アメリカスポーツ医学会が毎年発表するフィットネス関連のトレンド(英語)を見ると、欧米地域については「HIIT」という言葉が、トップ3の常連になっています。

HIITとはHigh-Intensity Interval Trainingの略称で、日本では「高強度インターバルトレーニング」と訳されています。

これは、高強度かつ短時間の運動をごく短い休憩をはさみながら繰り返すというトレーニング法。かなり短い時間(ほんの数分!)の鍛錬で大きな効果を得られることが、人気を得ている理由です。

高強度トレーニングの元祖的存在タバタトレーニング

ひとくちにHIITと言っても、数々のバリエーションがあるのですが、その中でも一番人気なのが、「TABATA Training(タバタトレーニング)」です。

これは、現在は立命館大学スポーツ健康科学部の田畑 泉教授が、1996年に発表した高強度・短時間のトレーニング法についての論文を土台にしたメソッド。

今では「欧米のアスリートの間では、知らない人はいない」という、HIITの元祖的・代表的な存在です。日本国内でも、最近になって知られるようになってきています。

ウェブでは1300万件もヒットし、動画サイトではあまたのやり方が閲覧できるメソッドですが、考案者の田畑教授は「どうも誤解をされたまま広がっている感が否めません」と述べています。

そうした現状をかんがみて、田畑教授が著したのがムック『噂のタバタトレーニング』(扶桑社)です。

本書では、田畑教授の理論に基づき、効率的かつ最大限の運動効果を得られるよう編み出された、数々のトレーニング法が写真(およびQRコードでスマホから閲覧できる動画)付きで、細かくガイドされています。

究極の有酸素運動にして無酸素運動

本書にどのようなトレーニング法があるのか紹介する前に、もう少し理論的な話を続けましょう。

持久力を増やすトレーニングの場合、通常のトレーニングだと、最大酸素摂取量の50~70%で20分以上の運動をすればいいとされます。

一方、タバタトレーニングの場合、最大酸素摂取量の170%と、高強度なのが第一の特徴。この強度だと、休憩なしで持続できるのはせいぜい50秒なので、短時間の休憩をはさみます。

具体的には、20秒の運動→10秒の休憩の繰り返し繰り返しの回数(セット)は最低6~8セット。本書では、区切りのいい8セットが推奨されていますが、それでもトータルで4分しかかかりません。

これだけ強度が高いと、短時間でも運動効果はあるのです。

(ただし、前後に行うウォーミングアップとクーリングダウンは念入りにする必要があり、それぞれ10分かけるので、これらも含めれば30分近い時間を要します)

この強度・セット数が、有酸素運動と無酸素運動の両方を効率的に実施することにつながります。

タバタトレーニングが「究極の有酸素性トレーニングであり、同時に究極の無酸素性トレーニングである」と呼ばれる由縁です。

日本でも、大学駅伝チームからバドミントン女子のトップ選手が練習に採用するなどスポーツ界で広まっているのも、当然と言えそうです。

タバタトレーニングの具体例:ジャンピングジャック&シザース(高強度)

本書に掲載されているトレーニングは、全部で10種。

一部は中強度・高強度のバリエーションがあり、ウォーミングアップとクーリングダウンが加わりますが、基本的にこの10種のなかから何種かを選んで行います。

以下は、その1つであるジャンピングジャック&シザースです。

タバタトレーニング
ジャンピングジャック&シザースのやり方
Image: 『噂のタバタトレーニング』
  1. 足を閉じた状態からジャンプして両足を広げます。
  2. 再びジャンプして最初の姿勢に戻る動作を4回。
  3. 同じようにジャンプして今度は両足を前後に。
  4. 前の膝を曲げながら両足を交互に前後に出す動作を4回。一連の流れを20秒繰り返します。

一見、複雑に思えるかもしれませんが、ジャンピングジャックという運動を2回、シザースという運動を2回繰り返しているだけで、覚えるのは簡単。ただ、把握しておくべきコツはあります。

例えば、ジャンピングジャックでジャンプする際は、膝とつま先の方向をしっかりそろえます。こうした注意点についても、本書に明記されています。

タバタトレーニングの具体例:スケーターズランジ

続いて、スケーターズランジ。こちらは、主に大殿筋と大腿四頭筋に刺激を与える運動です。

タバタトレーニング
スケーターズランジのやり方
Image: 『噂のタバタトレーニング』
  1. まず、片足立ちしながら、逆の手で指先を床に軽くタッチします。
  2. 立っている足で踏み切って逆側へジャンプします。
  3. 逆の足で着地しながらさっきとは逆の手の指先を床にタッチ。一連の流れを20秒繰り返します。

ちなみに、本書に掲載のトレーニングはすべて、自重(自分の体重)のみを負荷とし、器具は使用しません(例外的にトレッドミルを用いる方法についての解説はあります)。

その点でも、習慣化のハードルが低いトレーニング法です。

運動のパフォーマンスを向上させるだけでなく、糖尿病といった生活習慣病の予防にもなるというタバタトレーニング。健康維持を考えている方にも、おすすめできます。

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Source: 扶桑社,ACSM Fitness Trends

Image: 『噂のタバタトレーニング』,Shutterstock