健康やダイエットを考えるうえで、いつ運動して食事するのが良いかは悩ましいところ。

運動の成果を見る指標の1つに、「脂肪やブドウ糖をうまく活用できる体がつくれているか」がありますが、これはインスリンの感受性(※)などに表れます。

先日、バース大学とバーミンガム大学が、朝食前後での運動の効果を調査した研究結果を発表しました。

論文では、食事と運動のタイミングを調整することで、脂肪の燃焼効率を高めて血糖値をコントロールできる可能性が示されています。

ところが、今回の研究結果はもしかすると多くの人が意外に思われるかもしれません。

※インスリンはすい臓から分泌されるホルモン。インスリン感受性が低下する(インスリンの作用が十分に発揮できない状態になる)と、血液中のブドウ糖が増えて糖尿病などを引き起こすことも。

朝食前の運動は脂肪燃焼を2倍にするが、体重変化に差はない

研究では3つのグループ(朝食前に運動・朝食後に運動・運動しない)について調査。

6週間にわたって脂肪燃焼量インスリンレベル筋肉内のタンパク質量などを測っています。

なお被験者は、肥満に分類される男性(BMIの中央値30.9)30人。

運動は週3回行い、1回の運動時間を徐々に増やしていきます(1週目:30分、2週目:40分、3週目以降:50分)。

また、運動メニューについては低運動強度に設定されています(前半3週間:50%最大パワー、後半3週間:55%最大パワー)。

この調査の結果、食事と運動のタイミングで効果が変わる可能性があることがわかりました。

【調査結果】

  • 脂肪燃焼量は、朝食前の運動が朝食後の運動の2倍だった
  • 体重の減少に、差は見られなかった
  • 朝食前に運動したグループでは、インスリンの感受性が高まった
  • 朝食前に運動したグループでは、グルコースを筋肉へ運ぶタンパク質(GLUT4)が大幅に増加した

このように、短期間では体重減少に差はなかったものの、長い目で見れば朝食前の運動が健康にとってプラスに作用しそうな結果となりました。

「断食+軽めの運動」が効果的?

体重計の上にのっている男性の足元
Image: New Africa/Shutterstock.com

一般的には、運動はインスリンの感受性を高め、血糖値のコントロールに役立つと言われています。

ところが、この研究では朝食後に運動したグループと運動しなかったグループとの間に、インスリンの感受性の差はありませんでした。

その違いは?

論文では、その理由は一晩を経た断食状態にある可能性があるとのこと(断食状態は、脂肪燃焼が促進されやすくなるなど、代謝に変化があることがわかっています)。

また、論文中にもあるように、食事前後のタイミングに行った高強度インターバルトレーニング(HIIT)でも、インスリンの感受性に差がなかったとの研究結果もあります。

運動のタイミングとともに運動強度も効果に関係してくるようです。

病気予防のためにも「朝食前の軽めの運動」を

主に太り過ぎや加齢などが原因により細胞にブドウ糖を取り込むインスリンの仕組みがうまく働かなくなると、2型糖尿病や心血管疾患を引き起こしやすくなってしまいます。

そんなリスクを減らすためにも「朝食前の軽めの運動」はメリットがありそうです。

ただ、この研究は肥満に分類される男性30人のみを対象としたものなので、その結果がやせ型の男性や女性にそのまま当てはまるとは限りません。

研究は対象を拡大して続けられるとのことなので、続報に期待したいところです。

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Image: eakkaluktemwanich, New Africa/Shutterstock.com

Source: The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, Obesity

Reference: University of BATH