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小さなエビ工場の「常識を覆すルール」とは?(写真はイメージ)

(文:麻木 久仁子)

生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方
作者:武藤北斗
出版社:イースト・プレス
発売日:2017-04-16

「出勤日も、出勤・退勤時間も自由」
「欠勤の連絡をしなくてよい」
「嫌いな作業はやらなくてよい。好きな作業だけやればよい」

生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』の著者、武藤北斗さんが経営している水産加工会社のルールである。こんな職場、本当にあるの?

 のっけから驚かされる。理想主義も行き過ぎて、意識高い系の実験的な試みはいいけれども「生き生き働く笑顔」のうらになにか無理が潜んでいるんじゃ・・・。などと恐る恐る読み始めたのだが。

 とにかく徹底している。その日出勤するかしないかは各人の自由なのだが、行くか行かないかを連絡する必要すらないのだという。というか連絡は「禁止」なのだ。なぜなら「好きな日に休んでいいよ」といいながら「だけど連絡はしてください」だの「事前に報告してください」だのと言えばやはり管理されているように感じるだろうし、無言のプレッシャーをかけることもできることになってしまって、ルールが形骸化するからだ。たしかに「うちは福利厚生しっかりしてますよ」といいながら実際の有給消化率は低いなどという話はよく聞く。産休とろうとしたら体良くクビになったなどという話もよくある話だ。

“うちの工場では欠勤の際、電話もメールも一切連絡は禁止ですし、書類の提出もありません。”

“それでも連絡してきてしまう人には厳しく注意します。これは優しさで言っているのではなく、ルールなのです。連絡はしないと決めたなら、してはいけないのです。”