オリンピックマークと新国立競技場(写真:アフロ)

 安易な妥協は許されない。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の患者数が世界に拡大している。来日した武漢の中国人観光客だけでなく、そのツアー客を乗せた奈良県の男性バス運転手と同行した大阪府の女性バスガイドの日本人2人も感染。さらに武漢から政府の用意したチャーター便によって帰国した複数の日本人も罹患した。確実に日本にも感染の拡大が始まっており、もはや一刻の猶予も許されない状況だ。

 ところが現状で日本政府の新型肺炎に関する危機意識は中国との距離が近い割に他国と比べても低いと感じざるを得ない。このように疑問を覚え、首をかしげている人も決して少なくないはずだ。

武漢からの帰国者に「検査拒否」を許す甘さ

 武漢からチャーター便で帰国した自国民への対応を他の国と見比べてみると、それが如実に表れる。日本政府は武漢からの帰国者全員にチャーター便の機内で検疫を行い、帰国後も異常がなかった搭乗者を含め医療機関で再度検査をすることにしている。異常の確認、あるいは症状が現れた人はそのまま入院となるが、物議を醸しているのは体調に問題がなければ自宅もしくは政府の用意したホテルに滞在することが認められている点だ。

 新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間とされている。いくらウイルス感染が陰性だと確認されるまで外出しないように要請しているとはいえ、そのような「お願い」程度で2次感染は確実に防げるのだろうか。あらためて疑問は拭えない。

 しかも最初のチャーター便で武漢から帰国した2人の日本人は検査を拒否し、自宅へ帰ってしまっていた。30日になって2人は「検査をしたい」と申し出たとのことだが、後の祭りである。現在までのところ発熱やせきなどの症状はないとはいえ、検査をせず帰宅を許してしまったこと自体が問題なのだ。