日本のコロナ対策は大失敗だったのではないか

森永卓郎・経済アナリスト、独協大学教授
森永卓郎氏=藤井太郎撮影
森永卓郎氏=藤井太郎撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の全面解除を決めた5月25日の記者会見で、安倍晋三首相は次のように述べた。

 「本日、緊急事態宣言を全国において解除いたします。足元では、全国で新規の感染者は50人を下回り、一時は1万人近くおられた入院患者も2000人を切りました。先般、世界的にも極めて厳しいレベルで定めた解除基準を全国的にクリアしたと判断いたしました。諮問委員会でご了承いただき、この後の政府対策本部において決定いたします」

 「3月以降、米国では、欧米では、爆発的な感染拡大が発生しました。世界ではいまなお日々10万人を超える新規の感染者が確認され、2カ月以上にわたり、ロックダウンなど強制措置が講じられている国もあります。わが国では、緊急事態を宣言しても罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでもそうした日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で今回の流行をほぼ収束させることができました。まさに、日本モデルの力を示したと思います。全ての国民の皆さまのご協力、ここまで根気よく辛抱してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます」

 安倍首相は、日本の新型コロナウイルス対策が的確で、大きな成功を収めたと、高らかに宣言したのだ。

 同じ日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も、ジュネーブでの記者会見で、日本が新型コロナウイルスの感染者数や死者数の抑制に成功したと、日本のコロナ対策を評価した。

 こうした状況の下で、多くの国民が、「日本人は、清潔好きで、マスクもきちんとしてきたので、感染しにくい」とか、「しっかりとした医療体制が提供できているから死亡者が少なかった」と認識している。

 しかし、日本の感染者数や死亡者数が少ない理由は、本当に「日本の新型コロナウイルスの対策が素晴らしかったから」なのだろうか。私は、むしろ逆だったのではないかと考えている。

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経済アナリスト、独協大学教授

1957年生まれ。日本専売公社、経済企画庁、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て独協大経済学部教授。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済。コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演。著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」(光文社)など。