NASAとSpaceX、民間初の有人宇宙飛行へ

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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NASAとSpaceX、民間初の有人宇宙飛行へ
Image: NASA

宇宙開発もニュー・ノーマルへ。

もうすぐNASAとSpaceXが、宇宙飛行士ふたりを載せた宇宙船クルー・ドラゴンを軌道へと打ち上げる予定です。米国から有人ロケットが打ち上がるのは9年ぶり、そして民間企業が開発した宇宙船での有人飛行は米国初でして、そういう意味で今年最注目の打ち上げとなります。2011年7月8日、ケネディ宇宙センターからスペースシャトル・アトランティスが飛び立ったときには、こんなに長い間米国発の有人飛行がなくなるなんてほとんど誰も予想してなかったことでしょう。ただ一応2018年に、Virgin GalacticのVSS Unityが打ち上がってはいましたが、高度がだいぶ低く、軌道には届いてませんでした。

5月27日午後4時33分(米国東部夏時間/日本時間5月28日午前5時33分)、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから、NASAの宇宙飛行士、Robert Behnken氏とDouglas Hurley氏が飛び立つ予定です。すべてが順調に行けば、ふたりは国際宇宙ステーション(ISS)に24時間後に到着します。クルー・ドラゴンを低軌道へと運ぶのは、SpaceXのFalcon 9です。

切っても切り離せない、宇宙飛行とその費用

このDemo-2ミッションは、予定通りに行けば、NASAの商業乗員輸送計画の大きな一歩となります。米国は今、NASAの宇宙飛行士をISSに送るのにロシアの宇宙船ソユーズに乗せてもらう必要があり、その費用は宇宙飛行士1席あたり8600万ドル(約93億円)もかかります。2016年、NASAはSpaceXとBoeingに有人飛行用カプセル型宇宙船の開発を打診してたんですが、SpaceXのクルー・ドラゴンが一足先に打ち上げまでのハードルをクリアしました。BoeingのCST-100 Starlinerもほぼできてるんですが、去年無人でのテストに失敗し、一歩後退しています。

準備は万端

Behnken氏とHurley氏はどちらもスペースシャトル計画にも参加したベテランで、テストフライトも本番も豊富に経験しています。新型コロナ流行中の今、彼らは5月13日から自主隔離して打ち上げに備えてきました。

5月22日、Demo-2ミッションはNASA内部の審査をパスして打ち上げが承認され、Falcon 9に9基搭載されている1段エンジンのスタティックファイア・テストも成功。その後Behnken氏とHurley氏は、SpaceXの新しい宇宙服を着用してのドレスリハーサルも行ない、またNASAのロゴ入りTesla Model Xでケネディ宇宙センター第39発射施設に入って通信システムのテストやプロトコルの確認など詰めの準備をしました。そして5月25日、NASAは打ち上げ前の最終判断となる飛行準備審査を完了したのです。

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5月22日、エンジンのスタティック・ファイア・テスト。
Image: NASA

打ち上げにはトランプ大統領も立ち会う

27日の打ち上げにはドナルド・トランプ大統領も立ち会うとのことで、Demo-2ミッションが名実ともに重視されているのがわかります。ただトランプ氏は打ち上げを直接見られても、一般の人はできません。今回NASAは、これまた新型コロナ対策で、宇宙センターへの一般の人の立ち入りを禁止しているんです。

宇宙船の重要部分をテスト

このミッションでは、Behnken氏とHurley氏はクルー・ドラゴンの人工環境やディスプレイ、操作システムや操縦用スラスタといった重要部分をテストしていきます。ISSとのランデブーは自動でできる予定ですが、何か問題があればBehnken氏たちが手動操作もできます。ISSに到着後はNASAのChris Cassidy氏やロシアのAnatoly Ivanishin氏、Ivan Vagner氏と合流してISS関連のタスクや研究もこなしつつ、引き続きクルー・ドラゴンのテストも進めます。

長期ミッションに耐える宇宙船を目指して

Demo-2ミッションは打ち上げから地球への帰還までが計画されていますが、クルー・ドラゴンが戻ってくる日付は決まっていません。現在カプセルは軌道上に110日間とどまれるように装備されてますが、NASAからの要件として、その期間は最終的に210日にまで伸ばしていきます。地球に帰ってくるときは、宇宙飛行士を載せたクルー・ドラゴンが大気圏再突入し、大西洋に着陸することになっています。

その後はNASAとSpaceXでミッションを振り返り、商業乗員輸送計画として長期ミッションに耐える宇宙船の検証を目指します。すべて問題なければ、NASAは今年秋頃に女性ひとりを含む4人の宇宙飛行士をまたクルー・ドラゴンで打ち上げる予定です。

と、Demo-2ミッション打ち上げ直前のタイミングで、NASAの有人探査担当部門トップのDoug Loverro氏が突然辞任するちょっとした騒ぎもありました。その理由は「間違い」があったから、とする文書だけで、具体的なことはまったくわかっていません。ただ、Loverro氏はその「間違い」はDemo-2ミッションとは無関係だと言ってましたが、では月を目指すアルテミス計画の調達関係じゃないかとも言われてます。

そんなわけでちょっとミソが付いちゃったんですが、それでもこのコロナの折にあっても、長年準備してきたことがついに実現できそうなことが胸熱です。打ち上げ、そしてミッション完了まで、つつがなく行ってほしいです。