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360hp&1700Nmの9.29ℓ直5リジッドトラックから650hp&3300Nmの16.35ℓ V8トラクターまでクローズドコースで走行 ネクストジェネレーションスカニア試乗…トラックドライバー憧れの存在は内外装の質感のみならず、走りも高級スポーツセダンさながら!

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上級グレード「R」シリーズに410hp/1900rpm&2150Nm/1000-1300rpm仕様の12.742ℓ直6ディーゼルエンジンを搭載した6×2リジッドトラック「R410」(左)と、ベーシックグレード「P」シリーズに360hp/1900rpm&1700Nm/1050-1350rpm仕様の9.29ℓ直5ディーゼルエンジンを搭載した6×2リジッドトラック「P360」(右)

10年の開発期間と200億スウェーデンクローネ(約2500億円)をかけて21年ぶりにフルモデルチェンジされ、第四世代に進化したトラクター(トレーラーヘッド)およびリジッドトラック、通称「ネクストジェネレーションスカニア」を、2017年の東京モーターショーでサプライズ出品したスカニアジャパン。その後、今年4月3日にトラクターを、続いて9月3日にはリジッドトラックを発売した。その驚愕の中身とは。前者を日本自動車研究所(JARI)城里テストセンター(茨城県東茨城郡)、後者を岡山国際サーキット(岡山県美作市)で試す機会を得た。

REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、Scania

スカニアジャパンの中井誠執行役員営業本部長
 スウェーデンの首都ストックホルム近郊の工業都市セーデルテリエを本拠地とするスカニアの創業は1891年。欧州を中心に世界100ヵ国以上に販売・サービス網を敷く世界第三位の大型トラック・バス・エンジンメーカーだ。

 しかし、2000年代に「日野スカニア」としてトラクターが販売され、日本法人のスカニアジャパン設立は2010年と歴史の浅いスカニアは、乗用車や二輪車と同じく国内メーカーが圧倒的なシェアと知名度を持つ日本ではまだまだ一般への認知度が低いのが実情だろう。

 だが、ドライバー不足が深刻化している物流業界では近年、高齢者や女性、若手まで幅広くドライバーを確保するため、所有車両の運転サポート機能や荷役作業軽減装置を充実させるのみならず、ドライバーに「乗りたい!」と思わせるような、上質かつ快適で走りの良い車両を選ぶ傾向にある。

 その頂点にあるのがスカニアで、スカニアジャパンの中井誠執行役員営業本部長によれば、「2015年頃からスカニアの高級感や快適性、燃費や信頼性の高さが認知されはじめており、運送会社の経営者が『ウチに入って頑張ればスカニアに乗れるようになるよ』と言って、入社希望のドライバーをつかまえる手段として活用されるようになっています」というのだ。

かつて同グループだったサーブの乗用車を大きく上回る質感を備えたインパネ。撮影車両の「R450ハイライン」は木目調ステアリング&ダッシュパネルを装着
余裕に満ちたサイズで適度なホールド性と心地良いフィット感を兼ね備えたドライバーズシート
回転式リクライニング機構を備えた助手席レザーシートと、800mmから1000mmまで拡張可能なベッド

 それが本当かウソかは、「ネクストジェネレーションスカニア」のコックピットに昇れば一目瞭然。ドイツやスウェーデンの乗用プレミアムブランドもかくやと思わせる機能的かつ上質なダッシュパネルに、心地良い感触の大ぶりなシート、そしてベッドは、大型自動車免許やけん引免許を取得していない筆者にさえ「乗りたい!」と思わせるほどの魅力を備えていた。

「S650ハイライン」。ブラック塗装のフロントグリルやレザーシート、ステアリングなどはV8モデル専用装備

 そして実際に、最高出力650hpを1900rpm、最大トルク3300Nmを950-1350rpmという極めて低い回転域で発生する16.35ℓ V8ディーゼルエンジンと、超低速での繊細な走行が要求される時にのみ使用するクラッチペダルを持つ3ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」シングルクラッチ式トランスミッションを組み合わせた6×4トラクターの最上級モデル「S650ハイライン」にトレーラーを装着し重機を載せ、総重量61トンの状態で走らせると、「ネクストジェネレーションスカニア」の魅力がインテリアだけではないことが即座に分かる。

「S650ハイライン」が搭載するDC16型16.35ℓ V8ディーゼルエンジン。約80kg軽量化されるとともに、さらなる低回転高トルク化と、約7~10%の燃費向上が図られている

 発進こそほぼ目一杯アクセルペダルを踏み込む必要があるものの、ひとたび走り出せばターボラグを一切感じさせないフラットトルクと、デュアルクラッチ式と錯覚するほどスムーズかつ素早いシフトアップで、61トンの質量をあっけないほどに60km/h以上の巡航速度へと導いてくれた。しかもこれが、可変ジオメトリーターボではなく固定式ターボで、さらにEGRを用いずSCRのみで平成28年排出ガス規制をクリアするというのだから、驚くより他にない。

12段+2段のGRSO925型「オプティクルーズ」ギヤボックスは、カウンターシャフトの回転速度を制御するレイシャフトブレーキ機構を備えることで、先代に対し変速時間を45%短縮。ギヤボックス末端には摩擦ブレーキの消耗を大幅に抑える流体式リターダーを装着する

 だがコーナーの入口に差し掛かっても、コラムレバーで5段階から効きを調節可能な流体式リターダー(補助ブレーキ)が、新型リーフや欧米のEVよりも強力かつ滑らかに膨大なマスを減速してくれるため、不安は一切感じない。

 なお、試しにフットブレーキでも減速してみたが、前後ドラムブレーキながら商用車にありがちな、初期制動力だけむやみに高く、積み荷を前方へ吹っ飛ばしてしまいかねない非コントローラブルな特性とは真逆の、極めてリニアなフィーリングだった。

 そして圧巻は、走りである。筆者は15~20年前に4トンクラスの車載車を公道で何度か運転した経験があり、その際に前述の非コントローラブルなブレーキと、中立付近の遊びが極めて大きく不正確なハンドリング、フル積載の状態でもリヤから強烈に突き上げる乗り心地、というイメージを商用車に抱いてしまっていた。

 しかし「ネクストジェネレーションスカニア」は、そうした偏見を根本から覆す、極めて正確かつ頼もしい手応えと挙動、フラットな乗り心地をドライバーに返してくれる。世代交代に伴い安全性向上のためキャビンの剛性が高められ、燃費改善のため空力特性が全面的に見直されたというが、その効果は走りにもプラスの効果をもたらしているようだ。

上級グレード「R」シリーズに450hp/1900rpm&2350Nm/1000-1300rpm仕様の12.742ℓ直6ディーゼルエンジンを搭載した4×2トラクター「R500ハイライン」
DC13型直6ディーゼルエンジン。V8と同様にターボを固定式に変更し、EGRを用いずSCRレス化しながら、燃焼室形状やインジェクターを改良し、平成28年排出ガス規制をクリアしている

 この走行フィールは、500hp/1900rpm&2550Nm/1000-1300rpm仕様の12.742ℓ直6ディーゼルエンジンと2ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」を搭載する4×2トラクターの上級グレード「R500ハイライン」に、総重量44トンの状態で試乗すると、より一層強く感じられる。「S650ハイライン」でも余裕に満ち溢れているいうのに、17トンも軽い状態の「R500ハイライン」に不足を覚えるはずもなく、高級背高ミニバンからスポーツセダンに乗り換えたかのように軽快で意のままの走りを味わうことができた。

ベーシックグレード「P」シリーズに360hp/1900rpm&1700Nm/1050-1350rpm仕様の9.29ℓ直5ディーゼルエンジンを搭載した6×2リジッドトラック「P360」。荷台の完成ウィングは日本トレクス製

 これが、360hp/1900rpm&1700Nm/1050-1350rpm仕様の9.29ℓ直5ディーゼルエンジンと2ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」、荷台に日本トレクス製の完成ウイングを搭載する6×2リジッドトラック「P360」へ10tの荷物を載せた車両になると、体感できる運転感覚は同じスポーツセダンでも、LセグメントからDセグメントに乗り換えた時に近いものとなる。

DC09型9.29ℓ直列5気筒エンジン。DC16およびDC13と同じく1気筒ごとに独立したモジュラー構造で、バルブトレーンやシリンダーヘッドに不具合が発生してもその気筒のみ部品交換できる

 そしてさらに、同じ仕様の車両に空荷の状態で試乗すると、体感できる軽快感とコントロール性は最早“大型トラックのピュアスポーツカー”と言っても過言ではないレベル。しかも、岡山国際サーキットはバックストレートが上り坂となっているが、この区間でも難なく加速できるうえ、コーナーで縁石に乗り上げても、空荷にもかかわらずエア式のサスペンションやシートがその凹凸をキレイに吸収し、ドライバーに不快なショックを感じさせることはなかった。

 乗用車でもそう多くの車種では得られない、上質かつ快適装備満載のインテリアと極めてコントローラブルな走りを備えた「ネクストジェネレーションスカニア」、これならば複数泊の長距離輸送業務もさほど苦にならないだろう。そして、ドライバーの就労意欲を大いに高めてくれることは間違いない。

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