あらゆる業界においてIoTという巨大なビジネスチャンスに向けた競争が激化する中、産業向けIoT分野で存在感を発揮しているのがIoT関連製品やサービスを提供しているTelit Wireless Solutions(Telit)だ。今回、Telitの社長兼財務担当取締役であるヨシ・ファイット氏とIoT分野のCEOであるフレッド・イェンツ氏に、同社のIoTビジネスや日本市場について考えを聞いた。

社長兼財務担当取締役 ヨシ・ファイット氏

IoT分野 CEO フレッド・イェンツ氏

IoTをエンドツーエンドでサポート

Telitは世界80カ国で6500以上の顧客を抱えるグローバルカンパニーだ。2000年設立とまだ歴史は浅いが2009年から2015年にかけて毎年25%の成長を記録しており、今後もIoTの伸展とともにさらに業績を伸ばしていくと考えられている。

Telitの概要。世界9カ所に開発拠点を設けている。(資料提供:Telit)

TelitのポートフォリオはセルラーモジュールやGPS/GNSSモジュール、ZigBeeなどのショートレンジ無線モジュールを提供する「モジュール」、SIMカードおよびデータローミングサービスを各国のモバイルネットワークオペレーターと共に展開する「コネクティビティ」、IoTデバイスで収集したデータの活用を可能とする「プラットフォーム」という3つの領域に分類される。同社が提供しているプラットフォームは1つだが、131のAPIを揃えることで業界ごとのニーズに対応している。

TelitのIoT向けポートフォリオ (資料提供:Telit)

特に、IoT向けモジュールについては市場の31.6%のシェアを有しNo.1に位置している (資料提供:Telit)

ファイット氏が「我々はニュートラルなのが強み。(IoTの構成要素である)モジュール、コネクティビティ、プラットフォームの3領域を全てカバーしているため、どの業界に対しても安全性の高いサービスを提供できる」と語るようにIoTの上流から下流までカバーしていることはTeiltにとって強みとなっている。製品とそのユーザーだけでなくサプライチェーンなどもつながるIoTエコシステムの構築・管理は非常に複雑だが、Telitのソリューションを用いることでそれを効率化することができるからだ。

日本はこれからIoTに適応していくだろう

産業向けIoT分野でビジネスを展開する上で、日本市場についてどう思うかと聞いてみたところ、イェンツ氏は「日本については大きな興味がある。製造業が盛んで、輸出が多い。製造業における製品開発のクローズドループを完成させるにはIoTプラットフォームが重要だ」とコメント。日本の製造業は海外ほどIoTやインダストリー4.0に対する取り組みが進んでいないと指摘されることもあるが、同氏は「日本はアーリーアダプションでは遅れてきたが、昔からイノベーションを製品化するのがうまい。これからまさしくIoTに適応していくだろう」と期待感を示した。また、日本市場に向けた今後の取組ついてはファイット氏が「これからどんどん投資を行い、パートナーや顧客のIoTを加速していく」と語った。

「クルマから温度計まで、顧客の製品をエンタープライズシステムやアプリケーションにシンプルにつなげられるようにする」(ファイット氏)ことをミッションとするTelit。市場のスピードが年々増していく中で、製品やシステムの複雑化はIoTビジネスに取り組む上で大きな課題となるだけに、今後も同社の動向に注目する必要がありそうだ。