給与明細は自分の権利を守る大切な領収書

給与明細を毎回しっかりとチェックしていますか? 手取り額をちらっと見てお終いではないですが? しかし、給与明細は、これからの人生においてとても大切な情報が盛りだくさんなのです。自分の1か月の成果や支払った税金として社会貢献した額などが記載されています。選挙権とともに、社会活動の基礎がそこにあります。

給与明細には、いろいろな情報が書かれています。その中で特に重要なのが年金の保険料です。将来自分がもらう年金の元となるものです。「消えた年金」が問題になって久しいですが、この給与明細は、自分が支払った保険料の領収書みたいなものなのです。年金が問題になった時に、給与から差し引かれていた保険料を会社が納付していなかった例もありました。本人は厚生年金に加入していると思っていても、会社が手続きや納付をしていなければ意味がありません。給与明細は少なくとも支払った保険料の証明にはなります。ただし、年数がたつと印刷が薄れます。データをPCに保管するか、最低でも年末調整後に渡される源泉徴収票は保管ください。ただし、サラリーマンでも確定申告が必要な場合はあります。その場合、源泉徴収票は税務署に提出しますので、必ずコピーを取っておいてください。

給与明細が数年分たまったら、社会保険事務所に出向いて、今までの保険料の納付記録を打ち出してもらうとよいでしょう。毎年の昇給だけでなく、年度内でも給与(標準報酬額)が変化するたびに記録されています。自分が収めた保険料が正確に反映されているか給与明細と照らし合わせれば、チェックできます。国がどんなミスをしようと、自分で自分を守れ、消えた年金問題など発生しません。私は何度も転職はしましたが、比較的大手関連の企業だったので、年金の手続きなどはまったく心配はしていませんでしたが、それでも社会保険事務所でデータを入手していました。国と言っても人間がすることです。自分の将来の権利を自分で守る方法があるのに、他人に全面的にゆだねる気にはなれません。

自営の方の場合は、国年年金に加入することになります。保険料は口座から引き落とされると割引にはなります。引き落としの通帳を40年間保管するか、引き落としにせずに納付書で納めて、領収書を40年間保管してください。社会保険事務所は平気で「記録がありません」と言います。私は自分がもらえる保険料を確認に出向いたときに、そう言われて、領収書の束をドン! とテーブルに突き付けたことがあります。私は保管しやすく、年金の領収書として管理しやすいようにあえて領収書方式にしていました。1年分まとめて前納すれば、だいぶ安くなります。

給与明細に書かれている内容

給与明細に記載されている事項の主なものは下記の表にまとめてあります。手当類は各社で大きく異なります。生活設計は手当なしで考えましょう。

・課税対象額=支給額の合計-交通費・出張交通費(非課税範囲)-社会保険控除額
・所得税は年末調整で過不足分が調整されます。
・ボーナスは基本給をもとに●カ月分で計算されます。

給与明細の主な項目

給与明細で気を付けること

給与明細は正しいとは限らない……年金の記録同様に人間のする行為です。ミスがないとは限りません。私は実際に手当等が漏れていたりして、正しくなかったことがあり、人事担当者に是正を求めたことがあります。大切なことは、自分の正当な権利に関して、人間のすることに全面的に任せっきりにしないことです。

初年度は住民税が差し引かれない……住民税は前年度の収入をもとに計算されます。つまり新入社員で前年度の収入がない場合は、住民税は差し引かれないのです。私も経験がありますが、次年度になって収入もアップしているのに、なぜか手取り額があまり増えていない現象が起こります。特に経済が低迷し、給与があまり上昇しない場合は、手取り額が少なくなることもありえます。さらに初年度の収入はおおむね4月~12月の9か月分なので、翌年6月から差し引かれる住民税もその分ですが、3年目は12か月分の収入をもとに計算された住民税が差し引かれます。初年度に生活を広げてしまうと翌年以降苦しむことになります。

ざっくりと手取り額しか把握していなければ、正しく生活設計ができません。新入社員の間は給与が少ないので、ちょっとした違いで、その月の生活が成り立たなくなりかねません。しかも手取り額の中から、少しずつでも貯蓄しなければならないとすると、しっかりと給与明細の中身を把握して、確実な収入をベースに生活設計を行いましょう。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

※イラストは本文とは関係ありません