ここ数週間、ソーシャルメディアの世界では、基礎疾患のある人が新型コロナウイルス(COVID-19)に感染して死亡した場合は、COVID-19の死者として「カウント」すべきではないという議論が広がっています。

確かに、心臓病、肺疾患、糖尿病などの持病を持つ人がCOVID-19に感染すると死に至る確率が高いようです

しかし、この議論を進めていくと、COVID-19の死亡率は、企業のビジネス再開や人々の職場復帰の時期を決定する判断要因になるので、政府はどのような場合にCOVID-19で死亡したと判断すべきかという問題に発展します。

「検死解剖すると、肺の状態が非常に悪化しているので、冠動脈疾患、肺気腫、心臓病、糖尿病といった基礎疾患の影響からは切り離して考えるべきでしょう」とHarris County Institute for Forensic Sciencesで副主任検察医であり、ベイラー医科大学の病理学臨床助教授でもあるDwayne Wolfさんは言います。

死因は間違いなく基礎疾患とは別の病気です。

死亡日の主因が死因として記録される

死因を決定するとなると、死亡の直接の原因だけでなく、それを助長させるさまざまな原因も存在します。COVID-19で亡くなった人の場合、死亡の主因は、多くの場合、びまん性肺胞障害であり、患者は呼吸ができなくなって死に至ります。

新型コロナウイルスの症状を和らげる呼吸法|実演動画あり

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死亡日にCOVID-19が直接の原因で死亡したなら、COVID-19が主因と見なされ、COVID-19に感染しなければ、もっと長く生きられたはずなのに、早死にしてしまったということになります。

死亡診断書には、直接の死因に加えて、心臓病や糖尿病など、患者の状態を悪化させた可能性がある他の要因も記載されます。こうした要因は、患者を直接死に至らしめたわけではありませんが、命を救う助けにもなりませんでした。

簡単に言うと、COVID-19の軽度の症状が出ている感染者が自動車事故で死亡したら、死亡日に亡くなった直接の原因はCOVID-19ではないので、この場合、COVID-19 は死因とは見なされません。

「COVID-19感染者がCOVID-19以外の原因で死亡するケースは出てくるでしょう」とWolfさんは言います。

死因の決定プロセスはパンデミック発生前から変わっていない

COVID-19に感染した患者であろうとなかろうと、医療専門家が死因を決定する方法は同じです。Wolfさんが指摘する通り、平時でも、患者の病歴と統計に基づいて死因が決定されることがあります。

「パンデミック発生以前に採用していたプロセスをパンデミック発生後も採用しています」とWolfさんは言います。

ヒューストンにあるWolfさんのオフィスは、COVID-19関連死かどうか判断する必要がある司法解剖をたくさん扱ってきましたが、死因の決定プロセスは、パンデミック発生後も変わっていません。

アメリカでは、州によってCOVID-19感染死者数のカウントの仕方は異なります。

検査で感染が確認されなくても、COVID-19の一般的な症状があり、感染者と濃厚接触していたせいで感染の疑いがある患者が死亡した場合は、COVID-19の死者としてカウントする州もあれば、COVID-19に感染していても、直接の死因はCOVID-19でないと判断することが多い州もあります。

こうしたグレーゾーンはあるものの、死因の特定を裏付けるプロセスと理屈は、パンデミック発生前と同じです。ですから、1日の終わりに死因を特定することは一筋縄ではいかない仕事なのです。

COVID-19の死者数は実際にはもっと多いかもしれない

COVID-19感染テストが広範囲に行われていないことを考えると、カウントされていないCOVID-19の死者が存在するはずです。最近のNew York Timesの分析では、今年の死者数を1年前の同時期の死者数と比較しています。

死亡率の差を考慮し、COVID-19 が直接の死因と判断されたケースの数を勘案し、その結果を使って、カウントされていないCOVID-19の死者数の推定値を見積もっています。

この分析に基づいて、ベルギー、フランス、スペイン、スイスを含む12カ国では、COVID-19による死者が4万人程度カウントされていないと推定しています。

ニューヨーク市の場合は、3月11日から4月25日までの間に、カウントされていないCOVID-19の死者が4,200人いると推定しています。

COVID-19の死者数は、私たちがこれから進むべき方向を決める上で重要な情報なのにも関わらず、実際には、死因の決定プロセスがパンデミック以前と同じままなので、報道されているCOVID-19の死者数は、実際よりかなり少ない可能性があるのです。

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Image: Shutterstock

Source: New York Times, The Washington Post, CDC

Rachel Fairbank – Lifehacker US[原文