大日本印刷(以下、DNP)は、能楽の宝生会と共同で、AR(拡張現実)による能楽鑑賞ガイダンスシステムの実用化に向けた実験を、7月29日に行われる宝生流能楽公演「体感する能『黒塚』」をはじめ、3公演にて実施すると発表した。

鑑賞を妨げずに内容が理解できるスマートグラスへの解説表示イメージ

能楽などの日本の古典芸能では、若年層や観光客をターゲットとした新たなファン獲得に向けた取組みを行っているが、古典芸能は現代の言葉と異なる言い回しが多く、初めて鑑賞する人や言語・生活習慣が異なる訪日観光客にとっては、台詞の意味や物語の内容を理解するのが困難となっている。

そこでDNPは、視覚コミュニケーション情報設計の技術・ノウハウとスマートグラスを活用し、舞台から目を離さずに内容が理解できる、ARによる鑑賞ガイダンスシステムを開発した。これは、メガネのように着用して、実際に見ている光景に情報を重ねて表示するウェアラブルデバイス「スマートグラス」を活用するものだ。

昨年7月に行った実証実験では、アンケート回答者の97%が「舞台の内容が理解しやすくなった」と回答したことから、このたび新たに、ソニーセミコンダクタソリューションズとエヴィクサーの協力を得て、実用化に向けてシステムを改良し、実証実験を実施することになった。

システム概要図

今回、実用化に向けて改良されたのは、(1)全座席で安定した運用を実現、(2)日本語・英語切り替えが可能な多言語対応、(3)容易なコンテンツ制作機能によって、公演関係者などによる解説画面の制作が可能──の3点。

(1)は、演目の進行に合わせて、最適な解説コンテンツをスマートグラスに表示するもので、タイミングを指示する情報は非可聴音信号として会場の既設スピーカーから配信するため、Wi-Fiなどの通信環境を新たに設置する必要がなく、全ての座席で安定した運用ができる。(2)は、情報端末の貸出時に使用言語を選択することで、スマートグラスに表示する言語を切り替えることができる。そして(3)はスマートグラスに表示する解説画面を、コンテンツ制作に関する特別な知識や技能を持たない人でも簡単に編集・制作・更新できる機能を備えたという内容だ。

なお、「AR能楽鑑賞システム」が体験できる、第十三回 和の会主催 宝生流能楽公演「体感する能『黒塚』(くろづか)」の開催日時は、7月29日 16:00~(開場15:00)。会場は東京都・文京区本郷(最寄り駅は水道橋)の「宝生能楽堂」、料金はS席6,500円、A席6,000円、B席5,500円、C席5,000円、学生券4,000円(全指定席)。各日、先着10~15名が無料で利用できる。