残業ゼロでやる気アップ 川崎の町工場の挑戦

 川崎市川崎区大川町の金属加工会社「日の出製作所」(岩武志社長)が働き方改革に取り組み、これまで月平均40時間あった残業時間をほぼゼロにした。ロボット競技大会を開催するなどユニークな取り組みも実践している同社。労働時間の短縮にとどまらず、若手のモチベーションを高める職場づくりも進め、生産性の向上につなげている。

 自動車や半導体などに使われる高精度精密機械部品の加工などを手掛け、従業員は26人。岩社長によると、以前は納期前に作業が集中し、土日出勤も少なくなかったという。そこで、昨年12月から、「台車に載せてある分だけ」などとその日の作業量を明確化し、計画的に加工作業を行うようにした。その結果、残業時間は大幅に減り、「工程によっては作業が少ない社員も出る。彼らには空いた時間を有効活用し、技術を磨くことなどに充ててもらっている」(岩社長)と好循環が生まれているという。

 若手の技能やモチベーションの向上も主眼に置いている。同社は次代を担う若手にものづくりの魅力や面白さを伝えようと毎夏、ロボット競技会「日の出杯」を開催。社員は業務の一環としてロボット製作に取り組む。新入社員は研修でミニロボットのストラップ作りをするのが伝統で、同期で相談し合って色や形などを決め、川崎市内の名産品などが集まる「Buyかわさきフェスティバル」で販売。女性が開発に貢献した商品の中から優れたものを県が認定する「神奈川なでしこブランド」にもなっている。

 高校卒業後に入社する若手が多いが、こうした取り組みを通して高度な技能を習得。品質保証課の獨古(どっこ)優美課長(24)も腕を磨いた一人で、業務の傍ら都内の専門学校で月2回、旋盤などを教えるまでに成長した。

 このほか、臨海部の工業団地に立地していることを生かし、テレビ番組などのロケーション撮影に工場を活用してもらう営業活動も展開。「やじ馬が来ない上、従業員をエキストラで使えます」などとアピール。月1~2件の実績を上げている。園又豊紀営業課長(36)は「テレビ局からの『機械を動かし、火花も出して』との注文にも応じられる」と話す。

 岩社長は「楽しく仕事ができ、社員にもやりがいを感じてもらえればと思っている。おかげで求人難ということはありません」。人手不足が深刻化する中、今春も3人の仲間を迎え入れた。

働き方改革など、生産性向上を進める日の出製作所。左端が岩社長=川崎市川崎区

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