最近、中国の養豚場のウイルス研究を元に、「パンデミックを起こす可能性がある」新しいインフルエンザウイルスの危険性を報せるニュースがあります。
しかし、今すぐ恐れる必要はなさそうです。いつか別のパンデミックが起こるかもしれないというのは間違いない想定ですが、今回は今すぐ心配する理由がありません。
研究によって判明したこと
この研究は、不審な新しいウイルスはないかを調べるために、養豚場の豚を定期的に検査するプログラムからの報告によるものでした。
豚、鳥、人間は同じインフルエンザウイルスに罹患しますが、ほとんどの場合ウイルスは1つの動物に特化しており、他の動物に感染することはありません。
しかし、インフルエンザが不気味なのは、トランプのカードのように遺伝子が他のウイルスとシャッフルして組み合わせられるところです。
ある個体が2種類のインフルエンザウイルスに感染した場合、掛け合わされたウイルスが生まれる可能性があります。ほとんどのウイルスはそのようなことはしませんが、インフルエンザウイルスはできるのです。
また、このようなケースは、豚で起こることが多いです。このようなケースの詳細が知りたい人は、「SciTable」に詳しい説明があります。
この研究によると、「G4、EA、H1N1」と呼ばれるウイルスは、少なくとも2016年から豚に広まっており、豚だけでなく人間にも感染します。
極少数ながら人間が感染した例もあり、ある養豚場の労働者の約10%にはそのウイルスの抗体がありました。
つまり、気づかないうちに感染していたかもしれないということです。
「パンデミックを起こす可能性がある」ウイルスとは?
まず、ここ数年の間、このウイルスは出回っているものの、新型コロナウイルスのようなパンデミックは起こしていないことに留意することが重要です。
しかし、ウイルス学者のAngela Rasmussen氏はTwitterのスレッドで、G4には「パンデミックを起こす可能性がある」特徴がいくつかあると説明しています。
まず、人間の細胞に簡単に侵入できます(動物のインフルエンザウイルスでも侵入できないものもあります)。
それから、人間の細胞内で繁殖し、感染粒子を生成することもできます。人から人へ伝染しているかもしれませんが、今のところまったくわかっていません。
しかし、非常に大事なのは、そのウイルスによって人間が深刻な病気になることが証明されていないことです。万が一そのウイルスに感染しても、健康上問題がなければ、そこまで問題にはなりません。
今のところ、人間は安全です。
しかし、インフルエンザウイルスは突然変異することがよくあるので、さらに何段階かの突然変異を重ねた場合に、問題が起こる可能性があります。
もしくは、Rasmussen氏が言うように「このウイルスは、効率よく人から人へ病原体を伝染させる能力を発達させる可能性がある」のです。
どのように恐れるべきか?
今回はインフルエンザウイルスに関する話でしたが、別のパンデミックが起こる可能性は常に潜んでいます。それがいつ起こるのかがわかっていないだけです。
私が学生だった2000年代前半、生物学のクラスで毎回言われていたことを思い出します。教授は、1918年のパンデミックを含む過去のインフルエンザウイルスについて私たちに教え、同じことがまた起こると言っていました。
2009年の新型インフルエンザの大流行を思い出す人もいるかもしれません。あれも酷いものでした。新型コロナウイルスほど酷くはありませんでしたが、大勢の人が罹患し、亡くなりました。
幸運なことに、米疾病管理予防センターや世界中の同等の機関が迅速に協力し合ったので、比較的うまく対処できました。
インフルエンザウイルスは突然変異しますが、毎年変化するインフルエンザに対するワクチンの情報がすでにあるのが安心材料ではあります。
ですから、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)が問題を引き起こすとわかった科学者は、すぐにワクチンの開発に取り掛かり、私たちは入手することができたのです。
この新しいウイルスは、1918年のスペイン風邪のような酷いパンデミックを引き起こすのでしょうか?
2009年の新型インフルエンザのように対処できる問題となるのでしょうか?
もしくは、かつてないほどに酷いパンデミックが起こるのでしょうか?
今のところ誰にもわかりません。しかし、パンデミックに対処する最初のステップは、発生したウイルスを観察することです。
一般の私たちがパニックを起こす段階ではありません。ウイルス学者や伝染病学者が、このウイルスは注視しなければならないものだと分かっているのが大事なことです。
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Image: Jarun Ontakrai/Shutterstock.com
Source: PNAS, Scitable, Twitter, CDC
Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文]