瀕死の観光産業を救うか? GoToで注目される「ずらし旅」とはコロナで生まれた新しい旅の形(1/4 ページ)

» 2020年10月14日 08時00分 公開
[村田和子ITmedia]

 コロナ禍で苦境が続く観光業界。移動を控え地元再発見がテーマの「マイクロツーリズム」が好調だ。他方、移動を伴う旅は、10月1日から東京発着の旅行が「GoToトラベルキャンペーン」の対象に加わったことで上向いてはきているものの、いまだ厳しく、運輸関連の企業は先が見えない状況が続く。

 航空会社の9月の減便率はJAL40%、ANA47%。陸へと目を向ければ、9月16日に発表があった2021年3月期通期連結最終損益予想は、JR東日本が4180億円、JR西日本が2400億円のいずれも赤字と、かつてない状況となっている。

 出張者でにぎわい「ドル箱」といわれた東海道新幹線を運行するJR東海も他人ごとではなく「8月が対前年25%、9月は23日までで対前年38%(いずれも東海道新幹線輸送量)」と回復傾向にあるものの、依然として厳しい状況だ。

phot JR東海の金子慎社長

 先行きの不安は続くが、9月のシルバーウィークは観光地に久々に賑わいが戻り、人々の心理面でもwithコロナで楽しむこと、経済を回すことへと関心が高まっているようにもみえる。観光業界ではコロナ拡大に警戒をしつつも、10月1日から東京を対象に加えて本格稼働したGoToトラベルキャンペーンへ、「今度こそは」と観光需要創出の起爆剤として期待をよせる。

phot 新型コロナで利用客が激減したJR東日本の4−6月期の赤字は1553億円(2021年3月期 第1四半期決算短信の参考資料より)

JR東海が仕掛ける「ずらし旅」

 そんな絶好のタイミングで、JR東海は「ひさびさ旅は新幹線!〜旅は、ずらすと、面白い〜」として「ずらし旅」のキャンペーンを発表した。「ずらし旅とは、ガイドブックやSNSで人気のある定番の旅から、時間や場所、移動手段、方法などをずらすことで、他の人が経験したことのない新たな発見をし、旅の楽しみを大きく広げようというもの」だと、JR東海の金子慎社長は語る。

phot JR東海は「ひさびさ旅は新幹線!〜旅は、ずらすと、面白い〜」として「ずらし旅」のキャンペーンを発表(JR東海のWebサイトより)

 「ずらし旅は、人を避ける旅でもあり、コロナ禍でも安心して楽しめる旅のカタチだ」と金子社長はwithコロナにおけるコンセプトでの重要性も強調する。確かに「ずらす」はシンプルであるものの、三密を避けるという意味では有効な手段だ。旅行者の不安を解消し旅への後押しをするとともに、利用の平準化が進むことは、観光業の将来にとってプラスになる。

 同社では「ずらし旅」のキャンペーン開始に先駆け、9月26日からCMの放映を開始した。

 俳優の本木雅弘さんを起用し、東海道新幹線沿線を中心に、東京、横浜、静岡、伊勢、京都、大阪を舞台に計11か所で撮影をしたという。CMでは「伊勢神宮を早朝に参拝し、神聖な空気を独り占めする特別感」「東京タワーをあえて階段で昇る達成感」などが、臨場感あふれる形で描かれ、旅へと気持ちがかき立てられる。そんな中でも目を引き印象的なのが「自転車」だ。

 CMでは大阪や東京の街をさっそうと自転車(バイクシェア)で観光する姿が登場する。JR東海は、旅先の移動手段の「ずらし」として自転車に注目、ドコモの子会社であるドコモ・バイクシェアとコラボレーションすることを発表した。

phot JR東海がCMに起用した俳優の本木雅弘さん
phot 白色は東海道新幹線の新型車両「N700S」をイメージしたデザイン
phot 記者会見の模様
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