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SaaSビジネスに必要なもの――スタートアップを助ける「三種の神器」「クラウド・バイ・デフォルト」の波(1/4 ページ)

» 2019年06月06日 06時00分 公開

 ビジネスの世界において、「製品」という“もの”は売ったが最後、そのまま相手が所有して使い倒すのが常だった。サポートや保守契約という概念があるが、それが売り手との唯一の接点であり、トラブル時に問い合わせることで契約が履行される。

 だが今日、インターネットの発達とともにサービスの提供形態は変化を続け、売り手と買い手の接点やコミュニケーションを取るためのチャネルは多く存在する。ダイレクトセールスという表現があるが、問屋や小売店などの流通網を介して初めて広域展開が可能だったものが、こうしたネットワークを介さずとも全国展開が可能になり、かつ販売後も顧客と直接コミュニケーションを取ることが容易になった。

消費者の“もの”に対する所有の概念は大きく変わった(iStock.com/krblokhin

 こうした変化は一般の消費者向けサービスで顕著だ。以前は音楽といえばCDを購入したり、少し時代が進んでダウンロード販売を経て手に入れたりしていたが、今日では月額料金を支払うことで無制限に音楽が聴けるストリーミング配信サービスが主力になりつつある。「サブスクリプション」と呼ばれる月額料金の支払いを止めた途端に楽曲を聴くことはできなくなるものの、その契約が有効な間は何千万もの膨大な楽曲ライブラリにアクセスでき、プロや同好の士が集めたプレイリストを通じて好みの音楽を満遍なく楽しむことができる。

 かつてはアメリカ全土に存在していたレンタルビデオショップだが、当時大手の1つだったBlockbusterは本稿執筆現在1店舗を残すのみ。最盛期だった2000年ごろの店舗数が9000店だったことを考えれば驚異的な変化である。

 当時、郵便を使ってレンタルDVD事業を行っていたNetflixが、現在は映像のストリーミング配信サービスで世界最大手となり、オリジナルコンテンツ制作に力を注いでいる。これは消費者の“もの”に対する所有の概念が20年弱で完全に変化したことの証左であり、売り手、つまりサービス提供者側にとっても意識の改革が求められていることを示している。

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