新型コロナウイルスの感染拡大でも東京一極集中の脆さが浮き彫りになりつつある

(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 いま世界中が新型コロナウイルスにより、保健衛生、医療、そして経済の面でピンチに陥っています。もちろん日本も例外ではありません。われわれが直面しているのは大変な試練ですが、これから必要になるのは、そのピンチをチャンスに変えていくという発想です。

 このピンチをチャンスに変える発想——。そんなものがどこにあるのか。

 危機管理(リスク分散)の面からも、景気浮揚の面からも、そして地方創生のためにも、私は「首都機能移転」がその絶好の材料ではないかと考えています。

 そして、任期満了を来年に控える安倍政権にとっても、これは大きなチャンスになると思います。これまでは安倍政権のレガシーとなりうる最重要課題は「憲法改正」とされてきました。私は改憲論者ですが、しかし、現状を見るに、憲法改正に向けて機が熟しているようには見えません。実現可能性はかなり低いといえます。それならむしろ、首都機能移転を安倍政権のレガシーとすべきだと思うのです。

 では、なぜ首都機能移転なのか。その理由を、順を追って説明してみたいと思います。

「首都封鎖」で国の中枢機能を麻痺させないために

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大に対し、日本政府は中国や韓国からの入国を制限したり、全国の学校に一斉休校を要請したりという、過去に例がないような措置を打ち出しました。

 これに対し「遅きに失した」「もっと早く水際対策をやっていたらここまで感染は広がらなかった」などという批判が噴出しました。

 しかし時の政権としては、感染リスクをできるだけ小さくしなければならないのと同時に、健全な経済活動が継続されるように配慮もしないといけません。政権としてはギリギリのバランスを取ったのだと思います。

 さはさりながら、感染者は現在もじわじわと増えています。特に都市部での感染が広がっていて、もし今後、東京で大流行するようなことになったら、中央省庁や大企業の本社機能が集中している場所だけに、日本全体が機能不全に陥ってしまうのではないか、という懸念が残ります。世界の主要都市で次々に実施されているロックダウン(都市封鎖)が東京でも必要になる可能性はゼロではありません。

 中国で新型コロナウイルスの震源地となった武漢はやはり大都市ではありますが、首都ではありません。そのため「ウイルスを武漢に封じ込めれば」、という対策を取ることが可能でした。しかし国や企業の本社が集中する首都などでパンデミックが起きて、万が一「首都封鎖」などとなれば、そのダメージは計り知れなくなります。現に欧米諸国では大変な事態になっています。それは絶対に避けなければなりません。