量子科学技術研究開発機構(QST) 核融合エネルギー部門那珂核融合研究所で建設中のトカマク型核融合実験器「JT-60SA」。トロイダル磁場コイルと平衝磁場コイルのインストールに続いて、もっとも重要となる中央ソレノイドのインストールが今回、実施された。その様子が報道向けに公開されたので、本稿ではその様子をお伝えしていく。

  • JT-60SA

    那珂核融合研究所で建設中のJT-60SA。真空容器周辺はサーマルシールドの取り付け中だった

  • JT-60SA

    写真中央やや右の足場の奥でサーマルシールドがあり、2019年5月8日時点で3枚の取り付けを確認できた

フランスで建設中のITER(国際熱核融合実験炉:イーター)よりも先行して実験に入り、サテライトとして運用されるJT-60SAは、上記のとおり、トロイダル磁場コイルと平衝磁場コイルのインストールを完了している。トカマク型核融合において必要となる最後の超伝導コイルが、今回の中心ソレノイドだ。中心ソレノイドの実験時の役割は、電磁誘導の原理でプラズマに電流を発生させること。この仕組み自体は無接点充電などでとても身近なのだが、JT-60SA用の中央ソレノイドは、直径約2m、高さ約7m、重量約100t。2019年時点で世界最大クラスの超伝導コイルとなる。

  • JT-60SA

    2018年にインストールが完了したトロイダル磁場コイル。数は18基

  • JT-60SA

    トロイダル磁場コイルインストール後に、平衝磁場コイル3基もインストールされた。写真はインストール前の状態

  • JT-60SA

    インストールされた状態の平衝磁場コイル

中心ソレノイドは、平衝磁場コイルも担当した三菱電機製で、約8年をかけて完成したという。4つのモジュールからなり、支持体末端部まで含めると約7.7mとなる。超伝導素材にはニオブ錫を採用し、20kAで8.9Tの強磁場を発生させることが可能だ。中心ソレノイド導体は27.9mm×27.9mm。断面図サンプルの実機公開はなかったが、平衝磁場コイル導体と似た形状のようだ。

  • JT-60SA

    平衝磁場コイルの断面

中心ソレノイドのインストールは、ハンガーからキャッチアップするところから公開された。黄色いフレーム内に中心ソレノイドがあり、中からゆっくりと本体が出現する様子は、大変カッコイイもので、だいたいの報道関係者が口々に同様のことを漏らしていた。所長を筆頭に、珂核融合研究所職員も本体を見るのは初めてであったようで、興奮している様子が明瞭だった。また中心ソレノイドのインストールはマイルストーンであり、長く待っていた作業といえるだろう。

  • JT-60SA

    中央にあるハンガー内に中心ソレノイドがある

  • JT-60SA

    移動中に撮影したもの

  • JT-60SA

    頂部。支持体の奥に本体がある

  • JT-60SA

    底部。設置もあるため形状が末端部の形状が異なる

  • JT-60SA

    写真左にある緑色のラインがモジュールの境目

  • JT-60SA

    ほぼ取り出された状態

  • JT-60SA

    この状態でJT-60SAまで運ばれる。ところで、よくわからないかっこよさがたまらない

インストール先は、もちろんドーナツ型の真空容器の中央の空洞部だ。真空容器側の空洞部は直径約2.03m。中心ソレノイドの直径は約2mと記してるが、両端に約15mmずつの隙間があるだけのシビアなインストールになる。そのため、JT-60SA頂上部には熟練技術者8人が配置され、それぞれ位置を確認したり、クレーン担当者に指示を出したり、ときには手押しをしたりと慎重な作業が続いた。

  • JT-60SA

    運搬中の様子。低速ながらスムーズにJT-60SA直上まで移動した

  • JT-60SA

    微調整をしながらセンター取りをして降下開始

  • JT-60SA

    JT-60SAとの位置関係は写真の通り。また写真の位置からは細かく止めて、挿入角の調整が行われた

  • JT-60SA

    インストール作業中の様子

JT-60SAは2020年初頭に完成予定。同年9月にファーストプラズマを予定している。中心ソレノイドのインストール以降は、サーマルシールドやクライオスタッドなどの取り付けが実施され、順次、各コイルや真空容器は隠されていく。折りを見て撮影にいく予定なので、完成前あたりにレポートできればと思う。なお、同研の一般公開は例年通りであれば10月付近だ。

  • JT-60SA

    ちなみに筆者撮影の写真がオフィシャルクリアファイルになっている。那珂核融合研究所が参加するイベントや一般公開でも入手できることがあるそうだ。とてもガンプラ(HG)のパッケージぽいデザインが最高だ