回転寿司チェーンの「スシロー」を運営するあきんどスシローは、国内のみならず海外への出店も考えている。海外では現在、韓国のみだが、どういった構想を抱いているのか。

ノウハウを蓄積

スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長

スシローの海外店は韓国に8店舗ある。それ以外にはない。韓国で出店したものの、採算にのせきれず、試行錯誤を続けてきたからだ。日本ではうまくいっても、海外ではうまくいかなくなることがある。スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長は海外店ではいくつかの課題を抱えていたと話す。

ひとつは、クオリティの問題だ。シャリひとつとっても、どのタイミングで酢をかけるか、仕上がったシャリを食べてそれが本当においしいのか。そもそも仕入れた米に割れがなく、当初要求した品質基準を満たしているのかどうか、などといったことだ。

味にこだわりを持たないと味・品質は落ちてしまう。スシローが抱えた課題も味・品質だった。結果として、日本から人材を送り、改善を試みた。それによって、現場の緊張感も変わり、水留社長は「日本に近いクオリティまで上げることができた」と話す。

出店場所にも問題はあった。日本ではロードサイドに出店するのが王道だが、韓国で受けたのは、ショッピングモールのように人が集まる場所だった。ビジネスとして成立させるには、日本流を持ち込むだけではダメなことがわかったのだ。

ひとつずつ課題を解消していったスシロー。韓国での経験をノウハウとして積み上げ、「ようやく望ましいモデルになってきた。店舗を増やしていくことで、利益を出せるようにところまできた」と水留社長は現状を述べる。それと同時に、他国への多店舗展開も見えてきたようだ。

ただし、今後出店する国は多くの人のイメージと違うかもしれない。寿司、海外というと欧米をイメージするが、水留社長は「優先順位としてはアジアのほうが高い」(水留社長)と話す。

出店するのは欧米ではない理由

その理由について「うちの良さは寿司のうまさ。寿司であれば来てくれるというエリアよりは、寿司の違いで来てくれる、寿司のうまさを感じて来てくれる、そういうエリアを我々は優先的に取り組んでいきたい」(水留社長)とする。

わかりづらいが、詰めて聞くと明快だ。アジアを優先する理由がよく分かる。「欧米に出店しても、記念日だから行くとか、物珍しいから行くとなってしまう。それよりは月1回はスシローに行こうと思ってもらえる土壌があるエリアを優先したい」という。スペシャリティフードではなく、目指すのは気軽に入れる寿司レストランというポジションだ。