全国中学大会で表彰台に並んだ1位三原(中央)と2位坂本(左)=2014年2月(提供写真)

 12月9日、フランス・マルセイユ。ジュニアグランプリ(GP)ファイナルで表彰台に上がった坂本花織に、日本から「LINE(ライン)」でメッセージが届いた。

 「おめでとう」。送り主は同じ神戸のリンクで練習する1歳上の三原舞依。「私は小さいころから『かおちゃん』の一番のファン」。坂本の快挙を三原は自分のことのように喜んだ。

 2人の出会いは9年前にさかのぼる。

 小学2年の時、三原はテレビで見た浅田真央に憧れた。「スケートをやってみたい」。両親にねだり、初めて神戸・ポートアイランドのリンクを訪れた時、中央付近で滑る小さな女の子に目を奪われた。

 「私は立つのも大変なのに、びゅんびゅん飛ばしていてすごいな」。それが当時小学1年の坂本だった。

 坂本がスケートを始めたのは4歳のころ。2003年のNHK連続テレビ小説「てるてる家族」で、ヒロインの姉がフィギュアスケーターだった。「ほとんど覚えてないんですけど」と坂本ははにかむ。

 中野園子コーチとはその時からの師弟関係だ。「『リンクでは年少も大学生も同じだから』と言われて鍛えられた」と坂本。北海道での夏合宿も小学2年から1人部屋で生活。「夜は毎日泣いていた」。坂本はそう振り返る。早くから自立を求められ、海外遠征を重ねてもぶれない精神力を養った。

 中学3年まで続けた水泳でも、選手コースに誘われるほど有望視されていた。「昔から背中(の筋力)が強かった」と中野コーチ。多回転のジャンプを跳ぶために必要という体の軸を支える力に優れていた。ジャンプの高さと幅は、今でも坂本の最大の持ち味だ。

 1学年下のホープの存在は三原を刺激した。元々、負けん気の強さは自他ともに認めるところ。ヒップホップダンスを踊っていた時期も、センターポジションを取りたくて全力だった。

 14年の全国中学校大会では2年生の三原が優勝。1年生の坂本はわずか0・05差の2位だった。翌年は坂本が2位で3位だった三原を上回った。

 高校生になっても競い合いは続く。今年11月、三原がGPシリーズ中国杯のショートプログラム(SP)で3位に入った。ニュースを見た坂本は「自分も負けてられないと思った」。同時期に開かれた全日本ジュニア選手権でSP首位、フリーでも2位となり、昨季の世界ジュニア女王の本田真凛らを抑えて初優勝を飾った。

 2人は毎日同じリンクで滑り、氷上を離れれば連れ立ってショッピングにも出掛ける。三原は「たまに1人で試合に行くと、『もう一人は?』と言われるんです」とほほ笑む。

 2人を指導する中野コーチは言う。「片方が上だったら、また片方が頑張って上。2人いたからここまで来られたんだと思う」。17歳の三原、16歳の坂本。抜きつ抜かれつ、銀盤に成長曲線を描く。

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 22日に大阪で開幕するフィギュアスケートの全日本選手権に、神戸市出身の三原舞依と坂本花織が出場する。今季、三原は10月のシニアGPシリーズで3位に入り、坂本は今月上旬のジュニアGPファイナルで3位とそろって国際舞台で飛躍した。2018年の韓国・平昌冬季五輪を目指し、神戸からはばたく2人の新星に迫る。(山本哲志)

【みはら・まい】1999年8月22日生まれ。神戸市須磨区出身。東須磨小2年で競技を始め、飛松中2年時に全国中学校大会を制した。シニア1年目の今季、GP第1戦スケートアメリカで3位。中国杯4位。全日本選手権の最高成績は2014年の9位。県芦屋高2年。

【さかもと・かおり】2000年4月9日生まれ。神戸市灘区出身。4歳で競技を始め、12年全日本ノービス選手権優勝。渚中2年で世界ジュニア選手権6位。今季のジュニアGP日本大会で初優勝し、全日本ジュニア選手権も制した。全日本選手権は14年の6位が最高。神戸野田高1年。