【新型コロナ】「東京と一体」一転、足並み乱れ 休業要請巡る対応 神奈川知事は不快感

西村経済再生担当相と7都府県の知事とのテレビ会議に臨む黒岩知事(左下)=8日午前、県庁

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言を巡り、感染拡大防止対策に取り組む神奈川県と東京都との足並みの乱れが8日、鮮明になった。都は店舗などに休業要請する意向を示す一方、神奈川は見合わせる方針を表明。東京と神奈川は一体と主張してきた黒岩祐治知事は、都の姿勢に「歩調を合わせるのは不可能に近い」と不快感をあらわにした。感染終息に向けた宣言の実効性への影響を懸念する声も上がっている。

 緊急事態宣言の対象地域の知事は、特措法に基づいて施設の使用停止やイベントの開催制限を求めることができる。感染拡大につながる人と人との接触機会を低減させるためで、小池百合子都知事は対象施設を10日に発表すると表明。11日の休業要請に向け、国と協議を続けている。

 これに対し、黒岩知事は「補償とセットでなければ事業者の理解をいただけない」と強調。当面は業種を特定して休業を要請する考えはないとしている。8日の西村康稔経済再生担当相と宣言対象地域7都府県知事とのテレビ会議では、小池知事に対応をそろえるよう呼び掛けたが、議論は平行線で終わったという。

 緊急事態宣言の対象地域に選ばれた理由で、東京と「生活圏はほぼ同じ」(尾身茂・諮問委員会会長)と指摘された神奈川。隣接地域の県民を中心に生活維持に必要な外出でも都県をまたぐケースは少なくない。

 県はこれまで、週末の外出自粛を求める緊急メッセージを発信するなど、感染者が急増した都と歩調を合わせてきた。ある県幹部は都と対応が分かれる現状に、「同じ業種なのに開業状況が異なれば、東京から神奈川に人が移動して密集・密接につながる恐れが高まる」と懸念を示す。

 7都府県のうち、現時点で休業要請に踏み切る考えを明言しているのは東京都のみで、神奈川を含む6府県は感染状況などを見極める意向を示している。

 背景に浮かび上がるのは、感染者数に加えて財政力の差だ。都は要請に協力した事業者に独自の「協力金」を支払う仕組みを検討しているが、黒岩知事は「全国唯一の(交付税不交付団体の)東京都だからこそできる発想で、46道府県にはできない話だ」と指摘。政府に補償の仕組みをつくるよう訴え、全国知事会も国に損失補償を強く求める緊急提言をまとめた。

 ただ、政府は休業要請の対象となっていない分野でも影響があることから個別補償は否定。収入が減った事業者に給付金を出すとの姿勢を崩していない。

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