反対地権者知事と面会ならず

 県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、中村法道知事との面会を求めていた反対地権者と県の協議が17日、同町内であった。県側は世帯別の面会を提案したが、同時に付け替え道路工事を18日から再開すると通告したため、地権者側が反発。実現すれば約3年ぶりの面会だったが、物別れに終わった。

 県は現場で抵抗を続ける反対派との話し合いのため、道路工事を約3週間中断している。1日の交渉で、反対派が面会を求め、県が検討していた。

 県によると、個別面会は▽自宅以外の静穏な環境▽各世帯1時間程度▽少人数▽非公開-などを条件とした。

 岩見洋一県土木部長は、現在の工事現場が買収済みの上、差し止めの仮処分申し立ても昨年却下されたことから「工事を止める理由がない」と強調した。地権者側は「面会まで工事を止めるべき」と主張。これに対し岩見部長は、もし反対地権者全13世帯の面会が終わるまで工事を中断すると、影響が長期間に及ぶとして「面会と工事は別の話。工事再開は知事の意向」と譲らなかった。

 現場では、反対派がゲートを監視し県職員や作業車両の進入阻止を図っているが、県は未明に資機材を搬入して対抗。一方、地権者の土地家屋の強制収用につながる手続きも着々と進んでいる。

 協議決裂後、反対地権者の一人、岩下和雄さん(70)は報道陣に「私たちがどういう思いで抗議を続けているのかを知事に伝え(強制収用など)今後どう判断していくのか直接聞きたかった」と話した。個別面会については「県側が工事を止めれば、冷静に話し合う気持ちはあった」と一定歩み寄りの姿勢を見せたが、「話し合いの機会が失われたのは非常に残念。なぜ短期間でも工事を止められないのか」と県を批判した。

 県によると、中村知事と反対地権者の面会は、2010年7~12月に13世帯と個別に実施。14年7月には建設予定地の川原(こうばる)公民館で反対派弁護団も交えて行った。

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