社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

画像: TSUKUBA Vision

2014.04.02

経営・マネジメント

社会インフラを考える (4) インフラ維持に住民とICTを活用せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

不可欠なのは道路インフラの維持管理コストの抑制であり、そのために必要なのは住民ボランティアと、優先度づけを判断するための点検の自動化・効率化だ。

前回、以下のことを論じた。

長きにわたって建設ばかりに目が向いていた道路・橋梁・トンネルなどの道路インフラはこれから本格的な老朽化と改修の時期を迎えること、人手不足等から道路インフラの維持管理コストが急上昇していること、一般道路に対し管理責任のある地方自治体に道路専門家が少なく実質的には放置されていることなどだ。

結論として、使えない道路が急増する危険を回避するには、これからの道路予算は新設よりも維持管理に優先的に振り向けるべきと断じた。

しかし実はそれだけでは十分ではない。あまりに長大な距離の道路を日本全国に張り巡らせたせいで、このままでは道路インフラの維持管理に掛る手間とコストが膨大になり過ぎてしまうことが明白なのだ。

政府もこのことには気づいており、数年前から対策を検討してきている。

http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h23/hakusho/h24/html/n1216000.html (国土交通白書2012

不可欠なのは道路インフラの維持管理コストの抑制であり、その具体化方法の検討・開発だ。

難しいながらも本来最も効果が高いのは、維持管理すべき対象を絞ることだ。人口縮小に合わせて地域の居住区の集約を図り、使わなくて済む道路は閉鎖するのだ。

民間ならば当たり前の「リストラ策」だが、公共の施設に関しては、よほど胆力のある政治家がいるか、自治体が破たんして他に選択肢がないか、いずれにせよおいそれと進む話ではない。

市民○○センターなどという地域の公共の建物であれば、維持する予算がないからと開き直って閉鎖する選択肢もあるようだが、こと道路・橋に関しては生活インフラだから、その先に住んでいる人がいる限り、閉鎖するのは最後の手段だろう。

こうした議論でよく出るのは、「じゃあ民間委託してみれば」という意見だ。維持管理の具体的諸業務の大半は既に民間の会社に委託されて実施されているので、ここで意味するのは「包括的民間委託」、すなわち道路の管理をまるごと民間に任せてインフラ維持をしてもらうということだ。

でもこれは道路を有料化しそこから上がる収益で賄うということだから、それができる区間は日本全国でも非常に限られており、大半の一般道路には当てはめることができない。

となると現実的な手段は限られてきて、それは地域住民によるボランティア活動と、ICT(情報通信技術)による徹底した省力化・効率化ぐらいしかないと小生は考える。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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