今エンターテインメント企業がすべきこと: フロイドの死についての抗議行動に寄せて

  • author Beth Elderkin : Gizmodo US
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  • Kaori Myatt
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今エンターテインメント企業がすべきこと: フロイドの死についての抗議行動に寄せて
Image : Disney (Twitter)

一体何が起きているのでしょうか。

Apple ストアもめちゃくちゃに..まるで略奪。さらに黒人コミュニティのための抗議行動であるはずが、黒人経営者のお店が破壊されるなど、混乱を極めています。

1992年のロサンゼルス暴動を彷彿とさせますが、実は私はこの暴動の時には現地ロサンゼルスにいたんですよね...。正直怖かったです。窓を開けるとダウンタウンは遠いはずなのに街全体が煙で霞がかったようになっていて、外にでるのすら恐怖。家具屋さんからソファを担ぎ出している人たちの姿をテレビで見て唖然としたものでした。今回も、当時と同じく、抗議運動に乗じてやりたい放題やっているひともいるように思えます。そんな今、メディアの在り方についての考察を米GizmodoのBeth Elderkinがまとめています。


ここ最近ずっと、ミネアポリスでのジョージ・フロイドの死を発端として、全米のいたるところで人種差別と黒人に対する警察の暴力についての抗議が繰り広げられています。5月30日の週末にかけて、米の警察はますます暴力で制圧しており、各メディアは機は熟したとばかりに黒人コミュニティとの連帯に関するツイートを次々と投稿してきました。これは単なる幕開けなのかもしれません。でも実際にio9がこれら各企業に、この暴動に対し今わたしたちに何ができるのかを問いただしても、多くの企業で明確な答えは得られませんでした

事件の概要とその後のデモ

ことの発端は5月25日に起きたあの事件。20ドルの偽札を使った疑いで、元警察官デレク・ショービンが逮捕しようとジョージ・フロイドを押さえつける動画が公開されたのがきっかけです。ショービンは「息ができない」という悲痛な訴えも無視しながらフロイドの首元を9分ほども押さえつけています。数日間の抗議を経てショービンは逮捕され、第3級謀殺罪と第2級故殺罪で起訴されることに。ただし、フロイドが助けを求めるのを横目にただ立っていただけの3人の警官については、解雇処分のみ(朝日新聞デジタルによると、6月3日、デレク・ショービンは第2級の殺人罪に、他3人の警察官についても、第2級殺人の幇助(ほうじょ)罪で起訴されました)。この事件はこれだけでも悲惨を極めていますが、アメリカの警官がこれまで黒人を殺害したケースが極めて多いことと、殺害した側の警官の責任を追求から守るシステムに焦点が当たる結果となりました。

抗議は6月に入ってからも続き、アメリカでは抗議行動や集会が全米各地で繰り広げられました。抗議の集会はアメリカだけにとどまらず、ニュージーランドやイギリスでも行なわれています。アメリカでのデモはことごとく警官の制圧に遭い、抗議に参加した人たちやジャーナリストに向けて催涙弾やゴム弾が発射され、だれかれ構わず逮捕されるなど、大騒ぎとなったのです。ナショナル・ガードと呼ばれる州兵まで召喚され、暴動が発生した各地へと派遣されました。フロイドが死んだ日の週末は阿鼻叫喚に怒りと涙が入り混じったものとなりました。少なくとも米政府が好戦的な姿勢を崩さない限りは 、簡単に収まりそうな気配はありません。

メディア企業はどのように黒人コミュニティを支えていくのか

5月31日には、複数のメディア企業が、黒人雇用者やコミュニティを支援する内容のツイートを発信し、Disney(ディズニー)およびMarvel(マーベル)以外の多くは「Black Lives Matter (黒人の命も他の命と同じく大切)」というフレーズをメッセージに含めています。このような連帯とそれに対する共感はいまだかつて見たことがない規模です。 以前、企業は同性結婚についての議論が巻き起こったときに、LGBTQ関連で同様の声明を出したことがありました。また、2017年の「Women’s March」でも男女平等をテーマに似たような動きはありました。今までにも企業のCEOや雇用者が個人として不平等に声をあげることはあったものの、有名ブランドがブランドとして人種についての議論に参加したことはありませんでした。このような結束がこの荒波の中に急速に生まれたのも、予期せぬことでした。ただそれだけでは、不十分です。

そこでio9では、さまざまなメディア企業に質問をぶつけてみました。Disney/Marvel、Warner Bros.、Universal、Netflix、Amazon Studios、ViacomCBS、Paramount、Sony、Hulu、The CW、HBO...これらの企業はすべて黒字に白文字で連帯をうたったテキストでの声明を事件直後にツイートしています。そこで、連帯について具体的に黒人コミュニティをどう支えていくのか、直接聞いてみることにしたのです。犯罪者の保釈金のための基金に寄付をしたのか、コミュニティのリーダー的立場の人や組織に送金したのか。これらの有名ブランドの企業内において発生していると思われる、人種差別的な偏見に向き合って対処する声をあげているか。黒人コミュニティに「そばにいるよ」と言うだけでなく、支援をするために具体的に何をしているのか。

いまのところ、回答が得られたのはHBOとViacomCBSのみ。ViacomCBSでは「Minnesota Freedom Fund」やその他のグループへの寄付を従業員に呼びかけていると回答しました。また、6月6日の週末に開催される「Blackout Tuesday」の参加も表明しています。 HBOはソーシャルメディアで共有されていることとWarnerMediaの内部コミュニケーションに関するレポートについて教えてくれました。Disney は質問に答えてくれませんでしたが、CEO Bob Chapekの覚書をリリースしています。 Disneyは「本当に変わるまで、声を上げ続ける」としています。6月3日、同社は「社会正義を推進する非営利団体」に500万ドル(約5億4000万円)を寄付すると発表しました。まずはNAACP(全米黒人地位向上協会)に200万ドル(約2億円)を寄付するとのことです。

メディア企業は警察との関係を見直すべき

メディア企業が人種差別に抗議する黒人をほんとうにサポートしたいのであれば、ツイートするだけじゃなく、行動すべきです。自分たちの企業の内部で組織的な差別がないかを表立って認識し、差別的な扱いを助長する警察との関係も見直すべきなんです。Amazonは監視やプロファイリングのために主にRingネットワークにて警察署と連携することを考え直すべきです。たとえば、抗議行動を制圧するための準備エリアとして、ロス市警にCBSの駐車場を使用する許可を出したのはなぜか。io9の質問に対し、 ViacomCBSでは駐車場は所有していないため、警察がそこを使用することについては決められないと述べていますが、それを非難する声明も行動も出していません。

警察だけではありません。準軍事組織システムも黒人に対する差別を許しているのです。Warner BrosはDC Entertainment社やその他の映画会社のための米陸軍との取引を考え直した方がいい。最近の調査によれば、米陸軍兵士の三分の一は、同じ階級内で差別を受けたか、差別を受けているのを見たことがあると回答しています。Disneyは米空軍と契約を結び、Captain Marvelを女性志願兵のリクルートのマスコットに使う取引を行なっていますが、報告によれば空軍は軍内の司法制度内にある人種格差問題をなかなか解決できないでいることがわかっています。

Marvel Entertainment (Disney所有)は民間軍事メーカーNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)と提携してNorthrop Grummanto社のプロモーションタイアップコミックを制作しようとしていました。このコミックは後に黒人エンジニアが出自についての差別を受けて告訴したことを受け、制作中止となっています。 また、Marvel Comicsは日本人になりすまし、ヨシダ・アキラというペンネームを使って他の出版社に漫画を描いていたC.B. Cebulskiを、自分がヨシダ・アキラであることを認めた後に昇進を認めています。また、Marvelの出版社は警察官がフランクキャッスル、別名パニッシャーのスカルロゴを制服の一部として、また車両に使用することについて、キャラクターを作ったクリエイターたちが反対を表明しているにも関わらず、これまで沈黙を守っています。

TVや映画制作現場での人種差別

これらのTVや映画制作会社では、映画の中でもまた映画を作る側でも人種差別がまん延しています。UCLA のレポートでは、2019年の映画で配役された黒人男性と黒人女性は全体の16%であるとしており、多くの主人公たちは白人であったと報告しています。映画の舞台裏でも、2019年の映画において黒人の脚本家はわずか8人。黒人の映画監督に至っては全体の5%を占めるのみとなっています。多くの優秀な黒人クリエイターは陽の目を見ていないという事実が浮き彫りになっています。

テレビについてはさらに深刻で(研究報告はほとんどが2016-2017シーズンのものとなっていますが)テレビに出演するキャラクターで黒人はわずか16%。舞台裏の黒人も非常に少数です。ただし、これについては差別にスポットライトを当てる動きもあり、CBSの毎年恒例のイベント「Diversity Showcase」などがあります。それでも芸能界は人種平等な世界とはお世辞にも言い難く、出演者や制作者側が人種的な平等を得ることも難しい中、世間一般に至ってはどれだけの人が差別されているのかは想像に難くありません。

もう1つの大きな問題は、何十年にもわたって氾濫してきた警察美化メディアのまん延です。 長年にわたって警察官に関するテレビ番組は300件以上も制作されています。そのうちのいくつかは今も放映されている科学捜査班や海軍犯罪捜査局ものの警察賛美番組です。また犯罪プロファィリングに焦点を当てた「Criminal Minds」などのショーに、警察の逮捕劇などを扱ったドラマでは、黒人(特に若い黒人男性)を犯罪者として描くことが通例のようになっています。また、犯罪に焦点を当てたニュースや「C.O.P.S」や「Live P.D 」(私が今まで見た中で最もめちゃくちゃで最悪な番組)のような「台本なし」の警官ショーもあります。 反人種差別関連NPOの「Color of Change」と「USC Annenberg Norman Lear Center」の2020年1月のレポートによると、こういったテレビ番組は世間一般の認識や犯罪者政策に影響を与える可能性があるとされています。

「犯罪もののテレビは、億単位の人々に犯罪と正義について考える機会をもたらすものですが、犯罪についての真の内容を歪め、法の力の虚偽のストーリーを助長し、黒人や有色人種や女性についての間違った印象を与えるものです。こういった犯罪もののショーは人種差別を見えないものにし、警察の説明責任の免罪符となってきたのです。司法制度システムにおける違法で、破壊的で人種差別的な慣行を、容認し、正当化し、必要とされる行為であるかのように作り替えています。時には英雄扱いすらしている。この研究では信じがたいほどにクリエイターの世界では多様性が欠けていることがわかります。ほとんどの人が白人なのですから」

ソーシャルメディアで、ただ空虚に響く言葉をツイートするだけではダメなんです。このような活動は急な坂道を上るほんの小さな一歩にすぎません。ツイートは現実となる解決策と抱き合わせでなくてはならないんです。火曜日に8分46秒間「黙祷」することや、警察の残虐行為について電話で議員に抗議すること、それらも長い目で見れば無意味なものになってしまうのですから。Warner Bros.、Netflix、Amazon Studios、Sony...そして黒人の生活を支援すると主張するすべてのメディア企業はツイートした内容を証明するために、行動をお金や価値で表すべきなんです。

具体的に支援する方法をご紹介しましょう保釈金支援基金の寄付は、ラスベガスのような都市で基金が不足しているといいます。裁判中の抗議者を代表する法の平等についてのグループの支援もよいでしょう。黒人が経営者となっている事業の応援もお勧めです。反人種差別について知識を仕入れましょう。

家族や友達にもぜひ呼び掛けてほしいです。