DELLの新作ノートはAIボタン搭載。だけど今のところ使い道が…

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DELLの新作ノートはAIボタン搭載。だけど今のところ使い道が…
DELL XPS 14。性能はともかく、見た目はかなりユニーク
Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

好き嫌い分かれるデザイン。

2024年版のDELL(デル)XPSシリーズは、13/14/16インチの3タイプ。AIボタン搭載ノートPC「DELL XPS 14」は、機能性も画面もパワーアップしました。

惜しいのはキーボードとボタン、そして27万円超えのプライスです。

DELL XPS 14

これは何?

DELLの新型ノートPC

価格

1,499ドル(日本国内価格:27万5980円~)

*レビュー機は2,399ドル

好きなところ

・真に洗練されたデザイン

・コントラストに優れた有機ELディスプレイ

・上質なサウンド

・タフなCPU処理性能

好きじゃないところ

・価格に見合わないグラフィクス性能

・キーボード、タッチファンクションメディアキーのコレジャナイ感

・「AIノート」なのにAIの使い道がはっきりしない

年明けのCESで見て「あ、違う」と思った人は、誰がなんと言っても違和感が先に立ってしまうかも。新しいXPSは3サイズともユニークで、使い慣れたノートPCとは異なるデザインだからです。

ボディラインはスリーク。開くと超フラット。何から何までが「未来」。しかも「AIボタン搭載PC」ですからね。未来的なオーラをはぎ取った中身が、評価しづらくもあります。

人気ビジネスノートのXPS 13 Plus(21万2459円)もフラットなデザインでした。従来型のトラックパッドがなくて、タッチボタンもなくて、キーは平らそのもの。そこまでフラットにするメリットがあるの?という声もありましたが、今回は13インチに14&16インチの仲間が加わってのフラット展開です。

サイズとスペックの選択肢を増やすことより、今年のDELLが注力しているのは、「AI PCがノートの未来」というコンセプトでお客さまを引き寄せること。

XPS 14もXPS 16も、プロセッサにはIntel(インテル)Core Ultra CPUが採用されています(14で選べるのはUltra 7まで、16インチはUltra 9まで)。これはNPUでAI処理を超高速化しながら、Microsoft CopilotなどのオンデバイスAIのタスクをバックグラウンドで処理することも可能なCPU。噂の「Copilot専用ボタン」も、右のAltキーのすぐ隣に装備されました。

このボタン、あんまり出番がなくて寂しそう。そのうち出番が増えるかもしれないけど、そんな先を見越してPC買う人は少数派。みんなが欲しいのは、今目の前にあるタスクをサクサク処理してくれるPCなのが悩ましいところですねー。

携帯性に関しては、XPS 14は優秀です。最薄・最軽量とはいかないまでも、今買えるノートPCのなかでは薄くて軽くて、美しくありながらもパワフルなモバイルPCのトップ集団に入ります。

残念なのは価格でしょう。デザインがあまり好みじゃない人は特に割高に感じそう。一番安い構成で1,499ドルですが、それだとSSDは512GBで、GPU性能で妥協が必要。画面も有機ELではなくFHD+になっちゃいます。十分だけど、ニュース性はありません。

ディスプレイを欲張れば300ドルUP。RTX 4050にすれば200ドルUP。SSDを1TBにすれば100ドルUP。RAMを32GBにすると200ドルUP(増設不可の実装メモリなので32GBは欲しい)。それやこれやで総合すると、結構なお値段。フラットなキーボード、XLの目立たないタッチパッドがよっぽど好きじゃないと出せない価格です。フラットなデザインが好きでも嫌いでもない自分みたいなタイプには、ちょっと割高すぎるように思います。

かっこいいデザインだけど、そこまで惹かれない

20240404XPS14_design
Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

最近僕はユニークなデザインに飢えています。ノートPCと言えば、どれも似たようなグレイやオフホワイトの四角いデザインばかりで、もう飽き飽きだ! もっと面白いの出してこい!とウェイターに絡む客みたいな心境。

そんな自分なので、DELLから新しいXPSが届いたときにはそれなりに期待もあったのですが、実際手にとってみると、昔ながらのXPSを贔屓にしていた人たちの戸惑いや憤りが手に取るようにわかるから不思議です。

大きな目立たないトラックパッド、平らなキー、上部に配された光るユーティリティボタン。DELL製ノートは何から何まで文句のつけようのないルックスです。

初めてDELLがXPSのデザインを一新した2年前には異論もあったけど、今ではすっかりこのデザインに落ち着いています。筐体のフォルムは昔のMacBook Airをちょっと彷彿とさせます。好き。滑らかな傾き、耐久性に優れたCNC機械加工のアルミニウムは美しく、手に持つとかなりいい感じです。

もちろん片手だと、腕が丈夫な人じゃないと長くは持てませんけどね。14インチXPSの重量は有機ELディスプレイで3.8ポンド(1,724g)、有機EL抜きで3.7ポンド(1,678g)あります。

厚さはそんなになくて0.71インチ(1.8cm)の薄型なので、バッグに入らない心配はありません。開くとき爪でひっかけないと開かないので、これはノッチが欲しいかな。

こんなスッキリしたデザインなのに、ポートは割とあります。左側にはThunderbolt 4対応USBタイプCのポートが2つ、右側にはイヤホンジャック、mini SDカード専用スロットと、USBタイプCのポート1つ。同梱のドングルを挿し込めば、そこからHDMI 2.1、USBタイプAのポートも使えます(どうせならここにフルSDカード用スロットも欲しかった)。これはプラスチックのちっちゃなポートハブで、もっと耐久性の高いドングルはほかにもありそうですが、それでもMacBook Airみたいな薄型ノートはポートが少ないのが悩み。それに慣れてる身にとっては、XPSは天国です。

パームレストは全面ガラスなので、慣れてないと最初は少しツルッツルです。僕の場合、少し使ってたら慣れて、氷の上で滑る熊みたいな感じはなくなりました。

トラックパッドは目に見えないので、指が慣れるかどうか心配かもしれないけど大丈夫。スワイプもスクロールも普通に問題なくできます。左矢印キーからWindowsキーまでが全部トラックパッドになっているので、幅はかなりあります。指が端までいって突っかかることは滅多にありません。タッチバーに指紋がべたべた残ることもありませんでした。ナイス。入力中に勝手にスクロールやクリックされることもなくて、これはRazer Bladeにも見習ってほしいなと思いました。

肝心のキーボードは、キー自体が1mmしか沈まないのでゴムバンドを叩いてる気分ですが、入力はかなりスムーズにできます。FとJに突起があるので、目で見なくても指は配置できます。さらにセンサも付いていて、周囲が明るいと自動的にバックライトがOFFになります。

一番上には「タッチファンクション」ボタンが並んでいます。これは読んで字のごとく、タッチで操作できるボタン。埃や塵で見えづらくなる問題はないけど、正直普通のボタンでいいじゃんと思ってる自分がいます。押して表示されるまでに時間的なラグはないけど、DeleteやEscはよく使うボタンなので、電子的じゃないボタンのほうが僕は好きだな。

Copilotキーはまだ出番がない

20240404XPS14_AI
Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

噂のCopilotキーはどうかというと、いい・悪いの前に「押す理由」がないんですよね…。そのうち押しまくるようになるかもしれませんが、今はまだ「解決する問題もないのに生まれたソリューション」という印象です。

大手PCメーカーが最近発売した「AI PC」のなかには、本来想定されるベンチマークよりいい結果を出している製品もあります。例えばMSI Prestige AI EvoをはじめとするノートPCは驚くほど成績が良くて、仕事用の探してる大勢の人に勧めて回ったほどです。

そんなのを見た後なので、Intel Core Ultra 7 155H搭載の新型XPSを見ても、あまり驚きは感じませんでした。同じCPUを積んだノートPCは今年たくさん出ているし、処理性能的にも目新しい材料はありません

GeekbenchなどのCPUのベンチマークテストでXPS 14が出した数字は、Intel Core i7-14700HX搭載のAcer Predator Helios Neo 16とだいたい横並びでした。薄型ノートの処理速度を高める2024年のCPUとしては十分ですし、DELL最新ゲーミングノート「Alienware m16 R2」に入っているのと同じではあるのですが、Cinebenchのベンチ結果は、DELLのゲーミングブランド(Alienware)のノートPCの方が、マルチコアの設定で若干成績は上でした。グラフィクス処理でも、もっと上位のCore i7-14700HXの方が、XPS最安CPUより上という結果です。

この結果は、あらゆるグラフィクス系のタスクで共通でした。XPS 14のスリムボディにNvidia GeForce RTX 4050を搭載できるのは素晴らしいことなのですが、それを積んでもグラフィクス用の使用に耐えうるパワフルなPCではないということになります。

3D MarkとBlenderのテスト結果はまずまずでしたが、ド肝を抜くほどではありません。BlenderのテストではBMWの画像をCPUとGPUの各設定でレンダリングしてみたんですが、処理所要時間は結局Apple自社製M3チップ搭載のMacBook AirMacBook Pro 14と並ぶ程度。悪くはないけど、感動するほどじゃなかったです。ポータブルPCとしては合格点だけど、グラフィクス系のタスク専用のものが欲しい人が選ぶベストではない感じですね、4050のを選んでも。

これだけGPUが立派だと、どうしても気になるのがゲーム性能ですけど、そちらに関しては、安定したフレームレートでプレイできました。『Baldur’s Gate III』や『Warhammer 40K Darktide』もDLSSオンでやや安定したフレームレート。とはいえ、耐熱は端末の限度ギリギリいっぱいになります。2024年XPSラインのなかでも有機ELディスプレイは可変リフレッシュレート最大120Hzなので、動作サクサクのゲームであれば表示もキレイです。もっとも専用のゲーミングPCではないので、そのレベルの性能は期待できません。

気になるAIに関しては、AI処理用のNPU付きのCPUが実装されてはいるものの、使い道がないのが現状です。Copilotキーを押すとメニューがポップアップして、いつものようにプロンプトを入力してチャットボットと対話できる。それはそうなのだけど、なんせ処理はすべてクラウドです。使ってる最中でも、端末内のNPUで処理が早まってるという実感がないんですよね。

今年も3カ月が過ぎてもう4月。ビデオコールのとき背景をぼやかす処理に使うとIntelが約束して半年が経過していますが、WindowsではまだNPUを使いこなせていないのが現状です。

Intelに取材したところでは、こうした最新のチップでいずれはオンデバイスでのAIの処理が可能になるそうですが、まだ実用には至っていないということですね。

最高のディスプレイ、サウンドも上々

20240404XPS14_display_sound
Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

XPS 14の画面は14.5インチ。高いほうの有機ELはめちゃキレイで3.2K対応、解像度3,200×2,000。横のベゼルはわずか数mmです。

明るくてクッキリで、一応タッチスクリーン。ノート兼タブレットほどタッチは使わないかもだけど、手垢は付きにくくなっています。仕事用ノートなのに、最大120Hzの可変リフレッシュレートに対応しているのには(いい意味で)驚きました。

ピーク輝度は400ニトです。一番明るいってほどじゃないけど、普段使いで不自由は感じない明るさですかね。

有機OLはカラーのコントラスト、特に漆黒のブラックで大きな違いが出ます。DELLは画面をぎりぎりいっぱいまでとってるので、使用中もずっと目で満足できるPCと言えます。

WebカメラはこのサイズのノートPCとしてはいいものを入れています。前のXPSよりはるかにいい1,080pのカメラを実装しました。スイッチやカバーは付いていなくて、ON/OFF切り替えはセンサの自動感知でやってくれます。退席中も同じセンサで画面がロックされます。ハックを心配する人もいそうですが、カバーがなくなったのは注目に値しますよね。画質は暗所で撮ってもまずまずの映りでした。蛍光灯の下だと多少ノイズは入りますけどね。

ちょっと惜しいのは音質で、画面の美しさに釣り合っていません。プロがチューニングを行なった上質サウンドだとDELLはPRしていますが、360度の空間オーディオらしさが感じられなくて、これは膝の上に直接乗せても同じでした。一応Dolby Atmosと3Dのステレオが搭載になっているのですが、低音が今ひとつで、サイドにスピーカーを置いても変化なしです。音量的には問題ないのですけどね。サウンドは感動するほどじゃない及第点という印象です。

バッテリー持ちは中くらい

20240404XPS14_battery
Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

最適化モードにして仕事で使ったら、だいたい6~7時間で電池切れの赤い表示になりました。やったのは基本的な文章入力とネットやストリーミングタスク。ノートPCとしては立派なものですが、XPSみたいな仕事用マシンとして考えると、期待以下と認めざるをえません。70WHrのバッテリーなので、無茶苦茶持つとは思ってなかったけど、省電に優れたMacBook Airみたいなのと直接比べられたらと思っていたので。

先のXPS 13 Plusでも同じこと書いたので、なおさら残念です。ファイル内のDELLの注釈によると、3.2K/有機EL版のほうがFHD+版よりバッテリー持ちは短いのだそう。

でもまあ、XPS。ベーシックなタスクでは発熱の心配はありません。通常モード、最適化モードの設定で温度は最高29.5℃(85F)程度でした。

「パフォーマンス」モードで使うときには、標準装備のMyDellアプリで冷却の設定を「最適化」から「超パフォーマンス」に変更もできます。

高負荷でファンがフル回転のとき、画面の至近距離で温度を測ったら43℃前後でした。総じて、温度はうまく制御できています。My Dellアプリでファンの回転速度を手動で設定しなきゃならないのは手間ですけどね。

どんな状況でもファンはそんなにうるさくなくて、超シンプルなタスク、中ぐらいのタスクをこなしてるときには、まったく音がしないです。

購入を考えている人は、見た目に惑わされないこと

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

XPS 14はこのサイズで、このパワー。欠点らしい欠点もないPCです。ただデザインから期待するほどのスゴさがないのも事実で、画面や全体的な処理性能には満足でも、キーボード、特にタッチのファンクションキーはあんまりスゴく感じません。もっと軽くて薄かったら、MacBook Airの強敵になるところですが、結局薄型ノート市場で健闘しているほかの14インチのWindowsノートと比べてる自分がいます。

こんだけスリムなボディにRTX 4050を搭載できたのはさすがDELL。…とは思いますが、同じことをやっている製品はほかにもありますし。XPSをゲーミングノートと比べるのは控えたいところですが、GPU性能に優れたゲーミングノートが買えることを考えるとどうしても比べてしまいます。

例えばAsusのZephyrus G14なら、26万8900円の一番高いのを選べば、メインメモリ32GB/GeForce RTX 4070のモデルが買えますし、これが最安14インチゲーミングノートというわけでもなくて、XPSと同じチップが入ってるHP Omen Transcend 14に至っては24万8999円。DELLのAlienware x14 R2(27万7979円)だって、RTX 4060にしてもXPSほど高くありません。

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https://www.gizmodo.jp/2024/03/hp_newproduct_launch.html

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