「quarantine(隔離、検疫)」という言葉は正しいとは言えません。

「reopening(解除、再開)」も正確ではありません。

今、私たちの社会が経験していることは前例がなく、それを言い表す言葉はないのです。

自分たちが理解に苦しむような状況は、言葉では言い表せないということでしょう。

私が初めて「social distancing(ソーシャル・ディスタンシング、社会的距離)」という言葉を耳にしたのは、2020年2月でした。

中国当局による春節の祝賀行事の取りやめが相次ぐ頃だったと記憶しています。

何か俯瞰的な、アリの巣を見下ろしながら使うような言葉だと感じました。

3月までには「physical distancing(フィジカル・ディスタンシング、物理的距離)」のほうが好んで使われるようになりました。

社会的なつながりを壊そうとしているのではなく、単に物理的な距離を置くのだという認識が強まったためです。

もちろん、たいていの人は家にこもり、できる限りほかの人から離れて過ごしています。

ですが、社会全体が大混乱に陥っている状況を表す言葉としては、「physical distancing」もしっくりこないような気がします。

家にこもっている状態をどう表現する?

口語では、多くの人が「quarantine(日本では外出自粛)」という言葉を使っています。

「#QuarantineLife」というハッシュタグもありますし、「quarantinis(隔離中に家で飲むカクテルという意味の新語)」という言葉も生まれました。

現在、公衆衛生用語として使われている「quarantine」は、厳密には、病原菌をもっていることが疑われるが、明らかな症状が出ていない人を隔離するときに使う言葉です。

一方、症状が出ている人を隔離する場合は、「isolate」が使われます。

けれども「isolation」は、孤独という含みのある言葉として日常的にも使われています。

ですから、病気が関係ない状況でも「自己隔離」を意味する「self-isolating」という言い方をします。

自分のアパートに一人きりでいるなら、当然「feel isolated(孤独を感じる)」でしょう。

私たちが家にいるのは、慎重を期してのことであり、忍耐力をもって危機にあたっているからでもあります。

けれども、政府が強制的にオフィスを休業にしているなど、別の要因もあります。こうした状況は、「shelter-in-place(屋内退避命令)」とは少し違います。

「shelter-in-place」は、銃を乱射している人がいる、あるいは放射性物質が降ってくる可能性があるなどの危険がある場合に使われる言葉だからです。

「stay-at-home order(自宅待機命令)」と呼ぶほうが現実に近いのですが、散歩に行くのはOKという地域もたくさんあります。

こうした状況を「lockdown(ロックダウン、封鎖)」や「shutdown(シャットダウン、閉鎖)」と呼ぶのもまた少し違います。

私が言う意味がおわかりでしょう。私たちが今やっていること、やっていないことを上手く伝える単語やフレーズはないのです

次にくる状況を表す言葉は何?

公衆衛生用語としての「quarantine」は、どうなったら適用し、どうなったら終了するか、はっきりしています。

具合が悪くなるまで、あるいは一定期間が経過するまで、「quarantine(隔離)」されるのです。

一定期間が過ぎれば、そのあとは自由です。ドアを開ければロックダウンは終わります。自宅待機命令は解除されます。

そうなれば、もう家にいなくていいわけです。

2週間、厳格なシャットダウンを行なってウイルスの拡散を断ち切ることに成功していたら、解除するだけで終わりにできていたかもしれません。

でも、現状はそうはなりません。

市も州も国も、規制を緩めるでしょう。今でなければ、近い将来に。

例外はすでに認められています。病院やスーパーは今も開いていますし、家族は一緒に家にこもって「quarantine」(そう呼ぶのが正しいのかはわかりませんが)しています。

ウイルスを完全に制御しないうちから、一部の規制は緩めなければならないでしょう。

私たちは、曖昧な状態に生きています。おそらく何年もそうなるでしょう。

その間は、社会が完全にロックダウンされることはないでしょうけれど、完全にオープンにもならないでしょう。

これもまた、前例のないことです。

飲食店は最初に再開されるべきでしょうか? それとも最後でしょうか?

学校は、どのカテゴリーに入れるべきでしょうか? 病院は、いつ待機的手術(緊急ではなく計画的に行う手術)を再開できるのでしょう?

制限がなくなった場合、いつ、友だちに会っても安全と考えればいいでしょうか?

今週、友だちの家に行くのはやめてください。

今週、友だちの家に行くのはやめてください。


こうしたすべての状況を表すのに「reopening(解除)」という言葉では不十分です。

しかも、単純明快な名前をつけてしまうと、電気のスイッチのように簡単にオン/オフできると、多くの人が思ってしまうのではないでしょうか。

普通の生活を送っていたら、突然すべてが暗くなりました。だからといって、スイッチをもとに戻せば、暗くなったときと同じようにサッともとに戻るわけではありません。

この状況には新しい言葉が必要です

世界保健機関(WHO)は、「easing restrictions(規制緩和)」と表現しています。「フェーズ」や「レベル」という言葉を使う知事もいます。

こうしたすべてのことを、何と呼ぶべきでしょうか?

「致命的な病気に感染するのが怖いから、できるだけ家にいる。かつ、賛成する人もしない人もいる命令に従うために、できることをする。あるいはそのどちらかをする」という状況にもっとふさわしい言葉はあるでしょうか?

「致命的な病気がまだはびこっているのに、再びほかの人との距離を縮め始める」という状況を表す言葉はあるでしょうか?

こうした状況を、これまで何と呼んできましたか? 新しい言葉を考えるなら、どんな言葉が適切なのでしょうか?

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Image: Dan Mullan/Getty Images

Source: Mother Jones

Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文