣に語られはじめているのが「ヒューマンチャレンジ治験」です。これは「健常者にワクチン候補を投与し、わざとウイルスに晒して感染するかどうかを確かめる」というもの。これなら3フェーズまとめてクリアでき、大幅な時短になるのですね。
ただ、新型コロナウイルスはいくら若い健康体を選んで投与しても死亡するリスクがゼロとは言い切れません。若い健康体に効くものが、シニアの持病のある方に効くとも限らず、また、外部に倫理審査委員会も必要。いろんなハードルがあります。
実際、治療法の確立していないコロナみたいな新型疾患にFDAがヒューマンチャレンジ治験を認めたことは過去1度もありません。ただ、米国内では死者の数がとんでもないことになっているので、一刻を争う情況を鑑みて4月下旬に下院議員30人が特例的に治験を認可するよう監督官庁に働きかけています。
今月6日には世界保健機関(WHO)から「倫理的に許容されるCOVID-19ヒューマンチャレンジ治験の主な基準」の草稿も示されました。ファウチ博士でお馴染みのアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)も「不確定要素だらけだが、実現の方向で動くと思う」と臨床責任者がNBCに語っているので、ひょっとするとひょっとしそうな雲行きです。
ワクチンは1種では足りず、複数並行して進めなければなりません。アレルギーや2回目以降の重症化を促す反応も考えられるので、研究機関同士の連携を進めて、データを共有し、効果判定基準、使用機材、臨床試験方法を統一し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)安全管理委員会の監視のもと進める流れになります。
5月には官民一体でワクチン開発を進める新戦略が発表になり、共同研究プログラム「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV)」のもと、FDA、CDC、WHO、バイオメディカル先進研究開発局との連携も進行中。
勇者の命と人類の明日がバーターにならないことを祈るばかりです。
Source: 1 Day Sooner