コロナ禍の影響で普及したリモートワーク。半永久的な導入を決めた企業も増えてきました。離れている人とのビジネスが当たり前になれば、文字によるコミュニケーションはより重要な課題となります。

IBMのWebメディアMugendai(無限大)に、日本人の読解力に危機感を抱く教授が登場。「読解力のない人材は企業リスク」と言い切る真意と、これからのビジネスパーソンに必要なスキルとは。

文書が中心となる「新文書主義」。読解力が最も重要なスキルに

インタビューに登場していたのは、国立情報学研究所社会共有知研究センター長で、東大合格に挑戦するAI「東ロボくん」も手掛けた新井紀子教授

教授が「21世紀の働き方」として提唱するのが、正しい仕様書や設計書など「書かれたもの=文書」を中心にビジネスが回る「新文書主義」です。

文書を正しく読めない=読解力がないことは、生産性の低下や訴訟リスクに発展しかねないと断言。これまでの日本で見られた「先輩を見習って真似する」方式を「慣行主義」と名付け、日本企業の利益率の低さにつながっていると指摘します。

読解力が不足する現代人。これからのビジネスパーソンに必要な「新文書主義」の考え方
Image: Mugendai(無限大)

教授がそうして危惧するのは、日本人の読解力に低下傾向がみられるから。

インターネットやSNSの普及によって成人が1日に読む文書量は急増しているそうですが、その中で「文学」の占める割合は急降下し、今では0.1%を下回る状況だといいます。

「文系・理系」の区分は古い。変化する“文書”に対応するには

日本人の読解力低下について「もはや文系・理系で分ける時代ではない」との持論を持つ教授は、古くからいわれる「読解力は国語の授業で身に付ける」説に異論を唱え、以下のように語っています。

「文学や国語は好きで得意だけど、理系の文章を読むのは苦手」と言う文系の人はたくさんいます。特に、数学の教科書が読めない人は多いです。

計算が不得意かというと、そうでもない。文学を通じて育む読解だけでは、歯が立たないタイプの文書が、明らかに存在するということです。

そして、そういうタイプの文書が21世紀には確実に増えていくでしょう。

読解力が不足する現代人。これからのビジネスパーソンに必要な「新文書主義」の考え方
Image: Mugendai(無限大)

日常生活やビジネスシーンで接する文書が変化しているにも関わらず、誰もその問題に取り組んでいないことに気づいた教授は、2016年、さまざまな分野の短文を正確に読み解く力(汎用的基礎読解力)にフォーカスした、RST(リーディングスキルテスト)の開発を始めました。

同テストは全国の自治体や学校、企業などですでに20万人以上が受験しているそうですが、自分の読解力はやはり気になりますよね。

記事で紹介されていた問題を抜粋しましたので、ぜひチャレンジしてみてください(正解は問題の後に記載しています)。

【例題1】 (難易度:普通)

以下の文を読みなさい。

色やにおいで引き付けられた動物は、おしべの花粉を体につけ、別の花のめしべへと運び、植物の受粉を助ける。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

植物の受粉を助けるのは(  )である。

1 花粉 2 動物 3 おしべ 4 めしべ


【例題2】 (難易度:難)

以下の文を読みなさい。

穀類・いも類・砂糖の主な成分は炭水化物である。穀類・いも類には炭水化物のうちでんぷんが多く、砂糖はそのほとんどがしょ糖である。

この文脈において、「そのほとんど」とは何のほとんどを指すか。最も適当なものを1つ選びなさい。

1 穀類・いも類 2 炭水化物 3 でんぷん 4 たんぱく質

正解は、共に2。結果はいかがでしたか。

その他にも「2~3割の職種はAIが担うようになる」未来に必要とされる心構え、それに「超難問」の例題も含めた記事の続きは、Mugendai(無限大)よりお楽しみください。


Image: Mugendai(無限大)

Source: Mugendai(無限大)