「約10倍近い異常な高値になっている状況です」
100%自然エネルギー由来をうたう新電力のハチドリ電力のWebページでは、電気の卸売取引価格の高騰について記載されている。同社がお知らせを公開した時点の電力卸売価格は、前年比で約10倍の100円/kWhであった。しかし、足元では関東エリアで250円/kWhと、前年比で25倍程度の水準まで膨れ上がっている。
ハチドリ電力からのお知らせ(同社Web)
そんな中、一部の消費者の間で、電気代の急騰を心配する声がSNS上で広がっている。中には「今月の電気代は10万円コース」と、価格上昇の影響を直に受ける消費者の声が目立った。この問題は、いわゆる新電力の「市場連動型契約」に加入した世帯で発生している。
2016年に電力自由化が実施されてから、市場連動型契約プランの人気がじわじわと高まっていた。
一般的な従量型契約プランの場合、電気の調達価格が安い時にも消費者にかかる電気料金が一定となるため、電力会社の利ザヤが増加する。市場連動型プランは、電気の調達価格に応じて価格が増減する点で電気代がお得になりやすいと説明されてきた。
現に、これまでの電力価格は一定の値幅の範囲で推移していたため、安い電気料金を享受できる傾向にあった。その結果、「市場要因による大幅な電気料金の高騰」や「請求が行われるまで電気料金が不明である」という大きなデメリットが目に見えづらくなっていった。それがこの度の電気料金の急激な高騰によって顕在化したかたちとなる。
市場連動型プランを提供している各社は、この度の価格上昇によって「市場連動型プラン」自体への信用失墜、ひいては顧客流出を食い止めるため、特別に割引をしたり、調達に伴う損失を自社でカバーしたりするといった対応に追われている。
市場連動型のプランを提供する新電力のダイレクトパワーでは、料金の割引に直接言及しなかったかわりに、2000円の解約手数料を無料とし、自社から他社へ切り替えるよう顧客に促しているような状態だ。電力契約のような平均の契約年数が長い業態においては、長期的な収益を鑑みれば一時的な大損失については自腹を切ってでもカバーすることが合理的な場合が多い。しかし、その一時的な損失が耐えがたいような場合には、顧客に解約を促すといった経営判断も止むを得ない。
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