仕事やプライベートの悩み、ストレスの原因の大半は、人の話を聞くことができない点に集約されると主張するのは、『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』(赤羽雄二 著、日本実業出版社)の著者。
人はとかく、「聞かなければならない」「聞いたほうがいい」とわかっていても、我慢できず、途中で相手の話をさえぎってしまいがちだというのです。
しかし、それでは相手が「もう話したくない」と思っても当然。それが原因でコミュニケーションにひびが入ってしまっても、無理はないわけです。
つまり、それほど「聞くこと」は重要で、だからこそ本書で説明されている「アクティブリスニング」が大きな意味を持つというのです。
著者のカウンセリングを受ける人の多くも、「なぜ私はあの人を許せないのだろう?」「なぜ、私はあの人から許されないのだろう」、そして、「そもそも“許す”ってなに?」という疑問について考えているのだとか。
そして、結果的にはそれこそがカウンセリングにおけるターニングポイントのひとつになるのだといいます。
アクティブリスニングとは、「真剣に、徹底的に相手の意見を聞き、質問もしながら理解を深めること」です。
相づちを打ちながら、相手の目を見ながら、心から関心を持って、真剣に、徹底的に話を聞きます。
他のことを考えていたり、早く終わらないかな、などと思っていたりせず、ていねいに聞きます。
本当は聞いていないのに聞いたつもりになるのは、自己満足に過ぎません。
十分理解できないどころか、誤解が生じたり関係が悪くなったりすることもあります。(「はじめに〜『アクティブリスニング』はすべての悩みを解決する」より)
「ただ聞くこと」との違いは、「真剣に、徹底的に相手の話を聞く」「質問もしながら理解を深める」の2点。
そして「傾聴すること」との違いは、「躊躇なく質問しながら、理解を深める」点。
だとすれば、そんなアクティブリスニングをぜひとも日常生活に取り入れたいところではあります。
そこでCHAPTER 6「アクティブリスニングのやり方――質問、深堀、まとめ、A4メモ書き」のなかから、2つの要点を抜き出してみることにしましょう。
ひたすら聞く、相づちを打ちながら聞く
「ひたすら聞く」×「相づちを打つ」×「疑問があったら躊躇なく聞く」
これが、アクティブリスニングの鍵。
「ひたすら聞く」とは、すべてのことばに集中し、できる限りそのまま理解すること。「うわの空」ではなく、一言一句理解していくことが大切だというわけです。
したがって、余計なことを考えず、相手のことばそのものの理解に努めるべき。
「相づちを打つ」が大切なのは、聞く側が無反応だと、相手が話しづらくなってしまうものだから。
もちろん過度な反応は不要でしょうが、適度で自然な相づちは話し手の気持ちを高めるものでもあります。そのため、より話してくれるようになるわけです。
そして「疑問があったら躊躇なく聞く」には、「適切な疑問を持つこと」「躊躇なく質問すること」「的確な質問をすること」という3つの要素があるのだそうです。
「ひたすら聞く、相づちを打ちながら聞く」ためのポイント
1. 相手の言葉に集中し、できる限りそのまま理解する
2. 余計なことを考えず、相手の言葉そのものの理解に努める
3. 可能な場合は、メモを取る。発言内容をできるかぎり書き留める
4. 適度で自然な相づちで話し相手の気持ちを高める
5. 調べられることは全部調べた上で、適切な疑問をぶつける
(110ページより)
などになるそう。
なお、「相手の言葉に集中し、できる限りそのまま理解する」「余計なことを考えず、相手の言葉そのものの理解に努める」ことがそもそも難しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、この点については
私たちがどのくらい理解できるか=その分野の知識量×集中度×理解力(110ページより)
で決まるのだといいます。(102ページより)
ソフトに、しかし躊躇なく質問する
相手の話を真剣に聞き、しっかり理解すると、さまざまな疑問が生まれてくるものです。
そんなときは、「なるほど、そうなんですか。すると、この部分はどう考えればいいでしょうか?」「ここについてはどう思われますか?」というように、掘り下げていくことも重要。
ただし、あくまで関心、好奇心からの質問なので、「本当にそうなのか」と相手の発言を疑わないように。
また待っているだけではタイミングを逃す可能性があるため、相手の話が止まった瞬間に、間髪入れず質問することも意識する必要があるようです。
ソフトに、躊躇なく質問するためのポイント
1. 「疑問があったら躊躇なく質問する」ことを自分の方針にする
2. 相手に関心、好奇心を持つ
3. 相手が一瞬止まった瞬間に間髪入れず質問する
4. 相手の反応がポジティブなら次々に質問していく
5. 相手の反応がいまいちなら、しばらく聞くことに徹する
6. 部下の話を聞くときは、萎縮せずに話しかけられるようになった後、気をつけながら質問する
7. お客さまの話を聞くときは、本音をなるべく引き出すように質問する
8. 目上の方の話を聞くときは、できるだけ気持ちよく話していただくように質問する
(116〜117ページより)
などになるそうです。(111ページより)
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たとえばこれらを確認するだけでも、アクティブリスニングが決して難しいものではないということがわかるはず。
そのため、すぐにでも取り入れられそうです。習慣化することができれば、ビジネスがより円滑に進むようになるかもしれません。
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Source: 日本実業出版社
Photo: 印南敦史