「銀行API開放は、21世紀のATMである」 目処ついた参照系、不透明な更新系(1/2 ページ)

» 2020年04月16日 15時05分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 銀行の基幹システムに、インターネットを介して外部のサービスが接続できる銀行API。その最初のマイルストーンが大詰めを迎えている。銀行APIが整備されることで、いったい何が変わるのか。

 2020年6月までに、国内130ほどある銀行のうち、80行程度以上の銀行におけるオープンAPIの導入を目指す――。いまから3年前の17年に、政府が「未来投資戦略2017」の中の1つとして掲げた、フィンテック関係のKPIだ。

「未来投資戦略2017」より(PDF)。同時に「キャッシュレス決済比率の倍増」というKPIも新たに設定された

銀行APIは21世紀のATMである

 この銀行APIについて、電子決済等代行業者協会の代表理事を務める、マネーフォワード取締役の瀧俊雄氏は、「21世紀のATMである」と表現する。銀行からお金を引き出したり、振り込みをしたり、通帳記帳したりする、物理的な基盤がATM。これらの機能を、インターネット上のサービスから行えるのが、銀行APIだと考えると分かりやすい。

ATMを置き換える銀行API。電子決済等代行業者協会資料より
ATM機能 銀行API
口座開設(印鑑) 口座開設(eKYC)
現金をおろす チャージ元としての銀行口座
残高照会・記帳 家計簿・会計ツール・アラート
振込(窓口・ATM) 取引需要の発生する場所へのSDK
アクセスのよい所にATMを置く トラフィックの多い所にAPIをつなぐ
ATMがあるから使う 求めているUXがあるから使う

 なんだ、ATM機能がネットに置き換わるだけか、と思うと、影響を見誤る。利用者に「なぜこの銀行を使っているんですか?」と聞くと、多くが「ATMが通勤路にあるから、または勤務先から給与振込口座として指定されたから」と答えるからだ。

 いわば良い立地にATMがあることは、その銀行の最大の利便性だと捉えられ、優秀な営業マンとして口座獲得に貢献してきた。ところが、進展著しいキャッシュレスと銀行APIが組み合わさることで、風景は一変していくだろう。

 「現金がフィンテックの力でなくなっていく中では、銀行も、別の要素で選ばれていく。これが今後の世界観だ」(瀧氏)

 現金がなくなった世界ではATMはいらない。そして、これまでのように物理的に人間が移動しなくても、銀行APIによって、オンラインでさまざまな手続きができるようになっていくからだ。

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