UEはひとまず安泰。よかったね。
フォートナイト削除をめぐるEpic対Apple（アップル）裁判の予審が8月24日に開かれ、 北カリフォルニア地裁のボン・ゴンザレス・ロジャーズ判事は｢フォートナイトはともかく、規約違反してないEpicの系列まで巻き込むのはAppleもやり過ぎ｣との判断を示し、｢EpicとAppleが法廷で争うのは勝手だけどその泥仕合に周囲を巻き込まないこと｣と両社にブッスリ五寸釘を刺しました。
審理はZoomで行なわれ、｢スクリーンキャプチャおよび撮影は一切禁止｣だったので当日は視聴できなかったのですが、Sarah Jeong記者のスケッチが両社1歩も引かない緊迫した模様が手に取るようにわかると評判でしたので、上に貼っておきますね。
予審で示された司法判断
予審で判事は次の2つの判断をくだしました（本番前に場外バトルで双方燃え尽きてしまわないようにするための暫定措置であって、最終判断ではありません）。
① Unreal Engine開発者アカウント停止については、Epicが一時差し止め命令を獲得しました。Appleは報復的措置を直ちにやめなければなりませ
② フォートナイト削除については、Epic側の被害が修復不能とはみなされないため、Appleに削除撤回を命じることはできません。
①は｢Unreal Engineとゲーム業界全体に甚大な被害をおよぼす恐れがある｣緊急性を鑑みての判断です。Unreal Engine（UE）対応アプリのサポートは今後も継続するよう命じるとともに、｢AppleのプラットフォームでUnreal Engineが使えなくなったらEpicも事業撤退を余儀なくされるし、Epicに全然被害がないという主張は通らなくなりますよ｣とAppleに裁判の筋道を示しました。
②のフォートナイトについては、30%のアップル税込みプライスのみ表示して直接決済ボタンを削除すればストアに戻れるので、｢Epicが自分で蒔いた種に見える｣とし、削除撤回を命じるのは控えました。
いずれにせよMicrosoft（マイクロソフト）をはじめとするゲーム各社はホッとひと安心ですね。UEは映画や医療アプリでも使われているので、そっちまで敵に回すのはAppleとしても本意ではないだろうし…。裁判終了までステータスクオ（現状）を維持するという仮差し止め命令の目的にかなった妥当な判断と思われます。
判事は手数料30％をどう見てる？
もちろんこれは暫定措置です。Appleがアプリ内課金から徴収する手数料30％の料率が妥当なものかどうか、オンラインで登録や購読ができるアプリにまでアプリ内課金を求めてアップデートをブロックしたりするのは競争阻害行為に当たるのではないかという肝心の争点については、法廷で長～い時間をかけて争われます。
まだスタートラインにも立ってない段階なので判決の行方は神のみぞ知るですが、判事のポジションは予審の言葉の端々からある程度うかがい知ることはできます。判事は、iTunesがDRMで楽曲にブロックをかけてAmazonで聴けなくしたのが独禁法違反に当たるんじゃないかと争われた裁判でApple側に味方した人なので、また今回もかな…と思ったらやや雲行きが違うようです。肝心要の料率については｢AppStoreの中では競争がない｣との見方を示し、こうAppleに質問しました。
知りたいのは、競争がないのに何を根拠に30％としているのか、です。なぜ10、20％ではないのか。30％にすることでどのような利益が消費者にもたらされるのか。
これに対し、Apple代理人のRichard Doren氏は｢消費者はiPhoneとAndroidから選べる｣などと答えるにとどまりました。ティム・クックCEOが先月米下院の反トラスト法違反審理で答えた模範解答みたいで新味に欠けるせいか、判事に途中でミュートにされたりとかしたみたいですよ…。本審理は9月28日スタート。
とりあえずフォートナイトは削除を解除しなくてよくなったことでAppleは｢いつでも戻っておいで！ 直接決済ボタン外すだけで戻れるんだからさ！ 戻って裁判は9月からゆっくりやればいいじゃん、ね！｣という趣旨の声明を発表して、Epicにラブコールを送ってます。Epicは果たして禁断のリンゴを噛むんでしょうか…。
フォートナイト新シーズンは27日スタート。AppleによるEpic開発者アカウント削除のXデーは28日に迫っています…。
Sources: @SarahJeong, The Verge, Fox Business
