Inc.:リーダーは、部下の真のモチベーションを理解する前に、人が深層心理で仕事に何を求めているのか知る必要があります。それを理解できていると、達成すべき仕事を部下にどう依頼するかが違ってくるからです。部下がチームへの帰属意識、安心感、優位性、自信、有用性を感じられるようなやり方で仕事を与えなければ、幸福感を得られず最後は辞めてしまうかもしれません。

それでは、人は深層心理で仕事に何を求めているのでしょうか。ここでは、5つご紹介したいと思います。

1. 帰属意識を感じたい

私たちは、何かを達成して上司やチームメイトから称賛されると、自分は「正しい」道を歩んでいる、有能で他人から認められている価値のある人間だと確信します。そして、チームの一員であると感じるのです。人は自然と、この帰属意識を求めています。

2. 安心感がほしい

進化論的観点からいうと、何でも多ければ多いほど、生存の可能性が高くなります。たとえば、たくさんの食物を獲得できると身体が肥大して越冬できます。人類は生まれつき、より多くを求めるようにプログラムされているのです。

一方仕事の場合、業務を達成しても体に良いわけではありません。Mayo Clinicの研究によると、ストレスが多い仕事は健康を損なうリスクがあることがわかっています。しかし精神的には、仕事の達成を重ねると頼れるだけの信頼を得たと感じたり、十分稼ぐことで安心できたりします。恐らく一番良い例は、一定の年数在職すると失業の心配がなくなる身分保障権でしょう。

3. 他人より優れていると感じたい

普段は礼儀上、口に出すのをはばかりますが、仕事の目標を達成すると誰かに頭の中でこんなふうに言いたくなります。「俺はやったぜ。君はできなかったね。俺のほうが立派で優秀なんだ」そのため、仕事の目標を達成すると、少なくともその瞬間は、「自分は支配的な立場だ」といえるので、他人と自分を比較して優位性を感じることができます。

4. アイデンティティーを確認したい

仕事の目標を達成すると、明らかに自尊心が刺激されます。何かを達成するたびに、「自分はやれる」と自分に語りかけ、自分は有能な人間だと思えます。この達成感は、アイデンティティーの確認につながることがよくあります。たとえば、仕事を達成するのに必要な教育や知識の獲得と応用の経験も、自分のアイデンティティーの一部です。よって、仕事で結果を出すことはアイデンティティーの確認になると同時に、アイデンティティーの形成にもなります。

5. 人の役に立っていると思いたい

自分は何のために存在しているのか」これは、人間が自分に投げかける最も哲学的な疑問の1つです。私たちは常に「意味」を探しており、その意味を「自分は役に立っている」と感じることに見出しています。問題は、ときとして間違った見方をしてしまうことです。給料や時給で自分の存在価値を測ることもあります。景気が良いと仕事が増えるので、どんどん時間が足りなくなり、自分の時間はますます希少価値がある気がしてきます。

その結果、仕事を優先して休息やプライベートなことをしなくなることも。こうなると、人の役に立っていると感じられる機会は、仕事からしか得られなくなります。たとえば、近所の子供にボランティアでスペイン語を教える時間はなくても、仕事で投資家にうまくプレゼンする時間ならとることができるわけです。そして、自分は役に立っていると思えるのです。

良きリーダーになるためには、このような人の深層心理を理解しておく必要があるといえるでしょう。そして、部下が5つの深層心理の中で、どれを重要視しているのか知っておく必要があります。


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Image: Lucky Business/Shutterstock.com

Source: Inc., Mayo Clinic, Quartz, The Economist