岐阜市の高校2年生が教室で自殺…「これは、防がなくてはならない死」

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修

 新学期に入って間もない9月3日、岐阜市内の高校の教室で男子生徒が首を吊って意識不明の状態で発見され、病院に搬送されたが、まもなく死亡が確認された。自殺とみられている。夏休み明けに「教室」という公の場で起きた悲しい出来事を受け、教育家の水谷修氏は自身の経験を踏まえて「十分防ぐことのできた事件であり、防がなくてはならなかった事件」と指摘した。

この生徒が教室でどれだけ苦しんだか

 岐阜市内の高校で、高校2年生の生徒が、個別指導を受けた後教室で、自ら命を絶ちました。哀しい事件です。この生徒は、同級生とのトラブルから、放課後、担任と学年主任による指導を受け、担任たちは、保護者に連絡をするため指導した教室を1時間半以上離れ、その間にその生徒が自ら命を絶ちました。報道によれば、その高校の教頭は、指導には問題がなかったと発言しているようです。本当にそうでしょうか。

 私は、横浜市の高校で22年間、生徒指導を専門にしてきました。このようなケースで、個別で生徒を指導したことは、数え切れないぐらいあります。その経験からいえば、今回の事件は、 十分防ぐことのできた事件ですし、防がなくてはならなかった事件です。生徒への指導を、複数の教員が行ったことは、当然のことですし、評価できます。しかし、この2人の教員が、指導した生徒を1人にしてしまった。しかも、親に連絡するからと伝えて、1時間以上にわたって。 これは、あり得ない行為です。

 生徒にとって、個別に教員から指導を受けること自体が、重圧です。もしかしたら、退学等の処分を受けるのではないか。しかも、親への連絡も伝えられています。親に迷惑をかけるということは、さらにこの生徒を追い込んだはずです。その上で、長い時間放置した。許されないことです。私も、このようなケースをたくさん扱いましたが、絶対に生徒を一人にはしませんでした。 校長、教頭、手の空いている教員を、側に置き、かつその生徒と話をさせました。この学校ではそれをしていない。

この生徒が、1人教室でどれだけ苦しんだか。それを、この学校の教員は、わかっていないようです。苦しみ悩み、そしてどうしようもなくなって命を絶った。どれだけつらかったか。そのつらさは、誰がそうしたのか。それを考え、心で感じれば、教頭は、指導には問題がなかったなどという言葉は、言えないはずです。

 1人の生徒が、学校の教室で、自ら命を絶つ。これがどれほど大変なことか。ぜひこの学校のすべて教員に考えて欲しい。理由もなく、命を絶つ生徒はいません。しかも、教室で。

 ぜひ、早急に第三者による委員会を作り、すべての指導内容と事実を明らかにして欲しいと考えます。そして、関わったすべての教員は、事実をきちんと話して欲しい。そして、自ら罪を 償って欲しいと、私は、考えます。

  この生徒の死を、無駄にしてはいけない。訳もなく自ら命を絶つ生徒はいません。この生徒を、死に追い込んだのは、誰なのでしょう。それを明らかにしなければ、この高校には明日はないでしょう。

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