被災者に温かい食事を 群馬・太田工業高3年生 被災地で使用するキッチンカー製作

大型キッチンカーに改造するトラックを背後に写真に収まる太田工業高電子機械科3年生とプロジェクトの参加者

 群馬県立太田工業高電子機械科の3年生22人が中古のトラックを改造し、災害被災地で使用する大型キッチンカーを製作するプロジェクトに取り組んでいる。トラックは同科OBの星野茂さん(35)が購入したもので、完成後は星野さんが役員を務める新田製パン(太田市)が運用し、能登半島地震の被災地で炊き出しをすることなども検討する。完成は12月の予定。

 生徒が製作するのは、災害被災地で数日間続けて運用ができる大型のキッチンカー。パンや温かい食事を1時間当たり700食まで調理可能な厨房(ちゅうぼう)設備を備え、食材や支援物資を運搬する大容量の積載エリアも確保する。電力は備え付けの大型発電機で賄い、電子レンジやウオーターサーバーなどを動かして被災者に自由に使ってもらえる仕様を予定している。

 改造する車両は、放送事業者が中継車に使用していた長さ10メートル、幅2.5メートルのトラックで、星野さんが数百万円で購入した。搭載する機材の購入費用は星野さんと新田製パンで負担し合う。被災地での運用は同社が担い、保守管理は新たに立ち上げるNPO法人が担当する。

 通常時は移動式の子ども食堂として活用し、防災の啓発活動にも役立てる。製作は同校の課題研究授業の一環として行い、生徒は外装塗装のデザインから設備の取り付けまでを分担して進める。

 当初、キッチンカー製作は星野さんが社内で発案。東日本大震災で被災した宮城県亘理(わたり)町に自社製品を届けたことがあり、焼いて時間がたったパンではなく、温かい食事を提供したいと考えたのがきっかけだ。昨年11月、同校文化祭で構想について講演したところ、生徒や教諭が参加に意欲を示した。

 地元有志もプロジェクトを後押しする。同校で出前授業を行っている群馬自動車大学校(伊勢崎市)は、教員を派遣して板金塗装を指導する。太田工高OBの中村素之さん(65)が社長を務める輸入工具販売のN―KIT(太田市)は、ゴーグルや手袋など必要物品を無償で提供。根立淳代表が星野さんの知人だった縁で協力を申し出た機械開発などのクラインズ(同市)は、レーザーさび取り機を無料で貸し出す。

 作業初日となった4月19日は車体外装のさび取りを実施。生徒たちは、同校の卒業生でもある大学校教員の長沢賢一さん(43)、氏原聖二さん(31)に手ほどきを受けながら、作業に打ち込んだ。外装班の班長、井上聖斗さん(17)は「間接的な形ではあるが、被災した方に貢献ができればうれしい」と笑顔で話した。

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