8年目の指揮を執る栗山英樹氏。新著のタイトルを『稚心を去る』とした(写真:高須力)。

 キャンプインまで2週間を切った。プロ野球のシーズンがまた始まる。

 大物選手のFA移籍、プロテクト枠などさまざまな話題があったシーズンオフだったが、中でも北海道日本ハムファイターズの補強は大きな注目を集めた。ドラフト1位の金足農・吉田輝星、台湾野球界のスター・王柏融、最多勝を2度獲得した120勝右腕・金子弌大・・・。加えて中田翔の残留など、昨シーズンの雪辱を果たすべく地盤は固まったといる。

 そして指揮官・栗山英樹は、現役監督最長となる8年目を迎える。7年で2度のパ・リーグ制覇、1度の日本一、5度のクライマックス・シリーズ進出という実績に加え、エンゼルス・大谷翔平や清宮幸太郎ら若い選手の育成など前例のない「監督道」を示し続けてきた。

 そんな指揮官がまとめた一冊、『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』には8年目への覚悟とともに、「監督道」の中で思考された「指揮官の責任」が綴られている。本稿では、『稚心を去る』より、一流の人が持つ資質について紹介する。

「やるべきことがある」は「可能性がある」

 試合後は、現場で感じたことや、そこで考えたことを、必ずノートに書き留めるようにしている。頭の中で、感覚が生々しく渦巻いているうちに、できるだけ早くペンを執る。
 
 ある日、そのノートを開いたとき、ふと気になることがあった。負けた日のメモが、ぐちゃぐちゃになっていたことだ。
 
 決して字がきれいなほうではないが、普段から丁寧に書くようには心掛けている。仕事柄、サインをさせていただくことも多いので、ちゃんと書かなければという意識がいつもどこかにある。
 
 でも、自分のノートは誰かに見せるためのものではない。きっとそう思っているから、無意識のうちに雑になってしまう。それが大きな問題。そこが自分の足りていないところなのかもしれないと思った。まだ、全然ちゃんとしていない。一つひとつケリがついていない。

 ちゃんとした人は、やっぱりそういうところから、ちゃんとしているのだと思う。「一流」と呼ばれる人は言うまでもなく、だ。
 
 そう考えると、ごく日常的なところから、まだやるべきことはたくさんある。ということは、まだまだ可能性はあるということだ。