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日本はなぜ、韓国に一本取られたのか

澤田克己・論説委員
半導体材料の輸出規制強化に関する事務レベル会合に臨む韓国側(奥)と経産省の担当者=東京都千代田区で2019年7月12日午後、代表撮影
半導体材料の輸出規制強化に関する事務レベル会合に臨む韓国側(奥)と経産省の担当者=東京都千代田区で2019年7月12日午後、代表撮影

 韓国政府が6月2日、日本による半導体素材3品目の輸出規制強化について世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを再開すると発表した。昨年11月に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄とともに「停止」していたもので、日本側は強く反発した。

 日本が2019年7月に実施したこの措置をめぐる展開は、韓国側に一本取られたという感が強い。韓国は貿易管理制度についての日本の要求をすべて受け入れたけれど、日本側の本当の狙いだった徴用工問題は好転していない。そのために日本は「制度を改善しただけでは駄目だ。運用を見てからでないと判断できない」という苦しい主張をせざるをえなくなった。それを受けて韓国は、WTO提訴再開という揺さぶりをかけてきたという構図だ。

 日韓請求権協定を無視するような徴用工問題での文在寅政権の対応には大きな問題がある。だから、外交的圧力をかける必要があるという考えまで否定するわけではない。ただ、圧力をかけたつもりが空振りどころか、相手にうまく立ち回られて自分が苦しくなっただけというのでは困る。やっぱり「愚策」だったのである。

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論説委員

1991年入社。ソウル支局やジュネーブ支局で勤務した後、論説委員を経て2018年から外信部長。20年から再び論説委員。著書に『韓国「反日」の真相』、『反日韓国という幻想』、『新版 北朝鮮入門』(共著)など。