新型火星探査車の愛称は「パーサヴィアランス」

米国航空宇宙局(NASA)は2020年3月5日、新型火星探査車「マーズ2020」の愛称を、「パーサヴィアランス(Perseverance)」に決定したと発表した。

「忍耐力」や「不屈の精神」といった意味で、幼稚園児から高校生を対象にした募集と、世界中からの投票を経て選定。打ち上げは今夏の予定で、来年2月に火星に着陸。クレーター付近の地表を探査するほか、土壌を採取し、将来の探査機で地球へ持ち帰る準備をするなどのミッションに挑む。

  • パーサヴィアランス

    パーサヴィアランスの想像図 (C) NASA/JPL-Caltech

名前に込められた人類の探検の精神

パーサヴィアランスの名付け親になったのは、ヴァージニア州の中高一貫校に通うアレクサンダー・マザー(Alexander Mather)氏(13歳)である。

彼は、パーサヴィアランスという名前を思いついた理由について、次のように述べた。

「キュリオシティ、インサイト、スピリット、オポチュニティ……これらの過去の火星探査車の名前はすべて、私たちが人間として持っている資質です。私たちはつねに好奇心(キュリオシティ)を持ち、機会(オポチュニティ)を求めています。そして月、火星、そしてその先を探索する精神(スピリット)と洞察力(インサイト)があります。探査車が私たちの資質を象ると考えた場合、私たちは最も重要なことを見逃しています。それは『忍耐』です。私たち人類は、どんなに困難な状況にあっても適応することを学べる生き物として進化してきました。私たち人類は探検家であり、そして火星に向かう途中で多くの障害に遭遇するでしょう。しかし、私たちはそれに耐えることができます。人類は諦めません。人類はつねに未来に向けて耐え続けます」。

マザー氏は2年前まで、宇宙よりもテレビゲームに興味があったという。しかし、2018年の夏にスペースキャンプに参加し、アポロ計画で人類を月へ送ったサターンVロケットに出会って、宇宙の虜になったと語る。

そして2019年8月、NASAは開発中の新型火星探査車「マーズ2020」の愛称を募集するコンテストを開催。幼稚園から高校生までを対象としたもので、マザー氏はすぐに応募した。

このコンテストには、合計約2万8000通の応募があったという。その後、選考を経て、最終的に9つの提案が残った。

  • Perseverance(忍耐力、不屈の精神)
  • Clarity(明晰、理解力)
  • Courage(勇気、度胸)
  • Endurance(忍耐、辛抱)
  • Fortitude(剛勇、不屈の精神)
  • Ingenuity(工夫、精巧)
  • Promise(約束)
  • Tenacity(粘り強さ、頑強)
  • Vision(洞察力、先見の明)

そして、世界中を対象にインターネット投票が行われ、77万票もの投票の結果、パーサヴィアランスが選ばれた。

NASAの科学ミッション局の副局長を務めるThomas Zurbuchen氏は「アレックス氏は、探検の精神を捉えた提案をしました」とコメント。

「これまでの探査ミッションのように、パーサヴィアランスは数々の挑戦に直面し、そして驚くべき発見を成し遂げるでしょう。こんにちに至る開発のなかで、すでに多くの困難を乗り越えてきました。そしてアレックス氏らの世代は、まさに『アルテミス世代』であり、彼らは火星につながる宇宙への新たな一歩を踏み出そうとしています。その刺激的な仕事を行うには、つねに"忍耐"が必要です」。

  • パーサヴィアランス

    パーサヴィアランスの想像図 (C) NASA/JPL-Caltech

パーサヴィアランスの打ち上げは2020年夏を予定

パーサヴィアランスは、2011年に打ち上げられ、現在も活躍中の探査車「キュリオシティ」の技術を使って開発された探査車で、現在はフロリダ州にあるケネディ宇宙センターで、打ち上げに向けた最後の準備段階にある。

打ち上げは今夏の予定で、7月17日から8月5日まで打ち上げウィンドウ(打ち上げ可能期間)が開く。予定どおりこの間に打ち上げられれば、2021年2月18日に「イェゼロ(ジェゼロ)・クレーター」に着陸することになる。この場所はかつて川が流れ込んでできた湖だったと考えられており、そこに溜まった堆積物のなかから、生命の痕跡が見つかる可能性が期待されている。

探査車には28台のカメラと、7台の観測機器、そしてロボット・アームを装備している。これにより、過去における生命の有無や、火星の地質調査、火星の気象観測などを行う。また、火星の大気を利用して酸素を生成する技術を実証し、将来の有人探査に向けた準備も行うほか、小型のヘリコプターも搭載し、上空から探査も行う。

さらに新たな試みとして、そのサンプルを小さなカプセルに密封することになっている。このカプセルは、将来の火星探査車で回収することを意図しており、小型のロケットに積み替えて火星の周回軌道に発射。さらに欧州宇宙機関(ESA)の探査機を使い、軌道上でそのカプセルを捕まえ、そして地球に持ち帰ることが計画されている。

ただし、この回収計画にはまだ予算がついておらず、実際に行われるかどうかはまだ決まっていない。

  • パーサヴィアランス

    パーサヴィアランスに搭載される、火星のサンプルを収容するためのカプセル。将来、回収ミッションが実現すれば、火星のサンプルが直接手に入ることになる (C) NASA/JPL-Caltech

参考文献

News | Virginia Middle School Student Earns Honor of Naming NASA's Next Mars Rover
Overview - NASA Mars