• 在宅勤務をしているとついついなまけ心が顔をのぞかせるものだ。
  • なまけ心に打ち勝つのは大変なことだが、それを乗り越え、生産性を上げるための手法はある。
  • 研究者によると、10分間のアラームをかけたり、環境を変えたりするのが効果的だという。

多忙なスケジュールのなかでも、適宜休憩を入れるのは良いことだし、ときには必要なことでさえある。

それでも、日中こなした仕事に満足いっていないのなら、休憩以外に生産性を上げるための方策を何か考えるべきタイミングなのかもしれない。

在宅勤務中に集中力を長時間維持するのは簡単なことではない。企業ランキングサイト「ベストカンパニー・ドットコム」でブログ運営を担当するリンゼイ・マークスは、自宅からPCにログインするとだらけやすいと語る。

「自宅で働いていると、子どもやペット、洗濯などの家事……邪魔が入る要素がたくさんあります。それと同時に、在宅勤務はなまけ心が起こりやすく、オフィスで集中しているときのような生産性を発揮するのは簡単ではありません」

しかし、生産性をあげるための方策がないわけではない。

環境を変えたり、10分間のアラームをかけたりするのは、なまけ心と戦う上で最も有効な戦術だと専門家は指摘する。

それでもやはり、生産性を上げるエネルギーを維持し続けるのは、人間にとって簡単なことではない。進化論的な考え方からもそれは裏づけられる。

「われわれの先祖は定住生活に入る前、乏しい資源をめぐって、敵や侵略者と戦ったり逃げたりするときのために、常にエネルギーを節約しておく必要がありました。

短視的な利益だけを追って消費にいそしむことは、自らの生存を危うくする行為だったのです」

心理学専門誌「サイコロジー・トゥデイ」のニール・バートンはそう指摘した上で、次のように続ける。

「今日、人類にとって明日をただ生きのびることはさほど大きな問題ではなくなり、長期的な視点に立った行動こそが最高の結果をもたらすことを誰もが知っています。

にもかかわらず、われわれの本能はいまだにエネルギーを節約することを覚えていて、給料の支払いが遅れたり、支払われないかもしれない(コロナ時代の)不透明なプロジェクトに注力、消耗することを避けようとするのです」

これから紹介する生産性向上のための方策は、人生の大改革に取り組むものではない。それどころか、マインドセットの微調整とか、毎日のルーチンとか、その程度のことだ。

心理学者や研究者がすすめる、科学的根拠にもとづいた10の方策は以下の通りだ。

1. 10分間のアラームを活用する

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タスクが終わらないことに不安を感じる人は、あらかじめ決めた時間内だけ仕事をすることにしてみるのがいいかもしれない。時間が来たらスパッと切り上げる。

キャリア系サイトの「ミューズ」によれば、10分間のアラームを活用すると、やるべきことを片づけるのに弾みがつくという。

例えば、チームの誰かにまかせてしまえば、10分で仕事は終わる。また、グーグルであるトピックを調べるとか簡単な仕事を見つけて、それを10分で終わらせるのもひとつの手だ。

心理学者で「後回し」に詳しいティモシー・ピシルも、「サイコロジー・トゥデイ」で同様のアドバイスをしている。

本質を言うと、人は「自分と約束を結ぶ」ことで、やりたくない仕事でもなんだかんだで10分でこなしてしまうものだ。一度巻き込まれてしまうと、やめにくくなるのが人間なのだ。

2. 朝イチは気楽な仕事から

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何かやっかいなことに取り組んでいるときほど、後回しにしたくなるものだ。そのことから研究者たちが発見したのは、一日の最初は簡単なタスクから完了させるようにすると、仕事に取りかかりやすくなるということ。

出版社トーマスネルソンの元最高経営責任者(CEO)で『前向きに生きる(Living Forward)』の著者であるマイケル・ハイアットによれば、大きなプロジェクトに着手するときは、最初により簡単なタスクに取り組むと、より効率的にものごとが進むとという。

「本ぐらいの長い文章を書くとき、私はいつもすんなり書き上げられそうな章から手をつけることにしています。それを終えたら、次に楽に書けそうな章を。そうやって次へ、次へと進めていくんです」

3. エクササイズを取り入れる

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エクササイズもだらけ心に打ち勝つカギのひとつ。特に朝起きたら最初にやるのが効く。

クリーブランドクリニックによれば、身体をアクティブな状態に保つことでより多くの血液が脳に流れ込み、それがさまざまな形でなまけ心に打ち勝つのに役立つのだという。

また、米ジョージア大学の研究によると、いつも疲労を感じていると訴えていた10代の若者に軽度あるいは適度に身体を動かすエクササイズを行ってもらったところ、活力が高まり疲れを感じにくくなったという。

4. 仕事環境を変える

ブリュッセル自由大学などの研究によると、人はハードワーカーのそばで働くことで刺激を受け、より一生懸命に仕事に取り組むようになるという。この研究を援用すると、それぞれの仕事に没頭している人たちでいっぱいのカフェでTwitterにログインするのがはばかられる理由も説明できるのではないか。

5. 仲間をつくる

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説明責任を果たすべき仲間、グループがいると、人は計画通りものごとを進めようという当初の意図を貫こうと思うものだ。

2012年の学術誌「フロンティアーズ・イン・ニューロサイエンス」によれば、事前の約束、例えば友だちとある時間に集まって勉強しようと約束しておくと、人は将来の選択肢に制限をかけ、あとで後悔するような衝動的な行動をとらなくなるという。

生産性の専門家であるローラ・バンデルカムは、そうした説明責任を果たすべき仲間を選ぶにあたって、困難なことを成し遂げた実積のある人たちを選び、密にコミュニケーションをとることを勧める。

「必要なのは、規律を大切にする人たちであり、それを深く根づかせてくれる仲間なのです」

バンデルカムによると、この説明責任を果たすべき仲間は、4人かそれ以上が適切だという。もし誰かが脱落した場合、少なくとも3人がサポートしてくれるというのがその理由だ。

6. きちんとした服装をする

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この手法はリモートワークの人たちにとくに有効だ。フェイスブックを覗いてだらだら過ごしてしまう自分に歯止めをかけたり、プロジェクトの企画提案書の作成に着手したりする気力がわかないと思ったら、シミのついたスウェットパンツを履きかえてみたらどうだろう。

ファッション心理学者のカレン・パインが、米フォーブス誌の取材にこう答えている。

「ある衣服を身につけると、その服がもつ個性に引きずられて、身につけた人のほうも変わるものです。

『プロフェッショナルの仕事着』とか『週末に着る部屋着』とか、衣服はそれぞれにシンボリックな意味を持っていることが多く、そうした服を着ると、人はその意味にふさわしい行動をとるよう脳に指示を出すのです」

そんなわけで、仕事着に着替えれば、仕事を終わらせようという気持ちが高まる可能性がある。

7. 先送りしている問題を整理する

プリンストン大学のパム・A・ミュラーとカリフォルニア大学ロサンゼルス校のダニエル・M・オッペンハイマーの共同研究によれば、人はタスクを手書きすることでスローダウンし、それによって脳が題材としっかり取り組めるようになるという。

先送りにしていたタスクが頭の中で明確化されれば、それを片づけるのも容易になるはずだ。

米ピクサーのオスカー賞監督のピート・ドクターはこの手法を使って、膨大なタスクを処理しているようだ。同社のエドウィン・キャットマル共同創業者に次のように語っている。

「ふだんから、問題はすぐにリスト化するようにしてるんだ。そうすると、ほとんどの問題は2つか3つの大きなグループに括ることができて、それほどひどい話にはなってないことがわかる。リスト化して問題を限定しておくことは、『何もかも大変なことばかりだ』という馬鹿げた感情の虜になっているよりずっといい」

8. 何ごとも楽しんでやる

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没入できない仕事をすると、いわゆる「感情労働」、つまりは心の中にある感情と合致しない感情を表に出すプロセスが必要になる。

看護分野の学術誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ナーシング」によれば、これは非常に大きなストレスを生み出すという。

そこで、没頭できることだけをやれるよう仕事のやり方を調整してみよう。例えば、退屈な仕事は他の人にまかせてしまえば、自分は中身の濃いタスクに集中して終えることができるはずだ。

ハーモニー・ストラテジー・グループの創業者キーラ・ヌリエリは、Business Insiderの取材にこう語っている。

「仕事をしていて楽しくない人が多いのは、根本的にやる気を駆り立ててくれる何かに入り込めていないからです。そういう人たちは、自分の仕事に意味を感じないし、チームとのつながりも実感できません」「自分にとって喜びとは何か、成功とは、満足とは何か、そしてそれが自分のやっている仕事とどうつながっているのかをしっかり考えることが大切です」

9. 音楽を聴く

音楽は仕事の流れを円滑にする役割を果たす。なぜなら、音楽は「危険」「食事」「性」「光るもの」に反応する脳の部位を支配するからだ。

スタンフォード大学の研究によると、音楽は確実に集中力を維持する役に立つ。同論文によって、「音楽は、注意を払ったり、予測したり、記憶のなかに格納されたイベントを更新するのにかかわる脳の部位に作用する」ことが明らかになっている。

なまけ心に打ち克とうと思うなら、お気に入りの音楽を聞きながらやるといい。より大きな目標も順調に達成できるだろう。

10. 仕事を細分化する

目の前の問題は自分が思っているより大きくないと気づくこともあるだろう。もし本当に大きな問題だったとしても、より小さな問題に分解できる可能性がある。

心理学者のエドウィン・ロックが提唱した「ゴール・セッティング・セオリー(目標設定理論)」によれば、私たちが設定する目標は、それが具体的かどうかで有効性が違ってくるという。究極の目標をより小さないくつかのタスクに分割することで、取っつきやすくなるのは間違いない。

男性向けファッションメディア「メンズ・スタイル・プロ」の創業者でクリエイティブディレクターのサビール・ピールは、1日の仕事時間を2つに分け、それぞれに明確にタスクを割り振るとクリエイティビティを維持できると指摘する。

「まずは昼までに片づけたいタスクを最大で10件リストアップする。集中力を維持するため、1時間ごとに一番重要だと思う仕事を最初にやって終わらせ、その後はメール対応。タスクが2件終わるごとに20回の腕立て伏せをするんだ」(サビール・ピール)

午後には性質の異なる仕事に切り替えるという。ピールの場合は、会議やコンテンツづくりだ。

タスクを細分化して午前と午後に分けるだけで、仕事は片づけやすくなり、より深く没入できるようになる。

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BUSINESS INSIDER JAPANより転載(2020.7.12)