えっ…エイリアン?と見まごうほどブッ飛んだ天文系画像まとめ

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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  • 山田ちとら
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えっ…エイリアン?と見まごうほどブッ飛んだ天文系画像まとめ
ボヤジアンの星に向かう彗星群のイメージ図 Image: NASA/JPL-Caltech

あなたは信じますか?

この広大な宇宙のどこかに、わたしたちのような(もしくは似ても似つかないような)知的生命体が存在していると。それとも、人類は天涯孤独なのでしょうか。

この孤独を埋めたいから、人は科学では説明できないような天文現象に出くわしたときにSETI(地球外知的生命体)の存在を信じたいんじゃないか、と米GizmodoのGeorge Dvorsky記者は分析しています。

ひとりぼっちじゃない」と思いたいからこそ、火星の表面に運河の痕跡を見、電波信号に宇宙人の意図を感じてしまう。あとになって早とちりだとわかっても、そこにはロマンがあったはずなんです。

以下、あたかもエイリアンの仕業だと早とちりしてしまいそうな不思議な天文現象の数々をご紹介します。もし自分が第一発見者だったらどう解釈してたかな?と想像しながら見ると、ワクワクします。


希望的(星空)観測。

わたしたちの遠い祖先が初めて満天の星空を見上げたときから、早とちりは始まっていました。

人類はかつて頭上でまたたく数多の星を焚き火と勘違いしていたそうですし、おそらく彼らの心の目にはその天空の焚き火を囲んでいるであろう宇宙人たちの姿も映っていたんじゃないでしょうか。現代に至るまで、人類の想像力のたくましさと早とちりはとどまることを知りません。

火星人のかんがい施設?

パーシバル・ローウェルが見た火星人の奇妙なかんがい施設の図
Image: Percival Lowell, E. C. Slipher via The New York Times, August 27, 1911. Public Domain.

コウモリの絵?飛行機?いえ、これはかつて天文学者が火星の表面に見た運河です。

ことのはじまりは19世紀イタリア。天文学者ジョバンニ・スキャパレリが火星を望遠鏡で観測していたところ、直線でできた構造物らしきものを発見し、「筋(canale)」と表現しました。

筋(canale)」はやがて「運河(canal)」に英訳され、30年後にはアメリカの天文学者であるパーシバル・ローウェルが「火星人が農作物に水を運ぶために造ったかんがい施設に違いない!」と早合点することに。彼は自著『Mars and its Canals(直訳:火星とその運河)』に

火星になんらかの生命体が生息していることは確かであり、ただしどのような生命体なのかについては不確かである

と記したほど、火星人の存在を信じたかったようです。

その後地球はしばらく火星人ブームに湧きましたが、もちろん今ではただの地形が織りなす模様であり、運河なんて最初からなかったことがわかっています。

緑の小人からの交信?

ほ座超新星残骸に位置するベラ・パルサー(LGM-1)
Image credit: NASA/CXC/Univ of Toronto/M.Durant et al.

イギリスの天体物理学者ジョスリン・ベル・バーネルが1967年に初めてパルサーを発見したとき、その異常に早く、かつ規則的に変化する電波信号をどう解釈すればいいのか悩んだそうです。

後に『緑の小人、白色矮星、それともパルサー?(Little Green Men, White Dwarfs or Pulsars?)』と題したエッセイで、彼女はその時のことをこのように振り返っています。

よその文明が放ったシグナルを受信したとは本気で思っていなかったものの、その可能性は誰しもの脳裏をよぎりましたし、まったくの自然現象から成る電波信号だという証拠も持ち合わせていませんでした。

ある意味、これは興味深い問題です。もしこの宇宙のどこかに知的生命体がいると確認できたとして、その観測結果をどのように報告すれば社会の混乱を招かずに済むのでしょうか?まず誰に報告すればいいのでしょうか?

この問題が解決されることなくその午後はむなしく終わり、私は家路に着きながら非常に不愉快な気持ちになっていました。新しい天文学的技術を磨いて博士号を修得しようとがんばっている最中に、よりによって緑の小人たちが私の機材、私の電波周波数を選んで交信を試みてくるなんてね。

おもしろいことに、バーネルたちはその後発見した記念すべきパルサー第1号に「LGM-1(Little Green Men-1)」と名づけています。パルサーの正体は、宇宙人がほかの宇宙人と交信するために使う灯台のような装置…ではもちろんなくて、高速で回転している中性子星です。

謎に包まれた怪信号

エーマン氏が赤ペンで直接驚きと興奮の様子を記した貴重な資料
Image: Big Ear Radio Observatory and North American AstroPhysical Observatory (NAAPO)

1977年8月15日。オハイオ州立大学に設置されていたビッグイヤー電波望遠鏡が、強力な電波信号を受信しました。

その狭帯域信号は72秒間に渡って受信され、いて座の方向にあるM55球状星団から来ているらしいことがわかりました。当時SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトに携わっていたジェリー・エーマン氏がデータを分析してみると、「6EQUJ5」というコードが出現。なんとこのコードは電波信号の強度変化をピタリと表すものだったそうで、エーマン氏が驚きのあまり「Wow!」と赤で書き込んだことから、この信号は後に「Wowシグナル」と呼ばれるようになりました。

この電波信号の発信源は未だ特定されていません。エイリアンからのメッセージだと考える人もいます。彗星が巻き起こす水素ガス雲によるものでは?との学説をアントニオ・パリス氏が2016年に発表したものの、学術界ではあまり広く受け入れられていないようです。

思わせぶりな信号

グリーンバンク天文台に設置されている43m電波望遠鏡
Image: Green Bank Observatory (GBO), Associated Universities, Inc. (AUI), and the National Science Foundation (NSF)

1997年夏。SETI協会に所属し、宇宙からの交信を求めて日々観測に勤しんでいた科学者たちが、ある電波信号を受信しました。

グリーンバンク天文台に設置されている42メートル長のアンテナがとらえたその信号は、「テレビの放送信号よりも何百倍も狭いスペクトル」だったとSETI協会のセス・ショースタック上級天文学者は語っています。しかも、その信号は確実に宇宙から来ているものだと断定されました。(ちなみにですが、天文学辞典によれば、グリーンバンク望遠鏡から半径16km以内は国により厳しく電波規制されていて、携帯電話・テレビ・電子レンジなどの使用が禁止あるいは制限されているそうです。)

科学者たちの興奮は相当なものでした。「何年間も探し続けてきて、こんなに期待値の高い信号ははじめてだった」とショースタック氏。「まさか、本物では?

…非常に残念なことに、その信号の正体はNASAとESAが共同運営しているSOHO太陽圏観測機から送られてきた遠隔測定法のための信号だったことが後に判明しました。

「あちゃー」だった信号

こちらは米ギズモードのDvorsky記者宅にあるごくフツーの電子レンジ
Image: George Dvorsky, Gizmodo US

2015年。オーストラリアにあるパークス天文台を長年悩ませてきた怪信号の謎がついに解けました。

パークス天文台では2011年頃から極端に短い電磁波の波動が観測され続けていました。深宇宙から来ているかのように見受けられるその信号は「ペリトン(peryton)」とまで名づけられたものの…、なんだかすごく近くから来ているようでもあるぞ?!との疑惑が生じたためオランダ電波天文研究所のエミリー・ペトロフ氏が調査したところ、なんと発信源は電子レンジ

ペトロフ氏は「パークス天文台がある角度を向いている場合に限って、近くにある電子レンジのドアが時期尚早に開けられると1.4GHzのペリトンが発生する」と論文に書いています。「チン!」の音がする前にドアを開けちゃうとダメなんですねぇ…。あちゃー。

深宇宙から届く高速電波バースト

マグネターのイメージ図
Image: McGill University News Room

地球の観測器ではたった数ミリ秒間しか検出されない「高速電波バースト(fast radio burst)」。何万、何億光年という気の遠くなるほどの距離を移動しながらも高エネルギーを保ち続け、一瞬で地球を通り過ぎます。2007年に初めて発見されて以来いくつも観測されてきましたが、あまりに謎だらけなので「宇宙人からのメッセージでは?」と考える人もいました。

これまで観測されてきたFRBはすべて天の川銀河外から届いていましたが、2020年4月には初めて天の川銀河内からのFRBが観測され、発信源がより明確になりつつあります。現時点ではマグネター(極端に強い磁場を持つ中性子星)が有力視されています。

規則的に光る星たち

スローン・デジタル・スカイサーベイの口径2.5メートルの反射望遠鏡
Image: Sloan Digital Sky Survey

2016年、カナダ・ラヴァル大学の天文学者、エルマノ・ボーラ氏と大学院生のエリック・トロティエ氏は、宇宙人が強力なレーザーを使って地球と交信を試みているかもしれない可能性を追求していました。

二人はスローン・デジタル・スカイサーベイがマッピングした2億個のうち250万個の天体について詳しく調べ、その分光的特徴に明らかに周期性が認められるものだけを234個割り出して発表しました。それらすべてに共通していたのは太陽と類似していること。さらに、さまざまな可能性を排除した結果、周期的に信号を発しているのはスローン・デジタル・スカイサーベイ側の機材に問題があったか、もしくは宇宙人の仕業かの二択だと結論づけています。

ただし、「桁外れな主張には桁外れな証拠が必要」と諭している学者もおり、まだこれらの星に宇宙人がいて地球にメッセージを送ってきていると信じるには早すぎるようです。

不規則に減光する星

ボヤジアンの星のイメージ図
Image credit: NASA/JPL-Caltech

130年前に発見されたKIC 8462852は、はくちょう座の方向に1480光年離れたところにある連星です。KIC 8462852Aは太陽よりも大きくて熱いF型主系列星で、伴星であるKIC 8462852Bは小さくて暗い赤色矮星。このうちAのほうでは説明不可能なほどドラスティックな減光が発見され、注目を集めました。

2015年にルイジアナ州立大学の天体物理学者、タベサ・ボヤジアン氏が初めて発見したAの不規則な減光は、最大で22%も暗くなることがわかりました。これほど減光の度合いが大きい天体は観測史上初でしたし、さらに減光が著しく不規則なことも謎を深めるばかり。「ボヤジアンの星」の異称で多くの科学者を悩ませることとなりました。

これまで彗星の大群がボヤジアンの星に接近した説、ボヤジアンの星のまわりをいびつな宇宙塵の輪が取り囲んでいる説、星自体が破滅に向かっている、もしくはゆがんでいるとする説など、さまざまな提案がなされてきました。中でもペンシルバニア州立大学の天文学者、ジェイソン・ライト氏の仮説はぶっ飛んでいて、地球外知的生命体が造ったダイソン球のような巨大な建造物がボヤジアンの星の光を遮っているのではないかとしています。

2019年に発表された研究は崩壊しつつある衛星の影響を指摘しており、今のところ一番有力視されていますが、実際なにが起きているのかはまだ誰にもわかりません。

消えちゃう星

あとかたもなく消えてしまう星
Image:Image: B. Villarroel et al. (2019) via Gizmodo US

宇宙には確認されているだけで100個ほどの消える星が確認されているそうです。

正確には「レッド・トランジェント(red transient)」と呼ばれるこの現象は、暗い赤い星が次第に光度を増していき、1時間以内には完全に消えてしまうのだとか。

「恒星がダイレクトにブラックホールに吸い込まれる以外、いきなり消えてしまうような物理的なプロセスは考えられません」と研究者のビアトリズ・ビジャロエルさんは論文で書いています。「しかし、現実にレッド・トランジェントが確認されているということは、宇宙では未知の現象が起こっているか、高度な技術を持つ知的文明が存在している可能性も考慮すべきですね」とも。

ビジャロエルさんがいうところの「未知の現象」は、もしかしたら失敗に終わった超新星爆発かもしれませんし、赤色矮星からたちのぼる巨大なフレアかもしれません。それか、もしかしたらエイリアンの仕業なのかも。

宇宙について、もっとオープンに考えてみよう

大マゼラン雲に含まれる星雲ふたつ。赤く光っているのがNGC 2014、青く光っているのがNGC 2020。大マゼラン銀河とわたしたちの銀河系は20億年後に衝突すると言われている
Image credits: NASA, ESA and STScI

ここで述べてきたすべての現象に共通しているのは、誰も本当のことを知らないし、知りえないということ。

人間にできるのは、データを集め、そのデータに沿ってもっとも合理的な仮説を述べることです。それでも説明がつかない場合には、最後の手段として地球外知的生命体の関わりを考慮するのもアリなんじゃないでしょうか?可能性に過ぎないのは学術的仮説であれ、エイリアンの関与であれ同じ(可能性の度合いは違うかもしれませんけど)。実際ボヤジアンの星まで飛んでいって何が起きているか確かめられるようになるまで、人類はもっとあらゆる可能性に対してオープンになるべきです。

もしかしたらエイリアンは本当にいるかもしれませんしね。2021年も自由でオープンな思考でいきましょう!

Reference: 天文学辞典 1, 2