帰国後に高田博厚が手掛けたブロンズの裸婦像「海」(1962年)

帰国後に高田博厚が手掛けたブロンズの裸婦像「海」(1962年)

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高田博厚の生涯たどる 福井市美術館16日から企画展

福井新聞(2017年9月14日)

 少年時代を過ごした福井で文学、哲学、芸術に目覚め、渡仏して近代日本彫刻を代表する作家となった高田博厚(1900-87年)。没後30年を記念し、評論家、思想家としても数々の著作を残し、日本、欧州で一流の文化人と交わったスケールの大きな生涯を、代表作や影響を受けた巨匠の名品とともに展観する企画展「高田博厚展―対話から生まれる美」(福井新聞社共催)が16日から、福井市美術館で開かれる。

 石川県七尾市生まれの高田は、2歳のときに福井県出身だった父の弁護士開業のために福井市に移り住み、18歳までを過ごした。学校の勉強よりも哲学や文学、美術書に熱中する早熟な生徒だった。

 上京後は彫刻家、詩人の高村光太郎と親しく交わり、独学で彫刻を始めた。31年に妻と4人の子どもを東京に残して渡仏。近代彫刻の巨匠ロダン、ブールデル、マイヨールの作品を目の当たりにし、10年間彫刻をやってきた自負は砕け散ったという。

 だが文豪ロマン・ロランをはじめ哲学者アラン、詩人のジャン・コクトーら知識人の輪に招き入れられ、友情に支えられた。高田は彫刻に没頭し、他者、自己との対話を通じて感性を磨き、思索を巡らせた。やがて、彼らの内面や精神の面影までも照らし出すような肖像彫刻を制作するようになる。結局パリ滞在は第2次世界大戦をまたぎ、27年間に及んだ。

 展覧会は福井・東京時代からパリ時代、帰国後の東京・鎌倉時代へと生涯をたどる5章構成。肖像、人体像を中心とした収蔵品に借用品を加えた計65点と、晩年を過ごした鎌倉市などから借り受けた愛蔵品、アトリエにあった制作道具なども並べる。

 パリ時代に手掛けた傑作トルソー「カテドラル」(1937年)や、ロランやアラン、ガンジーら交流のあった人々の肖像彫刻をはじめ、若き日の高田に衝撃を与えたロダンの「ロダン夫人」(1882年、大原美術館寄託)やマイヨールのトルソー「ヴィーナスの誕生」(1918年、群馬県立近代美術館蔵)などの名品も併せて展示。高田の像の特異性を浮き彫りにする構成となっている。

 洋画家岸田劉生の元を訪ねた際に持参した18歳のときの油彩画「自画像」(1918年、個人蔵)や、貴重なドローイングも並べる。福井市美術館の鈴木麻紀子学芸員は「西洋彫刻の精神性を理解し、モデルの内面の本質に迫ることを重視した高田は、『似ていなければ、彫刻に似せていけばいい』とまで言い切り、自分の表現を求めた。福井にこんなスケールの大きな作家がいたことを知ってほしい」と話している。

 11月5日まで。一般千円、高校・大学生500円、小中学生200円。10月1、7、14、22日は午後2時から作品解説会がある。10月28日には高村光太郎と妻千恵子、高田の人間模様を描いた朗読劇を3回上演する。問い合わせは福井市美術館=電話0776(33)2990。

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