賭け麻雀疑惑も飛び出した検事長問題、「法改正」見送りの大誤算

uttii20200520
 

政府与党により採決が強行されると見られていたものの、一転して今国会での成立が見送られることとなった検察庁法改正法案。先日掲載の「小泉今日子ら『#検察庁法改正に抗議します』きゃりーは削除」等でもお伝えしたとおり、多くの国民が巻き起こした「うねり」を無視することはできなかった安倍政権ですが、現行案のまま成立めざす姿勢に変わりは見られません。当の黒川弘務東京高検検事長については20日に文春オンラインに賭けマージャン疑惑が報じられるなど、さまざまな思惑が蠢いているようにも受け取れる検察庁法案周辺ですが、新聞各紙は今回の「見送り」をどのように報じたのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんが自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で、詳細に分析・解説しています。

検察庁法改正見送りを、新聞各紙はどう伝えたか

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…検察庁法改正 今国会断念
《読売》…検察庁法案 今国会見送り
《毎日》…検察庁法改正見送り
《東京》…検察庁法案 今国会断念

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…民意 見誤り打撃
《読売》…政府 強気から一転
《毎日》…怒りのツイート 政権直撃
《東京》…人事介入なお懸念

プロフィール

各紙、今国会での検察庁法改正案成立を政権が断念したことを大きく伝えています。この問題をどう捉えているのか、各紙の「論」を検証します。その前に、記事文中、「法案」を主語とする場合に、各紙はどのように形容してきたか、まずはこの欄で触れておきたいと思います。法案をどのように呼ぶか。ここに問題の捉え方のエッセンスが含まれていると思います(《朝日》は昨日の紙面から拾っています)。

  • 《朝日》:「政府の判断で検察幹部の定年延長を可能にする検察庁法改正案」
  • 《読売》:検察官の定年を65才に引き上げる検察庁法改正案
  • 《毎日》:内閣の裁量で検事総長や高検検事長らの定年延長を可能とする特例を盛り込んだ検察庁法改正案
  • 《東京》:検察官の定年を政府の判断で延長できるようにする検察庁法改正案

ご覧の通り、《毎日》が一番丁寧で正確ですが、《朝日》《東京》も言わんとするところは同じです。《読売》は、国会でこの点の改正には野党も反対していないということから考えても、ほぼ「間違い」のレベル。少なくとも、これでは問題の意味が全く分かりませんね。

国民の政治意識は高まっていた

【朝日】は1面トップ記事の末尾に国会取材キャップ・蔵前勝久記者による「視点」が点いている。1面トップ記事の見出しから。

  • 検察庁法改正 今国会断念
  • 政府、世論の反発受け
  • 定年特例 撤回せず継続審議
  • 問題点そのまま国民軽視

「視点」はまず、今回の「断念」の背景には「新型コロナウイルスの危機にさらされる国民の政治意識の高まりがあった」とする。検査は受けられるのか、給付金は届くのかと政府対応に疑問を感じながら、自粛を求められるばかりの国民。他方、政府は野党の質問にもまともに答えず、国会もその機能を果たしていないという不満。そのような不満が「#検察庁法改正案に抗議します」のもとに噴き出したとする。

政府は、恣意的な検察人事を可能とするような法案を出しながら、特例の対象とする際の基準さえ示さない。コロナ禍に広がった意識が、政治の傲慢さを見過ごさず、世論のうねりにつながったと。

uttiiの眼

冒頭の指摘は非常に重要。コロナ禍の最中だからこそ、強引に通せるだろうと高を括っていた政府に対しては、「火事場泥棒」という批判がなされたのだが、市民の側からすれば、「火事」(コロナ禍)でむしろ危機感が高まり、警戒感も鋭敏になっていたところに、「泥棒」(検察庁法改正案)がノコノコとやってきたことになる。政権は、国民をなめきっていた。政権からすれば、特定秘密保護法のことを見ても、批判は一時的であり、すぐに忘れてくれるという“成功体験”があり、その記憶にすがって強行しようとしたことになる。

記事の末尾。記者は政府・与党がこの法案を先送り、引き続き「世論の反発を受けてもほおかむりして逃げ切る」手法を繰り返そうとしていることを、正しくも批判している。

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