電子書籍の貸し出しを無料にしたインターネットアーカイブ、著作権侵害で訴えられる

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  • author Caitlin McGarry - Gizmodo US
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  • Rina Fukazu
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電子書籍の貸し出しを無料にしたインターネットアーカイブ、著作権侵害で訴えられる

非常事態下で良かれと思ったことが...。

新型コロナウイルスパンデミックの影響によって学校や図書館が閉鎖され、教育や娯楽の重要なソースであるを借りて読むことも難しくなってしまいました。そんななか「National Emergency Library」プログラムの一環として、3月から電子書籍の無料公開を始めたのがインターネットアーカイブ。ところが、アメリカの大手出版社らが著作権侵害を理由にインターネットアーカイブを訴える事態に発展しています。

「大規模な著作権侵害だ!」

困難な状況下でも無料かつ無期限で本を読めるプログラムを提供したことに対して、連邦裁判所で著作権侵害訴訟を起こすなんてナンセンスな話のように聞こえるかもしれません。

しかしアシェット・ブック・グループ、ハーパーコリンズ、ジョン・ウィリー&サンズ、そしてランダムハウスなどの全米出版社協会の加入企業が主張するところによれば、インターネットアーカイブは、著作権で保護された作品140万点(すなわち、パブリックドメインにある書籍ではない)を違法にスキャンし、無料で利用できるようにすることによって、著者やクリエイターが苦労して得た収入を奪っているというのです。

全米出版社協会のMaria A. Pallante社長兼CEOは、訴訟を表明する声明文のなかで次のように述べています。

今日の訴状は、インターネットアーカイブが大規模な著作権侵害を実施・推進していることを説明しています。

法的または契約上の権利を持たない文学作品をスキャンして配布することで、IA(インターネットアーカイブ)は著者や出版社の知的・金銭的な投資を故意に不正流用し、議会が制定した著作権法を明らかに無視しています。

「訴えても、誰の利益にもならない」

これに対して、インターネットアーカイブの創設者Brewster Kahle氏がニューヨークタイムズに語ったところによれば、彼の非営利団体が行なっていたことは、パンデミックのあいだ無料で利用可能な電子書籍をつくることで一種の図書館のように機能しているといいます。(ちなみに図書館の現状についても明確にしておくと、アメリカの多くの地域で施設が閉鎖されている一方、図書館カード保有者が電子書籍を借りる選択肢はまだ残っているようです。)

Kahle氏がニューヨークタイムズ紙に明かした見解は次の通り。

図書館と同じように、インターネットアーカイブは書籍を取得・貸し出しています。

このことは、出版社や著者、読者をサポートしています。学校や図書館が閉鎖されているあいだ、本(今回の場合、保護されたデジタル版)の貸し出しで出版社が図書館を訴えるのは、誰の利益にもなりません。

図書館とインターネットアーカイブの違いは

実際のところ、インターネットアーカイブの電子書籍貸し出しプログラムは、公共図書館とは異なるシステムをとっています。

アメリカの図書館は、OverDriveのようなサードパーティと協力し、出版社から電子書籍のコピーのライセンスを取得(期限つき)しています。ライセンスは一定期間後に失効します。また、物理的な書籍よりも多くの費用がかかることにも留意しておくべきかもしれません。また、コピーとはいえ無限に配布できるわけではなく、ひとりの人が決められた期日まで借りることができるようになっています。

インターネットアーカイブの場合、独自に物理的な書籍を購入(あるいは寄贈されたコピーを収集)し、スキャンするという方法をとっています。「National Emergency Library」プログラムを通じて、電子書籍は貸し出し期日は無制限で、誰でも利用できるようになっています。

著者はプログラム参加の可否を選べる?

Kahle氏は、「National Emergency Library」プログラムに参加するかどうかは著者にも選択肢が与えられていると指摘しています。ただ著作が含まれているかについて、インターネットアーカイブが電子書籍という形式で配布する前に知らせたかは明らかではありません。

また、なかにはプログラムへの参加を希望する著者もいるとKahle氏はいいますが、全米出版社協会の公開文書から判断すると、その他多数はかなり怒っているのかもしれません...。

両者の意見はわかった。でも...

インターネットアーカイブは、人々と本をつなげるために適切な手筈を踏んだように思えるでしょうか? もしかすると、それほどでもないかもしれません。じゃあ、訴訟のタイミングとして今は絶好のタイミングだったでしょうか? うーん、これはハッキリNO!じゃないでしょうか。

最後に言えることは...これからも地元の図書館をサポートしていきましょう!