菅内閣が発足し、官邸で記者会見に臨む菅義偉首相(中央)と麻生太郎副総理兼財務相(右)と茂木敏充外相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 菅内閣が発足した。自民党内から早期解散を求める声も上がっており、菅義偉首相は早々に衆院解散に踏み切るのではないかとの見方が広がっている。

 10月下旬に召集予定の臨時国会で、所信表明演説と与野党の代表質問のみを行い、内閣支持率が高い間に早期解散を断行する――というシナリオだ。想定される投開票日は11月15日、22日、29日となり、野党も解散前提の臨戦態勢に入りつつある。

 本当に菅首相は解散を決断するのだろうか。筆者は疑わしいと考えており、場合によっては来年10月の任期満了まで解散しない可能性もある。

玄人好みの怪文書

 自民党総裁選の構図が固まった9月3日ごろ、「想定日程(解散あり)」と題されていた1枚の文書が永田町で話題になった。俗にいう“怪文書”である。新政権2回目の臨時国会が9月25日に召集され、9月29日衆院解散、10月13日衆院選公示、10月25日投開票というスケジュールが記されていた。現在に至る早期解散説に火をつけたペーパーであることは間違いない。「取扱注意」の印影など玄人好みの体裁だったことも影響し、メディア関係者の注目を集めた。怪文書かどうかも含めた真偽についてはわからない。

 改めて冷静に検討してみたい。

 本当に9月29日解散、10月25日投開票は可能だったのか――。

 まず、衆院解散は国会が開会している間に限られる。そこで9月25日に臨時国会を召集する案が浮上したわけだが、そのためには、少なくとも2週間前には与野党間で合意しておく必要がある。国会の召集はそもそも、憲法第4条に定められた天皇の国事行為であり、天皇陛下の日程を考慮しなければならない。時の首相が、政治的思惑で臨時国会の日程を自由に差配できるほど議院内閣制は甘くない。