戦争体験談、DVDと文集に 開成町と遺族会

 終戦から71年が過ぎ、太平洋戦争で辛苦をなめた町民の高齢化が一層進む中、開成町と町戦没者遺族会が、戦争体験談を収めたDVDと文集を初めて制作・発刊した。戦争の非情さ、悲惨さを、映像や文字でも残し、平和の尊さを次世代に継承するために制作。25日に行われた町主催の戦没者慰霊祭後に、参列者約100人に初めてお披露目された。

 召集令状を受けて入隊した永田武さん(96)は空襲の犠牲者を見て、いずれ自分もこうなると思った。「国のためだと言われるが、実際はそんな気持ちにはなれない」。ミャンマーで終戦を迎えた。「戦争なんて絶対やっちゃいけないもの。人間、惨めになるだけ」 町が制作したDVDに収録されたのは、町内に住む70歳から99歳までの男女7人の証言だ。昨年11月から今年2月にかけ、自宅や「あしがり郷 瀬戸屋敷」(同町金井島)で一人20〜30分ずつ話を聞き、30分に編集した。

 捕虜としてシベリアで抑留された終戦後の日々、白木の箱を迎えるために駅前の広場に整列した終戦間際、子どもが産まれた10日目に夫が入隊し、食べ物も手に入らない毎日…。DVDには当時を振り返る会員らの言葉が、話す表情とともに収められている。

 文集「戦後71年を経て 〜太平洋戦争を語り継ぐ〜」は遺族会が編集。会員らに寄稿を呼び掛け、寄せ書きがびっしり書かれた国旗や遺品の写真と合わせ、9人の戦争の記憶を全43ページにまとめた。

 遺族会の遠藤成雄会長(77)は満州に出征した父親=当時(35)=の顔を知らない。慰霊祭で「どんなに歳月が流れようと、戦争で肉親を失った悲しみを忘れることはない」と語り、上映後にはこう期待を込めた。「次の世代、若い人にDVDや文集を通じ、末永く(戦争体験を)伝えていきたい」

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