科学技術振興機構(JST)は7月7日、科学好きのすそ野を広げるとともに、トップ層の学力伸長を目的として、全国の高校生が学校対抗で科学の力を競う「第6回科学の甲子園全国大会」ならびに、科学好きのすそ野を広げるとともに、未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成することを目的として、全国の中学生が都道府県を代表して科学の思考力・技能を競う「第4回科学の甲子園ジュニア全国大会」を開催すると発表した。 科学の甲子園全国大会は2017年3月17日から20日にかけて、茨城県のつくば国際会議場ならびにつくばカピオにて開催されるもの。一方の科学の甲子園ジュニア全国大会は、2016年12月2日から4日にかけて東京都のBumB東京スポーツ文化館で開催されるものとなる。

科学の甲子園全国大会の日程(左)と科学の甲子園ジュニア全国大会の日程(右)

会見に際し、科学の甲子園推進委員会 委員長を務める伊藤卓氏は、科学の甲子園の過去5回の経験を踏まえて沸き起こってきた4つの動きを紹介した。1つ目は女子生徒の参加数の増加。年々、都道府県大会に参加する女子生徒数は増加の一途をたどっており、2011年度の第1回大会では1385名であったものが、2015年度大会となる第5回では2463名にまで増加している。中でも群馬県の県立高崎女子高等学校は過去5回中2回、全国大会に出場しており、こうした動きのけん引役を担う存在ともいえる。実際に、自主的に生徒たちが校内に向けてリポートを行っていたり、文系・理系問わず、科学に関心のある生徒に向けてメッセージを送るなどの取り組みを行っており、学校全体での意識付けに成功していると言える。伊藤氏は、「女子生徒の増加は大歓迎。欲を言えば、半数程度を占めるまでに増えるまでこうした動きが広がってくれると、すそ野はさらに広がる」とさらなる参加に向けた取り組みに期待をよせる。

科学の甲子園の都道府県大会に参加する女子生徒の人数推移(左)。全体の人数の伸びに合わせる形で女子生徒の数も伸びていることがわかる。ただし、全国大会へ出場した女子生徒数となると、第1回から第5回までおよそ60前後で推移しており、あまり変化していないこともわかる(右)

2つ目は、1つ目と根本は同じくすそ野を拡大するという取り組みの一環としての参加校数の増加。例えば第5回の東京大会では実技競技のみの参加を可能にすることで、これまで普通科高校が中心であったものが、工業高校なども参加するようになり、実際に工業高校を中心に8校が実技競技のみに出場し、実技競技成績トップ3にランクインするチームが登場する、といったこともあったそうだ。

3つ目はそうした地方色豊かな都道府県大会に対する協賛企業の募集。第5回大会から実施されており、伊藤氏は「協賛はとやかくいうことではないが、地域振興としての雰囲気を作っていく上で重要になってくる」と、地域ぐるみで科学に対するすそ野拡大へと発展していくことを目指すとする。ただし、「地域によっては、決まった高校が上位に行くから、と言って、積極的に参加を促さないなど、取り組みに対しての温度差が生じつつある」とのことで、そうした地域間の格差の是正も合わせて全体の雰囲気を醸成させていきたい模様だ。

そして4つ目は、過去の全国大会出場者が自主的にOB・OG会を結成したこと。第5回大会には実に30名以上のOB・OGが来場し、後輩たちの活躍を見守ったという。すでに先行している国際科学オリンピックでは、こうしたOB・OGがメンターとなって後輩を育成する、というスキームが確立されているが、回を重ねるごとにOB・OGは増えていくことになるので、科学の甲子園でもそうした動きなどが自発的に起こる可能性もある。「大会が終わっても、今はSNSなどを活用して交流を深めることが可能。こうした活動が一般化していってもらえれば」と伊藤氏も、よりこうした交流の活性化に向けた期待を述べた。

なお、科学の甲子園ならびに科学の甲子園ジュニアの各都道府県大会の開催日、開催地、問い合わせ先などについては、それぞれの大会のWebサイトに記載されているので、参加を希望する場合、一度確認をしてみると良いだろう(福岡大会のみすでにファーストステージを6月に開催しているので、注意が必要)。

左から第5回 科学の甲子園全国大会優勝チームである海陽中等教育学校の久保田禮さん、同じく神田秀峰さん、科学の甲子園推進委員会 委員長の伊藤卓氏。海洋中等教育学校の2人は、第6回に向け、「前回大会のメンバーのうち5人が1年生であり、今回も参加して連覇を狙いたい」と抱負を語ってくれた