年初の話なのですが、MacBook Proにコーヒーをこぼしてしまいました。慌てて拭き取ってApple Storeに修理の予約を入れました。買ってから一年半近くが立っていましたが、筆者はAppleがハードウェア製品購入者向けに提供している保証サービス「AppleCare+」に加入していたので、33,800円で修理できると安心していたのですが。

  • Appleがハードウェア製品購入者向けに提供している保証サービス「AppleCare+」

ストアに持ち込んで、状態をチェックしてもらったところ、スタッフから予想外なことを知らされました。カバーを開けてみたところ、浸水がかなり酷い、リペアセンターへ配送しても修理ができない可能性が高いとおっしゃいます。

  • こんな感じで浸水

担当してくれたそのスタッフさんに、「え? AppleCare+に加入していても修理を受け付けてくれないケースってあるんですか?」と聞くと、修理は受け付けるが、破損の状態によっては修理が不可能な場合があるとの返答。えっ?えっ?直せないってこと?? このMacBook Proはどうなっちゃうの?

リペアセンターへの配送は行います、ですが、先ほど申し上げた通り、修理ができないという判断に至る可能性が高いです、その場合はすぐにお知らせします、修理ができない場合はリサイクルプログラムに出していただければ、こちらで……。スタッフさんの丁寧な説明は続くのですが、途中からクラクラしてきました。頭の中で「直せない」「直せない」「直せない」が延々とこだましています。

こだまがしばらく続いたのち、AppleCare+に加入してたのに修理できないって……という憤りの感情がフツフツと湧き上がってきます。それも段々と怒りに近いものに変わってきました、そもそもコーヒーこぼさなければよかったのにって話なのに。

とうとう、スタッフさんの説明を遮ってわめき出してしまいました。AppleCare+に入ってたのに直せないってどういうこと? 35,800円払って修理無理とかってなんなの?

すると、「ですので、AppleCare+の加入料、返金させていただきます」と、天からの恵みのような返答が! えっ?えっ?AppleCare+って、修理不可能だとお金返してくれるの??

皆さん、ご存知でしたか? そう、AppleCare+は修理ができないレベルで破損した場合、返金してくれるのです。実は、途中での解約も可能なのでした。解約については、「AppleCare プランの管理・解約方法」ページに詳細があります。いくつか付帯条件はありますが、それらを満たせば、中途解約は可能なのであります。

ですが、上記のページでは修理不可能な場合の返金については記載がありません。わめき散らさなくても説明してくれたはずですが、その時は声をあげてよかったと思ったのでした。

もし、修理ができなかった場合はこちらの番号へ電話して返金の手続きを進めてください、と電話番号を渡され、サインしたり諸々の手続きをすませて、Apple Storeをあとにしました。修理に出した翌日、製品がApple 修理センターに到着したという内容のメールが届きます。その二日後、件名に「製品をお渡しする準備ができました」と記されたメールが届きました。Apple Storeに持ち込んだ時点で、修理できる場合は一週間程度見ておいてくださいと言われた記憶があったのですが、えっ?もう直っちゃったってこと?なーんだ、やっぱり直せたんだね! Appleすごい!!と色めき立つもつかの間、お店の方から電話が入り「やはり修理できませんでした」と。

  • 修理報告書。「破損の度合いが高く修理不可能でした」とある

なんだよー、ぬか喜びさせやがってと、また憤ったのですが、その時にはもう、精神科医のエリザベス・キューブラー=ロスが言う「死の受容のプロセス」の抑鬱くらいの状態になっており、もう自分のMacBook Proは帰ってこないのだと、受け容れられる段階に入ろうとしていました。

しかし、受容の段階へと進むまでには時間を要しました。新しいMacBook Proを買ったとしても、入っているOSはmacOS Catalinaです。つまり、32bitアプリが動きません。筆者は開発が終わってしまったアプリを結構な数使っているため、Catalinaでは仮想環境を構築する以外の選択がありません。

そうこうしているうちにCovid-19の影響で実店舗のApple Storeもクローズ。実際に触って見てどんな感じなのかも確かめられなくなってしまいました。AppleCare+の返金手続きも緊急事態宣言の騒動の中、すっかり忘れてしまっていました。

ヤバい、お金がない、原稿料稼がないと、と焦燥感に駆られる中、ようやく、AppleCare+の返金手続きのことを思い出すと、iPhoneの「メモ」アプリから渡された電話番号を捜索、藁にもすがる思いで手続きを進めようとしました。

オペレーターの対応によれば、法務の者に代わるので、そこからは別な人が担当するとのこと。代わったところで、その法務の方に経緯をお伝えしました。

話しているうちに何か違和感を覚えました。何度か、Apple Storeのスタッフがこちらに電話するようお伝えしたのですね?という質問が繰り返されました。スタッフの対応がイレギュラーだったのでしょうか。何か引っ掛かるなとは思いつつ、対応は進めてくれています。そしてようやく「それでは、返金額を算出しますね」という返答が。

いくら戻ってくるのかなー? 全額は無理でも半分くらい戻ってきたら嬉しいなー?と胸をときめかせて待っていると……。

「お待たせしました。返金額ですが、0円です」

えええええええええっ! 0円!この手続きなんなの?意味あるの?心の中で魂の叫び声を上げつつ、冷静を装って、どうして0円なのか訊いてみたところ……。

「そうですね、AppleCare+と契約後の日数から割り出すと、この数字になるのですね」

という返答が。

先ほどの「AppleCare プランの管理・解約方法」のページをよく読むと、一括払いのケースでは、「購入後31日以降に AppleCareプランを解約される場合は、プランの保証残存期間の割合に基づいて按分計算した金額から、すでにご利用になったサービスの対価を差し引いた残額を返金いたします」とあります。これと同じ規約が適用されたと理解したのですが、でも、0円って。

  • 「AppleCare プランの管理・解約方法」のページに付帯条項が明記されている

確かに、大破したのが、AppleCare+の期限の1日前だったりしたら、お金返ってこなくて当然です。その場合、一縷の望みを託して、AppleCare+の範囲で修理可能であるのを祈ることになるでしょう。しかしながら、AppleCare+が適用されてから半年なのに0円ってのは……。

電話では、どういう計算でその数字になったかは教えてもらえませんでした。説明としては、先述の「保証残存期間の割合に基づいて按分計算した金額から、すでにご利用になったサービスの対価を差し引いた残額」うんぬんと同じものでした。

もしかしたら、返金手続きの電話をしてくださいという対応がやっぱりイレギュラーだったのかもしれません。これ以上追求すると、Apple Storeのほうで犯人探しが始まるような気がするので書きませんが。とはいえ、AppleCare+は解約できるし、返金の可能性もあるってことは知っておいて損はないと思います。筆者も保険料は取り戻せませんでしたが、こうやって記事化されることで別な形で回収できるようになったのですし。