それにしても、何がよくてキャッシュレス化なのだろうか。そう感じている日本人が多いようです。

というのも、経済産業省「キャッシュレスの現状と今後の取組」(2018年5月)によると、世界各国のキャッシュレス決済比率の比較では、進展している国が40%〜60%であるのに対して、日本は約20%。日本は、まだまだ現金による支払いがメインなのです。

しかし、閣議決定された「未来投資戦略2017」によると、2027年6月までにキャッシュレス化を倍増して、決済比率40%程度を目指すとのこと。

では、なぜ日本人はキャッシュレス決済をあまり利用しないのか。改めて、キャッシュレス決済のメリットとデメリットについて考えてみました。

不安に感じる、キャッシュレス決済の心理的要素

クレジットカードに対する不安
Image: Chaliya/shutterstock

キャッシュレス決済には、クレジットカード、電子マネー、デビットカード、プリペイドカード、QRコードなどがあります。

「キャッシュレス決済」という言葉がなかったころから取材をしている筆者が感じるのは、日本は世界的に見ても現金を尊重する国であること。

さらに、日本人は借金が嫌いであること。特に、クレジットカードに代表される後払い、つけに対する警戒心が非常に強いことです。

これを裏付けるかのように、博報堂生活総合研究所の「お金に関する生活者意識調査」(2017年12月)では、キャッシュレス社会に反対する理由として次のことが挙げられています。

1位:浪費しそうだから

2位:お金の感覚が麻痺しそうだから

3位:お金のありがたみがなくなりそうだから

4位:現金は必要だから

5位:犯罪が多発しそうだから

端的に言えば、「現金の方が安全・安心」ということなのでしょう。

しかし、政府が積極的にキャッシュレスを推進し、増税に合わせて実施予定のキャッシュレス決済によるポイント還元、「〇〇ペイ」の大キャンペーン、コンビニやスーパーで広がろうとしているセルフレジなど、社会がキャッシュレス決済に面舵を切るようになると、キャッシュレスで決済するしかない、現金で支払う場所が減っていくのは必然です。

では、キャッシュレス決済に対する障壁を取り除いて、自らをキャッシュレス化していくためにはどうすればよいか、そのメリットについて考えてみましょう。

現金感覚で使える、デビットカードからキャッシュレスをはじめる

お財布の代わりに使えるデビットカード
Image: Macrovector/shutterstock

キャッシュレスのメリットには、物理的な利便性と決済サービス会社による特典があります。

・現金を持たなくてよいから安全

・ATMに並んで口座から現金を下ろす手間が不要

・ネット通販で即時決済が可能。振込や代引きなどの手間がなくなる

・利用履歴がデータ化され、管理がしやすい

・決済ごとに貯まるポイント

・利用実績やキャンペーンによる特典

では、キャッシュレス決済に不安を感じる方のハードルを下げつつ、メリットを享受するにはどうすればよいか。

それは、借金と言う概念を低下させることが必要でしょう。一番良いのは、後払いになるクレジットカードを使わずに、金融機関の口座預金額の範囲内で即時決済される、デビットカードを利用することです。

口座から指定金額をチャージする、プリペイド型の電子マネーやQRコード決済でも同じことが言えますが、これらに変えて、スマホと連携すれば、残高が見える化されるので不安なく使うことができます。

まずは、お財布と同じように利用できる方法で、キャッシュレス決済をはじめてはいかがでしょうか。

ただし、プリペイド型の場合は、オートチャージ設定にしておくと、残高が1000円を下まわると自動的に3000円が口座から引き出されてチャージされるなどの仕組みがあるので、お金を支払っている感覚が薄まり、浪費につながる可能性もあるので、気をつけたいですね。

キャッシュレス決済のリスクに備えるには

キャッシュレス決済のリスクを回避
Image: Artem Efimov/shutterstock

キャッシュレス決済のリスクとして、セキュリティを挙げる声も少なくありません。

ただ、仮に決済用のカードを紛失・盗難したとしても、現金のようにすぐに使われてしまうリスクや損害を、付帯する盗難保険がカバーしてくれるので、自己負担する必要は軽減されます。

また、ネット通販で高額決済する場合は、本人確認のためのパスワードを追加で入力したり、スマホで本人確認を行う2段階認証が設定されているので、カード情報が漏洩したとしてもリスクは軽減されます。

しかし、ここで気になるのが、自然災害などにより、キャッシュレス決済ができなくなることです。

昨年、発生した北海道胆振東部地震では、道内全域が停電となり、コンビニで電子マネーやクレジットカードが使えなくなってキャッシュレス社会の弱みを露呈することになりました。

こうした致命的な欠点を補うためにはどうするかと言えば、やはり避難袋の中に非常時用の現金をいくらか入れておくことでしょう。

1000円とか2000円ではすぐに足りなくなるので、家族が1週間程度過ごせる生活費を目安に、2万円〜3万円は入れておくと安心かもしれません。

ご紹介したように、現金を手元に置いておくと安心感があるかもしれませんが、社会がキャッシュレス化へと進むなかで、いかにリスクを抑えて利用するかは、考えておくべきでしょう。

前述のデビットカードについては、利用している銀行などの金融機関が発行していれば、キャッシュカードにデビットカードの機能を1枚のカードにまとめられることができます。

まずは、金融機関の情報を確認してみましょう。

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岩田昭男(いわた・あきお)/消費生活ジャーナリスト

岩田昭男

早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。公式サイト


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Source: 経済産業省:キャッシュレスの現状と今後の取組 , 未来投資戦略2017 , 博報堂生活総合研究所:お金に関する生活者意識調査