小池百合子東京都知事(写真:ロイター/アフロ)

(黒木 亮:作家)

 小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑が取りざたされている。色々な情報があるので、このへんで一度整理することが必要だと考え、本稿を執筆した。

 筆者は5回の現地取材を含む2年以上にわたる調査を踏まえ、「小池氏がカイロ大学を卒業した事実はない」という結論に至った。その理由を以下に列挙する。

(前編はこちら)https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60762

7、カイロ大学の“お友達人脈”

 小池氏が学歴に関して言うのは、「卒業証書も卒業証明書もある。カイロ大学も卒業を認めている」だけである。しかし、卒業証書類のほうは、提出を頑なに拒んでいるのだから、お話にならない。では「カイロ大学も認めている」のほうはどうかと言うと、これもまた信用できない話なのである。

 小池氏の学歴詐称疑惑に関して、カイロ大学に照会すればすぐに決着がつくだろうという意見をネット上で時々見る。しかしそれは、腐敗した発展途上国の実態を知らない人の発想だ。エジプトは、「腐敗認識指数」で世界180カ国中105位(ランキングが低いほど腐敗度が高い)という汚職や不正が横行する国だ。大学の卒業証書など、カネとコネでなんとでもなる。

 エジプトでは、有力政治家が「この人間を卒業したことにしろ」と言えば、学長は職員に命じて卒業証明書や卒業証書を作らせる。職員は入学記録や初年度の成績などを参考に成績表も偽造し、大学内の記録も含めて形式的に完璧にする。こうしたことが行われているのは“社会常識”で、5回の現地取材で会ったエジプト人で否定する人は1人もいなかった。小池氏が卒業したと称しているサダト大統領時代(1970~81年)には特にひどかったという。

 偽造卒業証書を売る業者もおり、2017年には、エジプト人女性ジャーナリスト、ダリヤ・シェブル氏が複数の業者に接触し、実態を明らかにしている。ある業者は、「大学内部の記録まで捏造して卒業証書を発行する場合は40日、そうでない場合は20日で納品できる」と言い、別の業者は「自分にはカイロ大学、アイン・シャムス大学、ファイユーム大学、ザガジグ大学内に協力者がいる」と豪語したという。アイン・シャムス大学医学部の偽卒業証書で医師として働いている2人の人物の存在も突き止めている。カイロ大学のナッサール学長自身、2015年にエジプトの民放CBCに出演し、大学の教授や職員が関与して偽卒業証書が発行されていることを認めている。