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ヒットドラマ連発のフジ大多亮氏、「ネット時代のテレビの戦い方」を語る

World Now 更新日: 公開日:
多くのヒットドラマを手掛けたフジテレビの大多亮常務。今は国際ビジネスやインターネット事業などを担当する=東京都港区のフジテレビ、大室一也撮影

■海外と組み、ドラマを共同制作

――今秋、ドイツの公共放送の子会社ZDFエンタープライズ(ZDFE)と共同制作するドラマ「THE WINDOW」がクランクインしました。

ZDFEとは番組販売のビジネスをやっている。毎年秋に南仏カンヌである世界的なテレビ番組の見本市「MIPCOM」で、3年前に両社の間で企画の話が出て盛り上がり、「ぜひ一緒に」となった。

ZDFEの勧めで制作がロンドンのプロダクションに決まった。ドラマの主な舞台は英国のサッカープレミアリーグ。英国にした理由は二つ。欧州や北米での番組販売を意識すれば、当然舞台は英語圏がいい。もう一つは、世界で一番派手で、人気があるリーグとも言われている。舞台設定としても一番だ。

来春クランクアップするが、欧州やアメリカのテレビ局か、それともネットフリックスやアマゾンプライムビデオに代表されるようなワールドワイドな動画配信サービスか、どこのプラットフォームでドラマを流すのがいいかZDFEと相談しながら販売先を決める。世界の多くの人に見てもらう夢を持っているので、いつフジで流すかはドラマの売り方次第だ。我々は世界で勝ちたい。

世界最大級のテレビ番組見本市「MIPCOM」で、独の公共放送子会社との共同制作ドラマ「THE WINDOW」について説明するフジテレビの大多亮常務=10月、フランス・カンヌ、大室一也撮影

――中国の配信業者ともドラマを作っています。国際ビジネスに熱心ですね。

今春から、中国の配信プラットフォーム「YOUKU」と連ドラを共同制作し、フジの配信サービス「FOD」と同時配信を始めた。中国は巨大市場。カントリーリスクが高いと言われるが、中国との関係がないと、少なくともアジア、そして世界には簡単に出て行けない。中国とのビジネスの絆がどれくらいあるかが、ある意味、我々の生命線だと思っている。中国市場に出て行く名刺代わりとして非常にいい形がとれた。

日本市場はすごく大きい。以前日本のテレビ局は国際ビジネスに力を入れていなかった。最近は将来も右肩上がりの成長が続くか微妙なところに来たので、危機感が出てきた。国際ビジネスに消極的だったというより、無理だろうと思っていたこともある。「日本の番組を世界の人が見てくれるなんて考えられない」と10年前に言われたら、反論できなかっただろう。

しかし、ネットが出現し、私たちが作った番組が世界でも実際に見られるようになった。(フジが制作した)若い男女の恋愛リアリティーショー「テラスハウス」が良い例だ。海外で受けるなんて、これっぽっちも思っていなかった。新作がネットフリックスで世界約190カ国・地域で配信されている。ネットの発達で、本当に目の前にチャンスが生まれてきた。先日、ロンドンの制作会社のプロデューサーから、「テラスハウスのファンなんだ」と言われた。国際ビジネスで名刺代わりになり、非常に信頼もされる。

フジテレビは世界各国のジャーナリストに自社について知ってもらおうと、世界最大級のテレビ番組見本市「MIPCOM」会場に設けられたプレスルームに自社のロゴをあしらった=10月、フランス・カンヌ、大室一也撮影

■ネットとテレビは対立関係ではない

――いつごろからネットに関心を持ったのですか。

10年ほど前、デジタルコンテンツ局長をした。ツイッターが日本でも広がり始めたころ。ネットが発展したら、そこで番組を見るようになるんじゃないかと感じた。ネットの世界の中に面白い人がたくさんいた。サイバーエージェント社長の藤田晋さん、今、ヤフーを展開するZホールディングスの社長になった川辺健太郎さん、チームラボ代表の猪子寿之さん。学ぶべきところは学ばなければならないと思った。

ネットはテレビと二項対立するものではない。とにかく両方やる。うまく組み合わせ、新しいサービスを開発しなければならない。いろんなプラットフォーマーが現れるのは素晴らしい、よい時代だと思う。我々の番組が供給される可能性があり、共同制作のチャンスも増えるかもしれない。

――15年にネットフリックスとテラスハウスの新作の制作・配信発表に至ったのは、どんな経緯があったのですか。

地上波放送でテラスハウスが終わっていた。もったいなと思っていたところ、ネットフリックスが日本にも上陸すると聞いた。ネットフリックスはドラマを売りにしていたが、フジから面白いリアリティーショーがあると打診したのがきっかけだった。

当時、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオのサービスが日本でも始まるころで、黒船来航と非常に騒がれていた。幕末の志士、吉田松陰も黒船に乗り込みにいった。黒船に乗ってみなければわからない情報もあると思っていた。

一緒に仕事をしてみると、互いにオリジナルコンテンツで勝負する志向性、思想があることがわかり、非常に話があった。世界的に有名な日本人映画監督の黒沢明や小津安二郎についての話題も出てきて、すごく気も合った。

■今後の民放のあり方

――今秋から来春にかけ、アップル、ディズニー、ワーナーメディアといった米国の娯楽王手などが配信ビジネスに参入しています。どう対処しますか。

日本では戦国時代、群雄割拠と言われているが、じゃあ我々がそんなにワールドワイドなのか。日本のテレビ局がどうやってそういった業者と伍(ご)していけるのか。あれだけの資金力と、世界中の多くの人が知っているような知名度は我々にはない。プロ野球チームと高校野球はレベルが違う。所属するリーグがそもそも異なっている。

だから、群雄割拠とは言えない。我々は我々のやり方で、世界ビジネスを構築するための第一歩、第二歩を踏み出しつつある。とにかく、まずは1本でも2本でもいいから、世界に通用するコンテンツを作れるかどうか。また、それを海外の大手プラットフォーマーやテレビ局が買ってくれるのかにかかっている。まさに端緒についたところだ。

民放は稼げなくなればつぶれてしまう。今まで地上波で放送し、視聴率が取れれば、立派なスポンサーがついてきて、ビジネスが成り立っていた。現状それが簡単でなくなってきた。僕らがやっているようなデジタルや国際ビジネスをひたすら掘り進めていくしかない。今は小さいし、地上波の広告収入並みにするのは全然簡単ではないが、未来はそれを怠らないことにかかっている。